劇場公開日 2007年1月20日

「国家権力の恐ろしさが心底分かった」それでもボクはやってない ミカさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0国家権力の恐ろしさが心底分かった

2020年6月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

起訴されたら99.9%が有罪になる。これは、警察、検察、裁判所等の国家権力の面目を保つ為に他ならない。

『法<権力の面目』というのがまかり通る国に住んでいるのに、今作を鑑賞するまでこんな事は全く知りませんでしたし、仮に私が一度でも逮捕されたら徹平の様になるのかもしれないと背筋が凍りました。容疑が殺人であれば、最悪死刑です。

ちょうど今作を鑑賞した今日、59年前の「名張毒ぶどう酒事件」で15年ぶりに検察側から新たな証拠が開示されたという報道がありました。弁護団は「再審請求の重要な材料になる」としていますが、無罪を訴えていた奥西元死刑囚はもう亡くなられています。こんなに時間が経ってから新証拠を出すこと自体、事件が風化し関係者が居なくなるのを待っていたとしか思えないので、やはり、司法制度が警察、検察、裁判所の面子を守る様にできており、このシステムが、冤罪に繋がっているのだと感じました。また、冤罪の抑止力となるものはあるのかが疑問です。劇中、荒川弁護士が『権力を相手に闘うことは並大抵じゃない』みたいな事を言ってましたが、つくづくそう思います。

恥ずかしながら、『#検察庁法改正案に抗議します』というハッシュタグが話題になった時に初めて、検察庁法を知ったのですが、この一件で安倍首相が黒川さんにこだわる理由が良く分かりました。政治家であれ誰であれ、起訴は検察が行使できるから、自分を起訴しない人にしたかったのですね。

私は裁判をテーマにした映画を鑑賞したことがほぼありませんでしたが、今作は非常に分かりやすく自分ごととして鑑賞することができました。国家権力の恐ろしさは、他国や過去のことと考えていたのですが、今作で今の日本にも権力の恐ろしさが存分にあるということを知りました。ほとんどの人は、警察に逮捕されたり検察に起訴されたりした事がないと思うので、大学で専攻したり仕事に関わらない限り、司法制度のことを知る機会は少ないと思います。今後も今作の様な映画をどんどん公開してくれるととても嬉しいのですが、映画界はどうなんでしょうか。

実は、周防監督の作品は『Shall we ダンス?』と今作しか鑑賞していませんが、作品から非常に知性と品を感じました。他の作品も鑑賞してみようと思います。

ミカ