12日の殺人のレビュー・感想・評価
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刑事たちのドラマが見応えあり
若い女性がガソリンをかけられて生きたまま焼き殺されるというショッキングなシーンから始まる本作。フランスで実際に起きた事件を元にしているというから、何とも衝撃的である。
映画はこの事件を書いたノンフィクション小説をベースに敷いているということである。ただ、物語に登場する刑事や容疑者等は、必ずしも事実に即しているというわけではなく、そこには脚色が入っているらしい。
しかし、それでもかなりのリアリティが感じられる映画だった。カタルシスを極力排したストイックな作劇が、事件の悲劇性をヘビーに物語っている。
逆に、エンタメだと思って観てしまうと物足りなく感じる作品かもしれない。事件捜査の過程を綿密に盛り上げるのではなく、事件の謎に翻弄される刑事たちの姿に重点を置いた作りは、サスペンス的な面白さを失している。
例えば、劇中には何人か有力な容疑者が登場してくるが、ヨアン率いる捜査チームの追及が淡泊に映ってしまい、観てて歯がゆく感じられてしまった。また、被害者であるクララの家庭事情や交友関係といったバックストーリーも形骸的で、捜査の中心となる部分が完全にぼかされてしまっている。こうした作りからも分かる通り、本作は本格的なミステリーとは言い難い。
とはいえ、捜査の舞台袖で描かれる刑事たちの人間ドラマが中々魅力的で、これがあることで面白く観れたのも事実である。
捜査の指揮を務めるヨアンは冷静沈着で真面目な男。ユーモアには欠けるかもしれないが、時折見せる人情味あふれる表情が魅力的で、事件に真摯に向き合う姿勢にも好感が持てた。
また、ヨアンの相棒となる中年捜査員マルソー、後半から登場する女性捜査員ナディアのキャラクターも中々に良い。マルソーは家庭内に問題を抱えており、それが原因で捜査にトラブルを持ち込んでしまう。ナディアは本作のテーマを語る上では欠かせないキャラクターであろう。男性社会における女性の生きづらさを象徴するキャラクターとなっている。
監督、脚本は「ハリー、見知らぬ友人」のドミニク・モル。シュールでブラックなコメディだった「ハリー~」に比べると、まったく毛色の異なる本作だが、人間の深層心理に潜む”嫉妬”だったり、”悪心”といったイヤな一面をフィーチャーした点は共通している。
特に、本作では”嫉妬”という言葉が度々登場してくるのが印象的だった。今回の事件も”嫉妬”からくる私怨が原因だと思うのだが、この”嫉妬”という感情は非常に厄介なものである。恋愛関係や仕事等で、人はどうしても他者と自分を比較してしまいがちになる。そこで生まれる”嫉妬”は時に人を狂気へと走らせてしまう。
ヨアンは常にポーカーフェイスで感情を表に出さないように自制している。時折ロードバイクでトラックを周回している姿が映し出されるが、そうしてストレスを発散することで、どうにか心のバランスを保っているのだろう。”嫉妬”や”悪心”と無縁そうに見える彼だが、そんな彼でもやはり自分の心の弱さには勝てないのだ。そこに人間の本質を見てしまった。
サスペンスかと言われると…?
単純に事件を解決していく
サスペンスやミステリーというわけではなかった。
事件そのものより、
事件を捜査する捜査官の心情や
捜査官同士の関係性に重きをおいて描かれていて
その視点が面白く興味深くみることができた。
個人的な感情が捜査に影響を与えることは
実際あるだろうなとも感じた。
結局、事件が解決するわけではないが
サスペンスやミステリーではなく
ヒューマンドラマとしておもしろい作品だった。
事件がどのようにして未解決になっていくのかを描いた映画
予告やチラシで完全にミスリードしていて、ミステリーサスペンスではないなあというのが率直な感想です。
12日の夜に起きた殺人事件がいかにして未解決となっていく様を
事件の捜査状況を詳細に描いています。
ミステリーサスペンスときたら、事件がどのように解決されるのか、犯人を特定するのかが見どころだと思うのですが
そうではなく、どのように未解決になっていくかが、この映画の視点ですね。
新しいと思いました。
しかしながら、ミステリーを期待した方は大空振りな気がしますね。
ポスタービジュアルの女性、クララはほんのちょっとしか登場しないにもかかわらず、
聴き取り捜査が進むに連れて、人物像が浮き彫りになっていくのは、すごいと思いましたし、怖いとも思いました。
かなりやんちゃな女の子だったようで、そりゃあ事件に巻き込まれてもおかしくないよな〜とも思いました。
出てくる容疑者の男たち、全員怪しいですからね。それもどうかと思うくらい怪しいですよ。
でも特定はされないんです。決定的な証拠が何ひとつないんですね。
現代において、殺人を犯して犯人の特定ができないことなんてあるのか!?と不思議に思いつつ
こうやって未解決事件化していくという、やるせなさを感じました。
主人公の 刑事、ヨアンとマルソーの関係性がすごく良くて、
お互い本音でモノを言えるって素晴らしいなと思いました。本当の親友とはこういう関係性なのでしょう。
というわけで、新たな視点のミステリー作品でした。
賞を取る作品なのかいまいちわからなかった。男社会としての形状の社会...
賞を取る作品なのかいまいちわからなかった。男社会としての形状の社会の中にいる主人公。
「彼女が殺された理由を私は知っている。それは女の子だから」と親友の女の子は泣きながら言った
未解決事件の話だから解決しない。ただ事件に女性判事が関わり、新人の女性刑事ナディアが事件後2年たってチームに加わったことで少しずつ風穴が開いてきた。
何も変わっていないといえばそうかもしれない。でも主人公も彼女達と出会い先輩の刑事から花の写真を送られて変化していった。同じ所をぐるぐる回るのでなく、自然の中でサイクリングするようになった。
男だけの世界、加害者も男、捜査する側も男、男の世界の中でぐるぐる回る異常さと息苦しさに気がついていく。
こういう刑事ものもあっていいなと思った。新しい!
刑事が殺人犯を突き止める為、多くの人に聞き取り調査をする会話劇。 本年度ベスト級。
本作の上映10分前まで若葉竜也さんのタイムループ系の作品を観ていたので心の準備もままならずに鑑賞。
そんな状況に不安はあったけど、何とか鑑賞する事が出来た(笑)
本作の監督の前作のフランスの山奥で女性が殺された作品が面白かったので鑑賞。
本作は終始会話劇って感じで前作とは違った意味で楽しめた感じ。
ある女子大生が深夜、何者かに殺され2人の刑事が犯人を捜しだそうとするストーリー。
刑事が殺された女子大生の知り合いに聞き取り調査をして行く展開。
刑事が怪しいと思われる人物を犯人にしようと早く事件をクローズさせたい感じがちょっと恐ろしい。
どこの国の警察も怪しい人物を犯人に仕立て上げようとする感じに考えさせられる。
本作は実話ベースの作品との事で、犯人が解らず迷宮入りするんだけど、映画と言うことで意外性のある犯人だったとか一捻りして欲しかった感じ。
刑事が自転車に乗って競技トラックを走っているシーンが散見されたけど何の意味があったのか?
解りませんでした( ´∀`)
警察24時
みたい、オーソドックスな造りで凄く観易い。本当の事件じゃあこういった結末を迎えるものの方が多いんだろう、予算が無くて防犯カメラ止まりっ放しとかありそう。刑事たちはマシンじゃないので日々消耗、すり減らしていく、そんな二人は退職した事で、また公道に出られた事で少しは救われたのだろう。
「落下の解剖学」と真逆の部分が興味深い。いじくりのない手法とか、声のある音楽の多用とか、ラストも観客に委ねるというより誰でも納得するしかないというか・・・
フランスで高い評価を得ている映画
この映画を最後まで楽しむことができた。フランスでは、随分高く評価されたようだ。きちんと細部まで作りこまれていたからだろう。これまで知らなかった彼の地のこと;
一つは、殺人事件が起きた時、警察が担当する場合と、憲兵隊に任せる場合がある。都市部は警察、周辺部では憲兵隊。警察の担当になったのは、あの美しいグルノーブルの都市部と周辺部のボーダーの辺りで事件が起きたということ。入れ子の国だから、内務省の管轄する警察の事件であったとしても、国防省直下の憲兵隊も横目でみていることになる。例外も多いのだろう。ある種の緊張感がある。
美しい女子大生クララが焼死した事件そのものは、昇進したばかりのヨアンとベテランで家庭に不安のあるマルソーが活躍したが、迷宮入りし、捜査チームも一旦解散した。フランスでは、年間800件に及ぶ殺人事件のうち、2割が未解決とか。
ところが、クララの3年目の命日を前にして、予審判事からヨアンに呼び出しがあった。これが、二つ目のポイント。もう日本では、とうになくなってしまった予審判事の制度があるのだ。日本だと、美しい検事が活躍するドラマはあったが、法廷外で判事が出てくるなんて。予審判事には、捜査の指揮権がある。実際、資料をよく読みこんでおり、捜査の方針をアドバイスして予算を工面する。その再捜査の過程も非常に魅力的だった。あらたなキャリア出身の捜査員も投入される。捜索する警察と、本来ならば裁判をすればいい判事が交錯して捜査が進む。そうしたところがフランスで評判を呼んだ背景か。
不思議なことに、フランスと日本の警察制度には共通性がある。東京とパリには、警視庁があり、パリの方は最近変わったみたいだけど。日本の警視庁の捜査第一課長はキャリア出身でないこと。幕末、フランスの制度が導入されたことが関係しているのか。
自転車の好きなヨアンがベロドローム(競技場)でのルーティンの訓練から、チームを去ったマルソーのアドバイスに従って、ツール・ド・フランスに出てくるような山道に挑戦するところがよかった。その昔、ビートたけしがドラマ「張込み」で、ベテランの巡査部長を務め、若手エリート警部の緒形直人と共演したことを思い出す。女性ヒロインの鶴田真由が魅力的だったことも忘れられない。
惜しい
基本的に劇的な作品にしよとはしていない事は分かる。淡々と事件を追っていて。
しかしうまく行っていない。後半で突然動きだす操作も取ってつけたような話だし、判事を何等かで出しておくべき。
前回の「悪なき殺人」もそうだがなにかが足りないように思う。
つまらなくないけど惜しい
ある未解決事件についての捜査を、担当刑事の視点でじっくり描いたサスペンス。
実際の未解決事件をベースにしているため、本作も未解決のまま終わります。凄惨な殺人事件であることから、主人公の刑事が精神的に疲弊していく…のですが、当の主人公よりも病んでいく同僚刑事がいるので、そのあたりも若干散漫に。
捜査や容疑者の取り調べについてもかなり強引というか、この段階で決めつけるの早くない?みたいなことが多発するので、共感性は低め。
全体的な構成は面白いし、地味ながらも最後まで飽きずに観れたのですが、最後が投げっぱなしというか、未解決だからってもう少し良いまとめ方あったんじゃない?という印象。スッキリしないなー。
237 あまり探偵映画的に煽らないでほしいね
“未解決事件ものの新たな傑作”
やめてよ。探偵小説好きにこう言って煽るのは。
デカ長は同じ景色をぐるぐる回っているのから
峠を越えるようなところへステージが上がりました!
僕は満足です!ってなるかもしれんが
観てる方はそれをやられてもなあ。
そらなんとなくジェンダー的な訴えが裏であるのはわかるけど
あたしゃあそんなものは観たくないんですわ正直。
この領域で話すと長くなるんで割愛しますが
カネ払いたくないです。
もっと未解決ならそれなりに見せ方があるでしょうに。
映画の雰囲気がよかっただけに残念です。
60点
アップリンク京都 20240330
フランスにおける黒猫ってどれくらい不吉なのでしょうか
観終わって「何もかもがスッキリした!」というタイプの映画ではないので、好みの合う合わないは分かれる作品だとは思う。
生きたまま焼かれた少女。怨恨が疑われることから、彼女の異性関係が捜査対象になるが、排除しようとしても、どうしても予断が入り込む。その予断も、刑事一人一人が抱えている状況や、事件そのものへの思い入れによって違う様子も丁寧に描かれる。
やがて、予想以上に容疑者が増えていくにつれて、被害者側を責める論調や、犯人を決めつける者も出てくるのだが、それを見せられている我々観客もそれに共感しかけたところで、被害者の親友から、投げかけられた言葉が強烈だった。
彼女が例えどのような男性と付き合っていたにしろ、生きたまま焼かれなければならない理由にはならないし、親友や両親にとっては、かけがえのない人だったという当たり前のことも丁寧に描かれ胸を打つ。
作品の中で「犯罪を犯すのも男性で、それを捜査するのも男性」という言葉が出てくる。本当にそうだろうかと思いながら調べてみると、犯罪の9割は男性が起こしていた。その割合の多さに、正直驚いた。同時に「本当にそうか?」と思った時点で、自分も無自覚で無反省な男性優位思想にどっぷりだったのだと反省した。
ただ、この映画における性差の問題は大きな柱の一つだが、そこに単純化させていないところがこの映画のよさだと感じる。
例えば、日常生活の中では、明快に何かが解決することばかりではない。モヤモヤを感じていることも、何となくうやむやな着地のまま、次の新たな問題に向かわなくてはいけないことも多い。けれど、解決はしなくても、その問題と向き合ったことで、自分の中に生まれたわずかな前向きな変化を見つけることもある。
その様子が、主人公の趣味としている自転車になぞらえて表現されているところなど、とてもよかった。
また、途中で退場した同僚のその後も、象徴的な描き方で多くを語らない所もよい。
あえて、問題の解決を中心に持ってこないことで、人々の複雑な心の動きを複雑なまま提示する企てにより、味わい深い作品になっていると思う。(ここが評価の分かれ目かも…)
ところで、この映画の中では、黒猫ばかりが登場するのだが、フランスでは、黒猫はガチで不吉の象徴なのか、それとも迷信程度なのか、そのニュアンスにとても興味がわいた。
思っていた映画とは違っていました
闇とは何なのか…
事態が変わらず閉塞感が続くこと
義務的な仕事の繰り返しなど、日常への埋没
口には出さないが、被害者女性への偏見があった(男性関係など)
単なる仕事のストレス
そんなところでしょうか。
途中で凄く眠くなってしまって、残念ながら見落とした部分も多いです。
その謎はきっと…
若い女性の無惨な殺人事件を捜査するも、イマイチ進展せず闇に迷い込む刑事達の姿を描いた作品。
粗予習無しで観たので、最初は難解な事件を解決していくミステリー作品かと思ってたが…
冒頭のテロップとか、ネタバレ以外の何物でもないだろw…なんて思ったりしたが、本筋はそこじゃないようですね。
チームの皆を含め、登場人物は誰もが怪しげで何かを抱えているような。事件を軸に、不安定な人間らしさ(?)がヒシヒシと伝わってくる。
捜査パートはミステリー感あって良いですね。振り出しに戻る歯痒さや、ある意味ホラーよりも怖い演出もそこそこに…からの"ここで歌ってみろ"は拷問過ぎるw
そんなこんなで、監督の仰る伝えたかったこと、感じたかったこと、は堪能できたがこういう作品はやっぱり最後にはそれが欲しいと感じてしまい…。
まぁそこじゃない作品のようなので仕方ないが。
そして、捜査は気の遠くなるような作業ですね。
来るかどうかもわからない犯人を待ち続ける…想像もできません。
そんなことも含め改めて考えさせられたし、期待とはちょっと違ったが濃密な人間ドラマを観た感じで中々良かった。
サツカンだって人間だ
事件を捜査する警察官の人間臭さが描かれた作品だと思うの。
ふつうの人が犯罪に関わることはまずないけど、警察官は毎日の業務として関わるんだよね。
それが普通だから、普通にやれるんだろうと思ってるけど、やっぱり、そうじゃないとこは出てくるんだよね。
同僚も色々と事情があって、それが捜査に影響するし。
というのが静かに描かれていて面白かったよ。
Ordinary
監督の前作も邦題が〜の殺人で、今作も捜査系の作品なんだろうなーと思って観ましたが、思っていた方向とは違う方向に進んでいった作品でした。
殺人事件を捜査しつつ、事件の真相へと向かってはいくものの、どうも刑事たちの普段を映したり、手当たり次第怪しいやつを尋問したりの繰り返しで、静かすぎる作風が自分には合わなかったです。
序盤の殺される模様が衝撃的だったので期待したのですが、そこからどんどん尻すぼみになっていってしまいました。
刑事たちは日本映画で描かれるような刑事みたいにおバカさんが多めで、基本決め打ちしていって外れて、バカみたいに尋問して外してばかりなので、もう少し捻って考えてくれよと思ってしまいました。
基本的に同じ部屋でやるので変わり映えしないのも頭を抱えてしまいましたし、その会話が次に繋がるわけでもないのがこれまた…。
オチの付け方も未解決事件の終わり方のような悔しさとかそういうのではなく、淡々と終わっていったのも物足りなかったです。フランス映画はサスペンスでも相性が悪いとは…。んー難しい。
鑑賞日 3/21
鑑賞時間 11:45〜13:45
座席 E-13
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