劇場公開日 2007年5月1日

「エッセンスはそのままだけど、ちと容量不足。」スパイダーマン3 NandSさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0エッセンスはそのままだけど、ちと容量不足。

2023年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

悲しい

楽しい

興奮

前提として
・多分3回目
・前作『スパイダーマン』および『スパイダーマン2』は視聴済
・原作と思しきものは未読。
・サム・ライミ監督の他作品だとMARVEL関連作品を視聴済。

ピーターパーカーというキャラクターの集大成、というか成長譚に近い。
ハリーとの友情、MJとの恋愛、ベンおじさんへの罪悪感という呪縛、スパイダーマンとしての活躍、そして闇堕ち……色々と濃い要素が詰まっている。
ピーター・パーカー、そしてハリー・オズボーン編として観る分にはものすごく面白い。しかし物足りなかった。

なぜだろう、と考えると"キャラ数が多い"という理由に当たる。
ピーターの右往左往、MJの諸々、かつハリーの話、新メインキャラクターが二人追加(しかもヴィラン)、シンビオート、ファンサービス……多い。
いやぁ、『スパイダーマン2』が容量ギッチギチに詰め込んだだけあって、またハードル上がってしまうとこうなるよな、といった感じ。
JJJだってメイおばさんだって、アースラだってもっと観たかった。でもグウェンはお呼びじゃない。だってMJとの絡みがサムライミ版の面白いところだし。

サム・ライミ版スパイダーマンって、キャラクターの細かい描写(特にピーターだけど)が大きな魅力の一つだけど、そこが足りない。
余計に感じてしまったのはマルコ(サンドマン)だ。サンドマン編だけゴチャついているのだ。サンドマン=マルコ自体はすっごく良いキャラだし、サムライミ版の世界観自体にも問題はないのだけど、タイミングがめっちゃ悪かった。
すでに情報量が多いところに、マルコは分かりやすい容量不足。本当にピーターとの良い絡ませ方をしているからもったいないと感じてしまう。爆弾で撃破できちゃうのもあっけないと感じたり……
『~4』とかに出せなかったのかなぁ……

キャラ数を少しだけ減らせれば、ハリーの出番は増えたし(回想とか観たかった)、MJとのドロドロの恋愛模様は観れたし、エディの魅力も深堀りできたと思う。ピーター方面の話はむしろ丁度良い。

ここまで短所ばっかり書いてはいるが、良い部分ももちろんある。
まず、CGの向上。『~2』のときも思ったが、かなり技術が向上している(サンドマン初変化時を除く)。シンビオートの寄生シーンとかめっちゃ良い。ホラー演出もシンビオート絡みなら納得できる良さ。
それに伴って戦闘シーンもかなり楽しい。これから先のナンバリングも、どう進化していくのか観たかったレベル。特に終盤の戦闘シーンとか胸アツ。

ピーターとMJの心理描写、そしてハリーとの友情から三角関係。このあたりの人間描写、さすがと言うべきかめちゃ面白い。深みにはまる感じ。『スパイダーマン』『スパイダーマン2』で積み上げてきたものの集大成がここにある。

ファンサもちょっと多すぎだけど、小気味良いし、ストーリーの邪魔にならない程度に収まっていてよかった。

あと、地味にスパイダーマンとヴィランのビジュアルが良い。目立つほどじゃないのだけれど、絶妙に生物感があって気持ち悪い。寄生生物由来のパワーってこういうものでしょ、って感じ。
そういえば、今作のヴィランは鏡写しではなかったな……鏡写しというよりもピーターの精神的罪悪感とか弱さとか傲慢さとかを分裂させて各ヴィランに当てた感じか……?

といった感じで、面白かったけど色々と物足りなかった作品。本当は『スパイダーマン4』観たかった(MJは続役希望派)。

NandS