コラム:若林ゆり 舞台.com - 第8回

2014年5月30日更新

若林ゆり 舞台.com

第8回:創意と舞台表現の玉手箱! 15年以上も続く「ライオンキング」の魅力を、人気キャラの俳優コンビが徹底解説!

黒川と福島が「ライオンキング」に初めて参加したのは、06年の韓国・ソウル公演から。2人はともに韓国出身で、もともと母国で俳優として活躍していた。黒川が劇団と出会ったのは、大学を卒業する直前のこと。

「研修で来て、劇団四季は俳優とスタッフそれぞれがプロの仕事をしながらひとつになっていると感じました。ほかの劇団だったらメインキャスト中心になったりするじゃないですか。でも劇団四季はそういったことがなくて。アンサンブルの1人1人も命賭けてやってる姿を見て、感動しちゃって。アノ人がよかった、というより、この作品よかった、と思えるように作られている。僕は俳優としてこっちを目指すべきなんじゃないかと思ったんです」

福島はすでにテレビや映画、舞台で実績を積んだスターだった。それでも、「私も劇団四季に来たのは、やっぱりスターより言葉、作品が大事っていうスタイルが素晴らしいから」だという。「ここでは誰か1人がスターなのではなく、全員が輝いていられるんです。誰でも主役になれる。そういうシステムなんですね」

こうした劇団の姿勢と、誰もが黒子であり、主役でもある「ライオンキング」とは相性抜群。創意と工夫の洪水のようなステージは連日、観客たちを驚かせ、楽しませ、感動させ続けている。なかでもティモンとプンバァは、子供たちにも大人気だ。

(C)Disney 撮影:阿部章仁
(C)Disney 撮影:阿部章仁

「反応はダイレクトに感じるよね」(福島)

「それだけにプレッシャーなんですよ」(黒川)

「でもお客さまを笑わせるために、なんかやっちゃうとダメなんです」(福島)

「笑いをとりに行くと、ティモンやプンバァじゃなくなるから。江戸弁を使ったり女性言葉を使ったりしているから、よけいにね。キャラクターを外さないで、言葉は忠実に、その上で面白くというのは日々、研究してます。たとえば学生とか若いお客さまが見に来たときは、ツッコミが早いほうが笑ってもらえるとか。ちょっと上の年齢層の大人の方々が多いときは、間をとって、ちゃんとボケを楽しめるような時間を作ったり。最初に舞台に出て行ったときに客席を見て、その日の空気を感じとったらそれに合わせてテンポを作っていくんです」(黒川)

「貸切のときの学生さんたちは、声を出して笑ってはいけないと思っているのか、恥ずかしいのか、客席が静かだったりするんです。でも結局最後にはね、みんな拍手してくれるから、『あ、楽しく見たんだね』ってホッとする(笑)」(福島)

(C)Disney 撮影:上原タカシ
(C)Disney 撮影:上原タカシ

パペットを操る俳優を見せる手法は、見る人の想像力を大いにかき立てワクワクさせる。「これが舞台表現の大きな魅力」と、黒川。

「『リトル・マーメイド』もパペットを使っているんですけど、人間が見えたらダメなんです。でも『ライオンキング』はダブルイベントといって、パペットと人間がどっちも見えなきゃダメ。両方の芝居がひとつになって完璧になる。お客さまがどっちを見ても楽しめて、見れば見るほど新しい発見がどんどんできると思うんです」

美しく楽しく、圧倒的な舞台は子どもが初めて見る舞台としても最高だし、大人の舞台ファンにとっても見飽きることがない。「これを超える作品はないんじゃないかな」と、福島。「どの年齢層が見ても楽しいし、音楽にしろ演出にしろ、芝居の内容にしろ、ひとつも手を抜くところがない。アートとしても美しい。日本で15年間、毎日毎日少しでもいいものにしようとこだわって作ってきて、初演のときよりも積み重ねられたものがある。この努力があるから、15年お客さまがずっと足を運んでくださっているんだと思います」

「ライオンキング」は東京・四季劇場[春]と大阪四季劇場でロングラン上演中。詳しい情報は下記で。
http://www.shiki.jp/applause/lionking/

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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