劇場公開日 2001年2月3日

「ネバダ州の荒野!」ペイ・フォワード 可能の王国 古澤敏司さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ネバダ州の荒野!

2022年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

人の感情や思想はその風土を抜きにしては語れない、とこの映画を観てつくづく思う。ラスベガスの町はあまりに人工的で嘘臭く、その周りに広がるのは果てしない荒野。映画のストーリー自体よりもその風景にばかり心が捕らわれていた。このような場所でまともに生活していくのは、想像する以上に難しい気がする。明日への不安を酒で紛らわすか、自分の立てた予定通りにきっちりと一日を過ごすか、人を虐めて自分を慰めるか…(異常な宗教に没入して現実を忘れるという方法もあるかもしれない)。
生活の参照とすべき伝統もなければ助け合う共同体もない世の中で、それでも正常を保とうとするならば、自分が変わり周りを変えるしか方法がないと考えるのは当然といえる。ゲンコツを与えるか慰撫を与えるか。その実践の困難さを描くのがこの映画。フォレスト・ガンプのように無心の行為が世界を変えるのとは違い、実践は誠に難しい。世界はクソだから。そんなクソの世の中でも、続ければ一輪くらいの花は咲くんじゃないかというのが主題。みんなクソまみれになりますけど。
カタルシスはない。大成功、万々歳な終わりかたではない。しかし、主役の男の子がメディアの注目を浴びた後クズ人間になる可能性もないので、そこは安心できたかなと思う。
気になっていた映画なので、消化できてよかったというのが正直な感想。可もなく不可もない。

古澤敏司