コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第15回

2018年9月3日更新

メイキング・オブ・クラウドファンディング

■クラウドファンディングに後押しされた映画制作

大高 : クラウドファンディングを初めてやってみた感想を教えて下さい。

上田 : 監督メッセージでも書いたんですけど、最初はクラウドファンディングをやることに対して若干の抵抗がありました。知らない方にお金をもらって、それで映画を作るということに、何となく抵抗があったんです。責任が重いというか。でも自分が実際にクラウドファンディングをやってみてると、応援コメントにすごい背中を押してもらえましたね。応援してくれる人のことを”支援者”って書くと、少し距離をとっている感じがするので、僕は”チームメイト”と書くようにしました。「今チームメイトが◯◯人になりました!」とか。一緒に映画を作ってくれる人を募集するというような気持ちに切り替えてからは、ものすごくすっきりして進めるようにはなりましたね。そしてだんだんと、責任を背負ってみようという風に気持ちが変化していきました。

大高 : クラウドファンディングをやり始めて、手応えみたいのはありましたか?

上田 : 初日だけで50万円くらい集まったと思うので、手応えはありましたね。

上田監督と筆者
上田監督と筆者

大高 : ちょっとこのグラフを見てください。一応これがお手本っていうか、達成したプロジェクトの平均推移を表したものです。「カメラを止めるな!」は完全にお手本通りっていう感じで、特に初日がすごかったですね。市橋さんとしては、今までやってきた作品のクラウドファンディングと比べて違うと思ったところはありましたか?

市橋 : やっぱり、スピードは速いなと思いましたね。このシネマプロジェクトは第7弾だったので、今までの作品にも支援をしてくれた方がたくさんいました。だけどそれ以上に、やっぱり監督である上田君や出演者の友人方が最初にこぞって応援してくれたという気がしますね。そこで勢いがぐっと上がって、「なんだこりゃ!?」という形で注目もされ始めたのかなと思います。

大高 : そうですね。コメントでも「監督応援してます」っていう人もいれば「真魚さん応援してます」って人もいて、ものすごくバランスが良かったですね。

市橋 : そうそう。なんか色々ですよね。応援してくれる人が。

大高 : 僕はクラウドファンディングの時点で、この映画がすごくなりそうだと思いました。なぜならスタッフやキャストの熱量がちょっと半端じゃないなという感覚があったからなんですね。映画を撮る前から、ある種の自信がここまであるというのは、ちょっと珍しいです。

市橋 : アイドルっぽい女優が出演しているわけではないので、ファンを引き寄せることもできない。もちろん、そういう特典を僕らは用意できないんですよね(笑)。そういったものが全くない中で、良い感じのスタートだと思いました。

上田 : それはやっぱり、市橋さんが今までやってきたシネマプロジェクトの積み重ねがあったからこそですね。僕も今まで短編を7本ぐらい作っていて、そこでファンになってくれた方や応援してくれる方も増えていったんだと思います。そういった積み重ねが、このスタートダッシュに繋がっているんでしょうね。

大高 : そういえばリターンの中に、撮影現場招待っていうのがありましたよね?僕も行きたいなぁと思っていたけど、あれは撮影前に行う製作費のファンディングをしているからこそ出来るものですよね。みなさん本当に撮影現場にいらっしゃったんですか?

市橋 : 撮影の案内はさせてもらったんですが、スケジュールなどタイトだったので実際に現場に来られたのは6人中2人かな。現場に来ることが、みなさん一番の目的ではなかったみたいですね。

大高 : 現場に来た2人は、どんな感じでしたか?

上田 : 2人とも、僕の元々の知り合いでした。ずっと映画を作っていると、エンドロールに自分の名前が出ることが結構当たり前になってきちゃったりするんですよね。でもその2人は、試写会の時に自分の名前を見つけて「入ってるー!」って言ってものすごく喜んでくれました。エキストラとして背中が映ってるシーンでも「映ってるー!」って言って、ものすごく感激してくれました。それはよく覚えてますね。

大高 : そうなんですね。僕は映画を3回ぐらい見るまでは、エンドクレジットの名前をちゃんと確認できませんでした。あのエンドロールと併せて上映されている映像って、上田監督が頭につけてるGoProの映像ですよね!?更なる舞台裏が流れてるってことじゃないですか。「この映画は3度始まる・・・」的な(笑) それに注目してしまった。「実はこのシーンは本気でコケたのかな?」って、なんか色々と気になって(笑)

上田 : 1回目はそっち観ちゃいますよね、どう考えても。

大高 : 「カメラを止めるな!」はクラウドファンディング+ワークショップという、お金も役者も外から募るという参加型の映画作りで、これは結構トリッキーな組み合わせだとは思います。通常の映画作りと比べて違った部分はありましたか?

上田 : 僕は今までの映画でも割と当て書きが多くて、僕にキャスティングの権限がない場合でも、キャストが決まった時点で脚本を書き直したりもしていました。なので、役者に関して違うと感じた部分はあまりなかったです。映画に関して言えば、ワークショップを経てチームを作ってから撮影に挑んだということが、作品のテーマ的な部分とすごく一致していました。今回はそういったところが噛み合っていたので、うまくいったというのはあると思いますね。

大高 : 最後に、クラウドファンディングの支援者に向けて一言お願いします。

上田 : チームメイトのみなさんは「カメラを止めるな!」の社会的な評価も著名人のコメントも無い、どんな映画が出来るかも分からないという、なんら保障のない状態の時から応援をしていただきました。僕らの背中を強く押してくれました。本当にもありがとうございます!

上田監督
上田監督

「カメラを止めるな!」
大ヒット公開中

監督・脚本・編集:上田慎一郎
出演:濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ 長屋和彰 細井学 市原洋 山﨑俊太郎 大沢真一郎 竹原芳子
浅森咲希奈 吉田美紀 合田純奈 秋山ゆずき
撮影:曽根剛|録音:古茂田耕吉|助監督:中泉裕矢|特殊造形・メイク:下畑和秀|ヘアメイク:平林純子|制作:吉田幸之助|主題歌・メインテーマ:鈴木伸宏&伊藤翔磨|音楽:永井カイル|アソシエイトプロデューサー:児玉健太郎 牟田浩二|プロデューサー:市橋浩治
製作:ENBUゼミナール  配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール
96分/16:9/2017年 ©ENBUゼミナール

公式サイト
http://kametome.net/index.html

筆者紹介

大高健志(おおたか・たけし)のコラム

大高健志(おおたか・たけし)。国内最大級のクラウドファンディングサイトMotionGalleryを運営。
外資系コンサルティングファーム入社後、東京藝術大学大学院に進学し映画を専攻。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にMotionGalleryを立ち上げた。

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