劇場公開日 2001年1月27日

「剥き出しの敵意と暴力が、一般人の目の前でいきなりぶちまかれるのです それが21世紀なのです」BROTHER あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0剥き出しの敵意と暴力が、一般人の目の前でいきなりぶちまかれるのです それが21世紀なのです

2020年6月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

2001年1月日本公開
正に21世紀の幕開けに相応しい

タイトルを日本語にすれば「兄弟仁義」だと思います
♪親の血を引く兄弟よりも、かたいちぎりの義兄弟~という北島三郎の超有名曲の映画化といってもいいかも知れません
その21世紀バージョンならこうなるを、北野武監督はやって見せてくれたのだと思います

21世紀とは何か?
グローバルで、人種を超えて、ボーダーレス
しかも何でもあり、やったもの勝ちの世界
ヤクザ映画にこれを当てはめた映画です

そしてまた日本の衰退も描かれています
小さなコップの中でいさかいをしているだけで、
海外にでるのは、はみ出しものです
しかも孤立無援

これじゃあ、縮小していく一方です

そこまで見通して北野武監督は撮って見せてます
そして高い完成度の作品に仕上がったと思います

しかし、監督本人や周囲からの期待とはよそに、本作はそれ程高い評価は得られていないと思います

それは余りにやり過ぎたということだと思います
どん引きした、という表現が一番近いと思います

ついてこれなかったということです
過激な映画作家のように見らてしまったように思います
その過激さの意味合いが伝わらず、ただの衝撃となってしまった上滑り感があります

指を詰める、箸を使って惨殺する
それらはやはり見せ過ぎたと思います

しかしそれこそ北野武の映像の魅力のひとつであるのは確かです
そして、この強烈な剥き出しの暴力の表現こそが本作のテーマそのものなのですから

これが21世紀だ!目を背けるな!

これが本作での監督のメッセージなのです
だからあそこまでやらなくてはならなかったのです

奇しくも21世紀はWTCへのテロ攻撃で幕を開けました
本作同様、剥き出しの敵意と暴力が、一般人の目の前でいきなりぶちまかれるのです
それが21世紀なのです

革新者は、大抵評価されないものです

マフィアに楯突いて流石にやり過ぎた
逃げろという主人公の台詞は、北野武監督そのものの投影かもしれません

カンヌなど世界的映画賞を取り巻くってしまった
これからどうするよ、おい!

北野武監督の悩みもまた吐露されているようにも思えました

あき240