劇場公開日 2004年2月21日

「夫に追随して亡命しなかった母親が共産主義社会をリードする立場になった説明が…」グッバイ、レーニン! KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0夫に追随して亡命しなかった母親が共産主義社会をリードする立場になった説明が…

2024年2月18日
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鑑賞方法:DVD/BD

体制が変わった中で、昏睡状態から目覚めた
人への取り繕い、という、
何か別の作品でも観たことのあるような話
なのだが思い出せないまま、
特異な設定に興味を引かれ鑑賞した。
特に、それが興味深いドイツ統一に向けての
東西ベルリンでの出来事でもあったので。

タイトルからすると、
何かコミカルな展開の作品なのかなと思い
観始めたが、至って奇をてらう事の無い作風
の映画だった。

しかし、上映開始早々に、
本来は順序立てて真実を母親に説明すべき
ところを
“何を面倒なことを”
との思いが私を支配してしまったため、
ひとつひとつの息子の手配に
いらつき感が生じてしまい、
なかなか作品の世界に
没入出来なくなってしまった。

母親は最後の最後には、息子の恋人から
真実を告げられていた訳だから、
息子の横顔をしみじみ見つめるシーンは
彼女の感謝の気持ちを表したものなのだろう
が、それはこの作品の主題としては
かなり大切な場面なのだろうから、
もう少し時間も割いて上手く演出・編集して
欲しかったと残念に思えた。

また、決定的に私が解らないのは、
母親は夫と共に亡命する気持ちがいくらかは
あって一度は同意したはずなのが、
それが自らの意思で
夫に追随することを止め、何故か
東ベルリンで共産主義社会をリードする立場
になった、とした前提だ。
一体何故なのか。
何故心変わりしたのか。
それは、息子達が取り繕いに奔走する
大前提で、
真実を知った母親が息子への感謝の念
息子の横顔を見つめるシーンにも関連する
重大な要素ではないだろうか。
そんな説明が無いことがこの作品への理解を
妨げてしまったようだ。

ベルリンの壁崩壊からドイツ統一という
重大な歴史ポイントを背景にした作品で
興味津々だったが、
残念ながらドイツ国民ではない私には
映画の中で示される東西ドイツ双方の
細部の相違点への無理解も含め、
前記の疑問点もあったことから
なかなか評価出来ない作品と
なってしまった。

KENZO一級建築士事務所