草笛光子、市川崑監督に思いはせる「女優の面白さ、役のつくり方教わった」
2021年11月20日 17:30
女優の草笛光子が11月20日、「角川映画祭」を開催中の東京・テアトル新宿で「犬神家の一族」4Kデジタル修復版の上映後にトークショーを行った。
犬神家の三女・梅子役で出演した草笛は、4K版で改めて観賞し「感動しました。見終わった後に体に力が入ってしまって、こんなにいい映画に出させてもらったのかと。自分が出ていることが信じられません」と感激の面持ち。この日が106回目の誕生日に当たる市川崑監督に思いをはせた。
出会いは1960年の「ぼんち」。東宝スタジオの食堂で食事をしているところに市川監督がふらっと現れ、「今度これやるから、出て」と脚本を差し出したことで出演が決まった。「出演交渉が変わった方で、いつも一人でいらっしゃって『出てよ』ではなく『出るね』だったんです」と懐かしそうに振り返った。
横溝正史原作の金田一耕助シリーズでは、ほぼレギュラーとなり9本の市川作品に出演。「だんだん汚い役になって、他の女優さんはきれいな着物を着ているのにと言ったら『汚い役というのはきれいな役者の言うことだ』って、いつもやっつけられていました」と苦笑した。
寡黙だったが、俳優のアイデアを取り入れる柔軟性もあり、「獄門島」では旅回りの女歌舞伎役者役で金歯を挿入することを提案。その際には何も言われなかったが、あるシーンでの本番でカメラが顔の近くまで接近したため、「笑った時にピカって光るように寄ってくださったんです。うれしくて参っちゃった」とほおを緩めた。「犬神家の一族」でも、高峰三枝子さんの着物の色に関するアイデアが採用されたことがあったという。
同作では顔の負傷のためゴム製のマスクをかぶった佐清(すけきよ)との共演シーンで「彼がセットに入ってきた時、ひゃあってなって、あなた誰?って聞いちゃった」と笑う。写真撮影では佐清のお面をつけた観客をバックにしたが、「私はかぶらなくていいの? そうすると誰だか分からなくなっちゃうわね。でも、一回かぶってみたい」とおどけて見せた。
市川監督が亡くなって約13年半。「先生とのお仕事で、女優の面白さ、役のつくり方を教わった。一生懸命考えていくと、必ず撮ってくださる。心の中で頭を下げるほどうれしかった」と感謝した。
角川映画45年記念企画「角川映画祭」は12月16日までテアトル新宿、12月9日までEJアニメシアター新宿で開催される。