劇場公開日 2003年6月28日

「【”無償の献身が齎した奇跡と、悲劇” 数多く挿入されるサイレント映画を含めた劇中劇の効果的な使い方も印象的な作品。】」トーク・トゥ・ハー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”無償の献身が齎した奇跡と、悲劇” 数多く挿入されるサイレント映画を含めた劇中劇の効果的な使い方も印象的な作品。】

2021年10月21日
PCから投稿

悲しい

知的

幸せ

ー 序盤は、「The Smiths」の”Girlfriend In A Coma”が脳内で響いていた。
 だが、ペドロ・アルモドバル監督の脚本は、モリッシーの詩の更に上を行くレベルであった。ー

◆感想<Caution 内容に触れています。>

 ・冒頭、未だ見知らぬ者同士のベニグノとマルコが抽象的な現代劇を隣同士で観ているシーン。マルコは涙を流している。
 ー 印象的且つ、今作の行く末を暗示するような、イントロダクションである。ー

 ・その後、ベニグノが4年前に憧れの気持ちで、窓から観ていた美しきバレエダンサーで、事故に遭い昏睡状態になってしまったアリシアを健気に看護師として介護するする姿が描かれる。
 彼は、彼女と出会った時に彼女から”サイレント映画が好き・・”と言われた事を、覚えており様々なサイレント映画を観て、彼女に粗筋を話しかけるのである。
 ー ここでも、縮んでいく男が、愛する女性の性器に入って行くという不思議なサイレント映画が、象徴的に使われる。ー

 ・マルコも、闘牛士の女性リディアと恋に落ちる。だが、彼女もまた、大怪我をし、昏睡状態になってベニグノが勤める病院に収容される。
 ー そして、ベニグノとマルコは運命的に、知り合いになり、似た境遇からか、親友になっていく。二人のシンクロニシティを感じる。ー

 ・マルコは旅に出、ベニグノは献身的にアリシアの介護を続ける。だが、リディアは亡くなり、ベニグノはある出来事から獄に繋がれてしまう。
 マルコは、リディアの死を知り旅先から急遽戻り、ベニグノの状況を聞き、又、信じられない光景を目にする。
 ー ベニグノの献身的な介護のお陰なのか、アリシアに意識が戻っている光景を目にしたときのマルコの驚きの表情。だが、精神的に問題があると判断されたベニグノには真実は伝えられていない。マルコもベニグノを思い、真実を伝えない。
  そして、悲劇が起きてしまう。友を思うがゆえについた嘘が、友を死に誘導してしまったというマルコの後悔たるや・・。ー

<だが、ペドロ・アルモドバル監督の脚本は観る側に、ある希望的な想いを託す。
 それまで、テロップで”ベニグノとアリシア””マルコとリディア”と流れて物語は進むが、ラスト、
 ”マルコとアリシア”
 と言うテロップが流れ、二人が劇場で”列を前後にして”劇を見るシーンで、幕が閉じるのである。
 見事な、作品構成であり、脚本であると思った作品である。>

NOBU