劇場公開日 2024年2月2日

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「題材に誠実に向き合った作りだが、それゆえの物足りなさも」ダム・マネー ウォール街を狙え! 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0題材に誠実に向き合った作りだが、それゆえの物足りなさも

2024年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

IT系ニュースサイトで翻訳に携わってきた関係で、「ゲームストップ株騒動」は一応覚えていた。とはいえリアルタイムで追いかけていたわけではなく、公聴会が開かれるほどの大問題に発展してからの報道で、それまでのおおよその経緯を知った程度だが。そんなわけで本作を観ることにより、主人公であり騒動を牽引したキース・ギルの動機や、彼の動画配信やRedditの書き込みを通じて賛同した低所得の若年世代が手数料なしの投資アプリ「ロビンフッド」を通じてゲームストップ株を買い支え、巨額の空売りを仕掛けていたリッチな大口投資家らを慌てさせる過程などを追体験する感覚でよく理解できた。

本編中に「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の映像の引用があったが、同作や「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」を撮ったアダム・マッケイ監督の作風と比較すると、金融市場を通じて富裕層が庶民から収奪する構造を問題提起するスタンスは近いものの、ユーモアやサスペンスで盛り上げる娯楽成分が、この「ダム・マネー ウォール街を狙え!」にはやや足りない。誠実に向き合ったことは伝わるのだが、まじめゆえに物足りないというか。コロナ禍の期間に撮影されたため、登場人物の大半がマスクを着けていたり、電話やビデオ会議で会話するシーンが多いなど、あの時期特有の閉塞感が漂っているのもすっきりしない一因だろう。

ゲームストップ店舗の上司をデイン・デハーンが演じていて、ほぼマスク着用のためカメオ出演みたいな感じになっているのはちょっと笑えたが。

高森 郁哉