劇場公開日 2001年1月27日

「後半から、月並みなラブストーリーになるのは残念だけれど、ニックが反省して、人間として変わっていく姿が感動的でした。」ハート・オブ・ウーマン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0後半から、月並みなラブストーリーになるのは残念だけれど、ニックが反省して、人間として変わっていく姿が感動的でした。

2010年5月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 何故男には、女心が分からないのだろうか。そしてもしその女心が突然わかったら、男はどんなリアクションをするだろうか。男女の不可解な関係の不思議を、斬新でしゃれた切り口で描いた本作は、ストーリー設定がめちゃくちゃ面白かったです。基本ラブコメだけど、ちょっと人間関係を考える上で為になる作品なんですね。
 シカゴの広告代理店を舞台に、2大アカデミー賞スターの顔合わせ。ラブコメの帝王M・ギブソンの女心が掴めない、KYな演技が嫌みなく決まる、ファンには欠かせない一本です。

 広告代理店という舞台がミソ。クリエイティブ・ディレクターをめざす主人公のニックが、上司でライバルの女性ダーシーの命じられるままに、ブラやマスカラ、脱毛にパンストなど女性向け商品のプレゼンに苦悶する場面が、笑えました。だってメル・ギブソンが、実際に試着しながら、アイディアを捻ろうとするのですよ。
 でも笑ってはいけませんね。広告やPR関係の仕事をされる方には、誰でも起こりえることですから。

 女性のニーズどころか、同僚のOLたちが自分をどのように思っているのかさえ、ニックは分かっていませんでした。だから、妻には逃げられて、一人娘にはバカにされて、父親らしい意見もいえない関係になってしまっていたのです。
 だからプレゼントも完敗。クリエイティブ・ディレクターもダーシーが指名されてしまいます。
 落ち込むニックは、ちょっとした事故がきっかけで、すれ違う女性の心の声が聞こえるようになります。まぁ、経緯としてはチープでしたが、本筋ではないのでスルーしましょう(^^ゞ

 女性の心の声が聞こえるとどう変わるのか。数々のニックのエピソードは、どれも面白く笑わせてくれました。特に同僚のOLとの『ツボを心得た』セックスシーンは、最高! でもコメディだけでなく、ストーリーはニックの変化をしっかりと捉えていきます。

 大きな変化は、心の声が聞こえるようになって、ニックは人に対して優しくなっていったこと。
 例えば才能を見抜けず解雇に追いやった女性スタッフに謝罪するところ、そして何よりも変わったのが宿敵ダーシーへの接し方でした。常に上から目線で見下したように話すダーシ。でも、その心の声を聞いてしまったニックが驚くくらい、彼女の心は純粋で繊細なものだったのです。
 ニックの秘密を知らないダーシーは、不思議なほど自分の気持ちをわかってくれるニックに興味を持ち、やがて惹かれていきます。
 ところがダーシーの気持ちを受け入れつつも、ニックはちゃっかり彼女の企画やプレゼン対象を勝手に読み取ってしまい、自分の手柄にしてしまいます。

 その成果でもって晴れて目標のクリエイティブ・ディレクターになれたニックでしたが、その代わりダーシーは解雇されます。ダーシーを失ったことを悔やむニック。探し回るうちに、またまた事故に遭い、心の声が聞こえなくなります。
 それでもダーシーの居所を突き止めたニックは、ダーシーに謝罪しようとします。ダーシーの気持ちが読めなくなってしまったニックは、ダーシーの心をつなぎ止めることができるのかというストーリーです。

 後半から、月並みなラブストーリーになるのは残念だけれど、ニックが反省して、人間として変わっていく姿が感動的でした。最後は少しほろっとさせられます。
 人が変わっていくのは、奇跡の力ではなく、一つ一つの体験に真摯に反省して、どんな教訓を掴んだかによるものなんですね。だから充分教訓を掴んだニックには、もう心の声が聞こえる必要がなかったのでしょう。

 いま男女間でぎくしゃくしているカップルなら、思わず共感してしまう作品。KYなダンナや彼氏教育に必携のDVDでしょう(^^ゞ

流山の小地蔵