劇場公開日 2024年3月2日

「アイドルを通して、人間が浮かび上がるドキュメンタリー」くぴぽ SOS! びよーーーーんど A・ガワゴラークさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アイドルを通して、人間が浮かび上がるドキュメンタリー

2024年3月5日
Androidアプリから投稿

「くぴぽ」は服部真希(まきちゃん)がプロデューサー兼プレーヤーの地下アイドル。まきちゃんは女装アイドルで、メンバーをジャイアントスイングで振り回したり、意図的にはぐれものとなったり、その境界性を用いたパフォーマンスも行う、特異なアイドルだ。

本作は「くぴぽ」のドキュメンタリー第2作だが、他グループを含めた大阪地下アイドル群像を捉えており、COVID-19流行下という困難な時期の記録でもある。

コメントを求められたアイドルたちは、アイドルになる理由、続ける理由を自己実現、かわいくなりたい、音楽を仕事にしたい、歌に勇気をもらったから自分も誰かに届けたい、誰かの居場所になりたい、辞め時がわからなくなった、普通に働く自信がない、生活手段であるなど様々に語る。
アイドルは数年でいなくなる人もあれば、歌い続ける人もいる。メンバーが卒業して交代するグループもあれば、この人がいないとと休止されるグループもある。アイドルは偶像だが、アイドル活動を通して彼女たちの個人の姿が浮き上がるようだ。

「くぴぽ」でもメンバーはばたばたと卒業し、まきちゃんは苦悩でげっそりとしていき、それでも活動を続けている。
2023年の大阪・服部緑地の「服部フェス」で階段を駆け上がり、もがきながら歌う姿を見るとき、私達はアイドルとしての彼女と、個人として生きる彼女に「まきちゃんかわいい」と声援を送りたくなってしまうのだ。

新宿k'sシネマで1週間、連日トーク付きでの限定上映だった。

A・ガワゴラーク