劇場公開日 2002年8月31日

「サイエンスフィクション」ドニー・ダーコ vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5サイエンスフィクション

2019年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

知的

サイエンス・フィクションの中でもとてもダイレクトにテーマにぶち当たる作品。
カルト的人気のある作品として湯y名ですが、映画の時代を切り開いているのは明確です。
これまで、サイエンスフィクションといえば、”メトロポリス” (1927)から始まり、”未知との遭遇” (1977) ”ブレードランナー” (1982) “E.T.” (1982) と作られていますが、それらはあまり真髄のテーマを作品中で明らかにせず、映画としてのエンターテインメントが視聴者を惹きつける作品が興行的成功を収めていることが多いです。しかし、この作品はダイレクトにテーマを作品中で取り上げています。一見、話が難しく複雑に感じるかもしれませんが、とても丁寧に説明してくれていて、混乱することはほとんどないでしょう。シンプルにサイエンスフィクションを作ると、サイエンスフィクションらしさがなくなるので、この作品は、サイエンスフィクションのテイストを保ちながら、ストーリーをわかりやすくしているのがすごいところでしょう。さらに、これは原作を使わず、リチャード・ケリー自身が一から書き上げた映画のための脚本というのが魅力です。

ストーリーがシンプルというのは、ただ単純にストーリーが一方向にしか進まず、退屈だという意味ではなく、映画としての言語を豊富に使い、質の高い作品を作り上げているのがそのシンプルさの理由です。フレーミングは、スピルバーグの活躍する1970年代から1990年代の特徴を継承し、レンズの使い方もかなり、ほかのSF作品に影響を受けています。

私がこの作品で一番感銘を受けたのは、キャラクターの多さ。キャラクターが多いと必然的にスクリーンに映る時間が短くなり、キャラクターが薄くなるのが、デメリットです。一方、この作品は、キャラクターが多いのにも関わらず、映画を通してキャラクターがどんどん出来上がっていくのがすごい。ほとんどのキャラクターがユニークでそれぞれが、1つの感情を盛り上げていく。そして最後にそれをひっくり返すような、テーマを反映した展開。それを可能にしたのが編集。まず、すごかったのが、キャラクターの登場シーン。重要なキャラクターの登場シーンでは、時間を十分に使い、そのキャラクターにインパクトを与える。印象的なのは、グレッチェンがクラスに入ってくるシーン。なぜこの子はこの教室に入ってきたのかとかよりも、このキャラクターはどういう特徴、感情があるのかというのが一番前面に出てくる。それがとても難しい。

大好きな作品ですね。わかりやすいってやっぱり大事。

vary1484