配信開始日 2023年12月22日

「SERVANT≒SALTBURN」Saltburn かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5SERVANT≒SALTBURN

2024年1月6日
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女流監督エメラルド・フェネルの作風は、一言でいうと“猥雑”なのである。前作のフェミニズムムービー『プロミシング・ヤングウーマン』も拝見させていただいたのだが、これまた実にいかがわしい作品だ。女友達の復讐のためナース姿でお仕置きをかます演出などを観るにつけ、この世界を支配するシステムにどこかねじ曲がった感情をいだいていることがアリアリと伝わってくるのである。

貴族階級に羨望と嫉妬の眼差しをむける中流階級の主人公オリバーを、見るからに気味が悪い怪優バリー・コーガンが好演している。フェネルの作風に実にマッチする若手俳優なのだが、憧れのボンボン貴族フィリックスの精液が混じったバスタブの排水を飲み干したオリバーが、エクスタシーを感じる演出はいくら何でもやりすぎだ。ジュリア・デュクリュノーやグレタ・ガーウィクのようにグロいシーンの中に、美意識を感じることもなくひたすらグロテスクなまま。フェネル作品の特徴といってもよいだろう。

本作を撮る前に『召使』を観て参考にしたと語っていたフェネル。わきの甘い貴族の坊っちゃんを、家事を人質にとって次第に隷属させていく召使のお話だ。1963年公開の映画なので、坊っちゃんと召使のモーホー関係はほんの匂わす程度なのだが、本作のバイセクシャルなオリバーのモデルはおそらく『召使』(SERVANT≒SALTBURN)のダーク・ボガートとみて間違いないだろう。ただし、オリバーを演じるバリー・コーガンはひたすら醜くく、ダーク・ボガートのようにいけていないのである。

『召使』の監督ジョゼフ・ロージー曰く、イギリスのパブリックスクールに通ったことのあるボンボンたちは、ほぼみなゲイの洗礼をうけているそうで、本作に登場するフィリックスやファーリーのようなボンボン育ちが、オリバーのテクにやられてしまってもなんら不思議ではないらしいのである。ソルトバーンの大邸宅に友人として招かれたオリバーが、(心理的に)家族にとりいっていく“パラサイト”式ストーリーには実は裏があって...みたいなオチは別にいらなかったような気がする。

フルチン姿(ボカシ付)で大邸宅の中を踊り回るお調子にノリ過ぎたオリバーに、ラストは何らかの形で正義の鉄槌を下すべきだったのだ。ヘンリー8世のように梅毒をうつされて不能になってしまうとか、実はキャットン家が借金まみれだったとか、あるいは邸宅の迷路で迷子になり(素っ裸でポコチンを握ったまま?)凍死してしまうとか....悪が悪のまま勝利をおさめる映画はハリウッドでは確かご法度なはずで、Amazonオリジナルの配信用に撮られた作品だから許されたエンディングなのであろう。

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かなり悪いオヤジ