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ハルクの特質を生かしたドラマ作りが成功
ハルクは、他のアメコミ・ヒーローとは違うネガティブな存在だ。感情が激してブルース・バナーがハルクに変身してしまうと誰もその力をコントロールできない。目の前にあるものすべてを破壊し尽くしてしまう。だからスーパーマンのように変身して活躍するスペクタクルよりも、きわどいところでいかに変身を防ぐか、その死にもの狂いの努力にドラマのヘソがあるし、サスペンスもスリルも生まれる。今回の「インクレディブル・ハルク」が面白くなったのは、その見極めがきちんと出来ているからだ。
過去の経緯も前説もなく、逃亡する男としてのブルースのディテールからいきなり描写していく導入部のテンポも素晴らしい。心拍数の上昇を抑えるための精神鍛錬、呼吸法の取得、治療薬の開発。そして追っ手が登場して隠遁生活が突然戦闘モードに切り替わるあたりでググッと映画に引っ張り込まれてしまった。さすがアメコミ専科のザック・ペンの脚本だ。エド・ノートンがかなり手を入れたという話も聞くが、この脚本のお陰で、レテリエ監督の演出がベッソン作品に比べて数段良くなったのは間違いない。エドは悩める科学者にぴったり。肉体コンプレックスの裏返しでハルク・パワーに焦がれるブロンスキーのティム・ロスも適役だ。アン・リーは才能豊かな監督だが、「ハルク」には向いていなかったということを、今さらながら実感した。
(森山京子)
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