劇場公開日 2005年12月17日

「渡哲也さんを偲んで 松」男たちの大和 YAMATO 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5渡哲也さんを偲んで 松

2020年8月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

原作未読
2005年の大ヒット作品でその年の邦画興行収入1位
今年の8月に亡くなった渡哲也さんの遺作
角川映画
監督は『新幹線大爆破』『柳生一族の陰謀』『野性の証明』『君よ憤怒の河を渉れ』など数々の名作を世に残し昨年亡くなった佐藤純彌氏
音楽担当はジブリや北野映画でもお馴染みの映画音楽の巨匠久石譲

公開されて15年もたつが亡くなった渡哲也さんの遺作ということもあり今回初めて観た
当時の自分としてはテーマが重すぎて敬遠したのかもしれない
そのまま疎遠になってしまった
戦争映画が嫌いなわけでもないし船が沈む話が嫌いなわけでない
日本が負ける姿を見たくないというわけでもない
この作品を観もせずに抗議した愚かな人たちにげんなりとしてしまった影響も少しはあったかもしれない
今まで観なかった理由は自分でも本当のところよくわからない

軍国主義のノリが嫌いなのは事実だ
理不尽な暴力は嫌い
自分は反日かパヨクかといえばそうではない
愛国心があるかどうかは自信がないが他の国に住めるような人間ではないし日本に愛着があるのは間違いない
自分こそ愛国心があると自称し保守層に猛アピールする国会議員は信用できない
そもそもあの時代の日本の軍国主義は保守ではなく左翼だと思っている
大東亜共栄圏もアジア共同体思想もよく似ている
保守なら侵略戦争なんて始めない
ネトウヨだって韓国と断交しろと主張しているじゃないか
学生運動でも左翼は理不尽な暴力をしている
この二つの世代の多くは輝いていた青春時代を美化しているきらいがある
親子だということも珍しくはない
呪われた血筋である

兵隊さんたちに共感なんてできるわけがない
けれども今の時代の感覚で当時の人々を断罪しても全く意味がないし馬鹿げている
だがフランクリン・ルーズベルトだけは1000年経っても絶対に許すわけにはいかない
開戦派なわけがないが戦争の悲惨さとか戦争反対とかもはや陳腐な気がする
感覚としては戦国時代や戊辰戦争に近いものになってしまった
歴史学者の皆さんに任せとけばいい
デモ行進を見下し苦笑いする自分がいる
逆風の環境に人間はいかに生きて死んだのかというヒューマンドラマと受け止める

主人公は誰だろう
群像劇か

改めて仲代達矢さんの長生きぶりに驚かされる

一緒の撮影はなかったが『宮本から君へ』で共演した蒼井優と池松壮亮がこの作品にも出演している
15年前なので池松くんはまだ子供でかわいい
蒼井とは5歳も違うとは『宮本から君へ』では全く感じなかった

大和沈没まで戦闘シーンは流石の迫力が有り興奮した

歴史ものの創作物となると史実と違うというツッコミは毎度のことだが作品を評価するうえでそれは全く重要ではない
歴史検証番組じゃないんだから
それによって面白いかどうかである
朝日新聞の報道がそれではいけないがフィクションだということを忘れてはいけない
一茂が演じた臼淵磐の名言「敗れて目覚める」のあの全文ですら後の作家による創作だという
僕は映画の嘘は原則的に受け入れたい

反町獅童京香の芝居は全く気にならなかった
一茂さえ気にならなかった
CGも特に悪いとは感じなかった
久石譲のBGMにケチをつける感覚が理解できない
それら全て些細なことである
瑣末なことが気になると全体が見えなくなってしまうのは避けたいものだ

野川新栄