劇場公開日 1981年4月4日

「独特の色使い。構図。 サスペンスと言うより、ホラー。」殺しのドレス とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5独特の色使い。構図。 サスペンスと言うより、ホラー。

2022年8月9日
PCから投稿

怖い

『MI』の監督作品。
『MI』も、そのスタイリッシュな色合いに惹きつけられた。

『MI』と色合いは違うけれど、白と灰色。そして赤、群青色が印象的。その配分がすごい。
 ヒッチコックさんの影響を受け…というレビューをよく目にする。監督ご自身もそういうコメントを残されているらしいけど、色使いの独特さはキューブリックさんの『2001年宇宙の旅』あたりも彷彿させるかな。まったく同じというわけではないけれど、映像の無機質感がありつつも生活感も若干加味されているところとか。
 あからさまに見せるシーン。残虐さ。血糊はバレバレなのに、この痛さ。剃刀って、あんなに大きかったっけ?
 闇に隠されているものと光によってみせられているもの、鏡によって炙り出されるもの、ちょい見せ。雨降りによる曇りガラス。双眼鏡や隠しビデオによる撮影、画面二分割によって、剃刀を際立たせたり、登場人物をはっきり見せなかったり、予期不安を煽る演出。胸が早鐘のように鳴り響く。

有名な美術館のシーンとかエレベーターのシーンとか、カメラワークもすごい。
 へたをすれば、あんな長回し、退屈になる間延びした場面なのだけれども、眼が離せない。手袋を使ったエピソードで、あの追いかけっこに必然性を与えてしまうすごさ。手だけの演出で、恐怖感も煽り、目が離せなくなる。漫画のコマのような思い出し場面も秀逸。
 エレベーターのシーンも残虐なだけにもなりかねないのに、鏡を使って怖がりな私でも眼を離せなくなる。鏡だけではない。剃刀。手だけ。部分をアップした図と全体を見せて、観客をあっと言わせる図の兼ね合い、緊迫感。
 リズとピーターが、レストランで会話しているシーン。隣の席の二人連れや、ご婦人がしっかりと映し出され、その表情にも目が行ってしまう。意図ある演出だと思うが、そんな本筋とは関係ない?ところもまた、作り込んでいる。退屈させない工夫とみるか、散漫とみるかは人によるであろう。

物語は。…。エロの部分もあり、ちょっとついていけないところも。
 怖くて、さっと見てしまったからか、整合がとれていない、ツッコミどころも。どうして、そこに剃刀女が?どうしてそこにピーターが?
 性的な願望をあからさまに取り上げた作品。時代を感じる。心に悩みを抱えて苦しんでいる方々やその家族、LGBTQの方々からは、クレームがきそう。

ラスト。犯人が捕まってからの流れは何なんだ。
 サスペンスとしてみると冗長・蛇足。
 でも、ホラーとしてみると…。余韻が消えない。
 どこからどこまでが、夢か現か…。日常に滑り込んでくる恐怖。

印象的な作品であることは間違いない。

(昔、大学での上映会にて鑑賞)

とみいじょん