劇場公開日 2005年7月30日

「誇るべき価値観や未来に託すべき何物もなくただ浮かんでいるだけでも…。」亡国のイージス talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0誇るべき価値観や未来に託すべき何物もなくただ浮かんでいるだけでも…。

2023年7月4日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
「戦争はいつも対岸の火事に過ぎない。戦後60年、日本は太平洋と東シナ海との間に、ただ浮かんでいただけた。平和なら、それで国と呼べるのか。」
「平和って、戦争の隙間に生まれるものだと、俺は思ってるんだ。この国は、60年間も、その隙間にいるんだ。俺は、それでいいと思うよ。」

例えば、警察や消防が忙しいというのは、どうせロクなことではないわけです。
やはり必要があって維持するには、人件費などを含めて、評論子らの国民の全体で、それなりの社会的なコストを負担しなければならないのでは、あるのですけれども。
そういう言い方をすれば、自衛隊だって、そんなものでしょう、現実のところでは。
実際、自衛隊の中東への派遣が問題となった当時、「現実に戦地に赴くことを念頭に自衛隊に入った隊員が、果たして何人いたのだろうか」と物議を醸したものです。

「平和呆けしている」とまで言われた日本でしたが、それで良かったし、これからも、そうであってもいいんじゃないかと思うことが、時々あります。
そして、例えそういう平和は、たまたま隙間にいるがための僥倖であったとしても、その僥倖を守り続けてもし行けるなら、それに越したことはないのではないかとも思います。民族として誇るべき何物も持ち合わせず、それが「国家としての有り様(よう)を失った」ものであっても、「語るべき未来が見えない」ものであったとしても。それは、いかにも小市民的な考え方かも知れませんが、そのものズバリ、文字どおりの小市民である評論子としては。

否、意外と「平和であることの本当の価値(ありがた味)」というものは、一見すると平凡でで、当たり前なそんなことに胚胎しているとも言えるかも知れません。

おそらくはミリタリー系の娯楽作という位置づけの作品なのだろうと思います。本作は。作中には、船舶用語や自衛隊用語が、ちらほらと埋め込まれていたりして。しかし、自らが引き起こしてしまった戦争が終わってからこの方、これまで何とか平和を保ち、あまつさえ経済成長も(それなりには?)全うして来られたことの幸せを思うとともに凡庸でも、永く今の平和が続いてほしいという願いにも、思いが至った一本になりました。評論子には。

間一髪で最悪の事態を回避して、国土や民族の安全が確保されて「ハッピーエンド」というのは、この手の作品としては、いかにもの「お約束」ではありますが、一面では、平和について、平和であることの洞察も含まれていたということでは、なかなかの良作であったと思います。

talkie