劇場公開日 2024年3月22日

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「極限の果ての愛」戦場のメリークリスマス スライムさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5極限の果ての愛

2023年8月22日
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恥ずかしながら大島渚監督の映画は見たことがほぼなく、唯一見ていたのが「御法度」だった。

御法度と戦メリに共通することを探しながら見ていて、これらの映画は同棲愛を描いているのではなく、常に生と死が隣り合わせの極限の状況の中で生まれる愛を描いているのだろうと思った。

愛に戸惑い不器用になってしまいながらも他人に魅せられていく、そんなキャラクターたちを、演技未経験の坂本龍一や北野武が演じているのが、良いのか悪いのか分からない。
棒読みで動きも固い坂本龍一の演技は、その固さが、愛に戸惑うヨノイそのもののようにも見えたし、でもそれは少し酔いすぎた見方かとも思ってしまう。見ている私自身がその佇まいに動揺し、考えざるを得ないのだ。
しかし棒読み演技をそのように捉える事が出来ることこそ、この作品の魅力かもしれない。演出、シナリオ、そして音楽、これらの強度が高いからこそ、役者のあらゆる姿があらゆる角度で見ている者に迫ってくる。それもまた大島渚監督の手腕であるのだと思った。

御法度でも思ったが、どうしようもなくなっていくキャラクターの心情を、丁寧かつ大胆に描いていくのが上手い。
大きなアクションがあるわけではなく(作品の時代背景や舞台として、誰かが死んだり拷問があるというアクションはあるが)、キャラクターたちは流れる時間の中を懸命に過ごしていく。その積み重ねがやがて大きな感情になっていくのを、この映画はしっかり描いている。これは本当に凄いことだと思う。
誰もそれぞれの思いを言葉にしてはっきりと伝えられてはいないが、その言葉にできない思いが画面から溢れて伝わってくる。そして人はそう簡単に思いを吐き出せないのだと、思い出させてくれる。

スライム