劇場公開日 2023年12月22日

「雪山に投げ出されても屈しないラガーマンたち」雪山の絆 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0雪山に投げ出されても屈しないラガーマンたち

2024年1月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

1972年10月13日、ウルグアイのラグヒーチームと家族、サポーター、友人、総勢45 人を乗せてウルグアイから遠征先のチリに向かったチャーター機が、悪天候の影響で尾根に激突し、氷河を滑り落ち、大破。"アンデスの悲劇"または"アンデスの奇跡"と呼ばれ語り継がれるこの航空機事故の詳細を描く映画は、雪の白さが太陽に反射して機体を見えなくしてしまったり、アンデス山脈のまるで波のうねりのような山々が捜索を困難にしたり、雪崩が襲いかかったり、生存者を飢えが苦しめたり、等々、絶望の連続過ぎて観ている側も息が絶え絶えになる。

しかし、ラガーマンたちは屈しない。大破して壊れた機体から機材を外してその中で過ごせる空間を作り上げた彼らは、外に吹き飛ばされた怪我人を運び入れ、遺体を搬出し、雪を溶かして飲み水にし、飢えを凌ぐために究極の決断を下し、落下地点にあるはずの無線を探して旅に出る。

これは、人間が死と向かい合う時に、どれだけ仲間を思いやり、そうすることで人としての尊厳を保つかという、プライドとサクリファイスについての物語。孤高のサバイバーを描いた作品にはない、チームワークの凄さが深く胸を打つ。

だからこそ、生還した16人の向こう側に散って行ったチームメイトの面影が浮かぶラストシーンでは、堪えていた涙が一気に溢れ出るのだ。

清藤秀人