劇場公開日 2006年6月3日

「魅力的な役者たちのアンサンブルだけでも楽しめる」花よりもなほ ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0魅力的な役者たちのアンサンブルだけでも楽しめる

2007年10月8日

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楽しい

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TVドキュメンタリー出身の是枝監督が、初めて挑んだ人情時代劇「花よりもなほ」は、誰もが気軽に楽しめる1本だ。

 実話をベースに物語を紡いだ「ディスタンス」と「誰も知らない」は結局見逃してしまったので、その両作品との比較は一概にできないが、人間の「いとおかしさ」を見つめる是枝監督の視線は、例え題材が時代劇に変わっても「ワンダフルライフ」の頃から変わらず優しく、そして温かい。

 欲を言えば、劇中の話し言葉が現代の言葉に近かったのと、サブキャラ(例えば、加瀬亮と夏川結衣)の物語まで盛り込みすぎていて、その分、映画全体のテンポが悪くなったように感じるのが残念だが、「タイガー&ドラゴン」で意外な(?失礼)芝居のセンスの良さを見せつけた岡田准一をはじめ、実力派の古田新太や平泉成、エンケン、寺島進、香川照之、國村隼、原田芳雄、それから芸人の上島竜平やキム兄、それから千原兄弟のぶっさいくな方などなど、出てくる役者がとにかく魅力的で、彼らの掛け合いを観ているだけでも楽しめること請け合いだ。

 中でも秀逸だったのは、美しい未亡人に扮した宮沢りえと、加瀬亮扮するチンピラに恋する長屋の娘を演じた田畑智子。男ばかりのむさい映画に、文字どおり可憐な花を咲かせている。

 最後に評するなら、決して傑作ではないとは思うが、心がホンワカと温かくなる秀作であると思う。

ダース平太