劇場公開日 2004年10月30日

「【庄内藩、下級武士の身分違いの恋と、剣の旧友に対する藩の仕打ちに対する必死の行いを、情緒豊かに描いた作品。懐かしき柔らかき庄内弁の響きも作品の趣を高めている作品でもある。】」隠し剣 鬼の爪 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【庄内藩、下級武士の身分違いの恋と、剣の旧友に対する藩の仕打ちに対する必死の行いを、情緒豊かに描いた作品。懐かしき柔らかき庄内弁の響きも作品の趣を高めている作品でもある。】

2022年6月24日
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鑑賞方法:DVD/BD、VOD

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■幕末の海坂藩が舞台。(勿論、山形の庄内藩の事である。)
 独り身ながら武士の矜持と優しき心を持つ下級武士・宗蔵(永瀬正敏)は、かつて奉公にきていた百姓の娘・きえ(松たか子)が嫁ぎ先で苦労して病に臥せっていることを知り、彼女を背負って強引に連れ帰る。
 そんな中、海坂藩の江戸屋敷で謀反が発生。宗蔵は人質を取って立てこもった首謀者で且つての剣の旧友、狭間(小澤征悦)を討つことになり…。

◆感想 ー印象的なシーンー

・江戸から遣わされたエゲレスの戦法を、庄内藩士に伝授しようとする男の滑稽さを、時代の変遷の一つの姿として見せる巧さ。

・宗蔵たちの、想いを込めて華やかに江戸に出立した狭間が、藩内の薩長の思想を実現させようとする男として、東軍に位置付けされていた庄内藩から、”謀反”として捕らえられる姿。
ー この辺りは詳細には描かれないが、容易に類推出来る。-

・宗蔵と狭間の且つての剣の師匠、戸田(田中泯!)と、宗蔵が久方振りに剣を交えるシーン。
ー 戸田は、武士の道を捨て、農民として暮らしている。田中泯さんと同じではないか!という想いと共に、変わらない田中さんの眼力と軽やかな身のこなしに驚く。個人的な意見だが、田中泯さんの生き様は武士だと思っている。-

・きえに対する、宗蔵の秘めた想い。
ー もう、バレバレなのであるが、身分の違いにより一歩を踏み出せない宗蔵・・。-

・そして、牢に繋がれた狭間が牢を脱し、農家に隠れるシーン。そして、彼の妻(高嶋礼子)が見逃してくれと宗蔵の家を訪れるシーン。”自分を抱いても良いから・・”と嘆願する妻の申し出を断り、”では家老(緒方拳)の所に・・”と言う妻を止めようとするが・・。
ー 緒方拳さん、良くあの役を受けたなあ・・。昭和の名優なのに・・。-

・戸田の剣を狭間と共に学び、一度は勝った宗蔵が刺客に選ばれるが・・。
ー 宗蔵は言う。”真剣であれば、彼が勝っていました・・。”が、藩命には逆らえず・・。けれど、狭間を斃したのは、宗蔵の一撃も有ったが、銃であった。-

<そして、家老の狭間の妻に対する行為を知った宗蔵は、初めて隠し剣を使う。廊下ですれ違いざま、家老の心の臓を貫く鬼の爪。ー 瞬きしても良く見えない早業。-
 その後、きえに対し、初めて心の想いを継げる宗蔵。
 彼には、旧弊的な武士の暮らしよりも、好いた女性との生活が大事であったのであろう。
 柔らかい庄内弁や、庄内平野を見下ろす月山の姿も印象的な、時代劇である。>

■その他
 ・先日、「峠」にて、松たか子さんのお姿を大スクリーンにて、拝見した。身に纏う気品。不老ではないか!と思ってしまったお姿。凄い女優さんである事を再認識した。

 ・田中泯さん。山田洋次監督の前作に続いての出演。出演シーンは少ないが、凄い役者さんである。現在でも第一線のダンサーである事の凄さよ。

 ・山田洋次監督。現代の邦画で、時代劇は衰退の一途を辿っています。原田眞人監督や、小泉監督が、頑張って居ますが、もう一作だけ時代劇を作って頂けないでしょうか・・。

NOBU