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オスカー2部門受賞の感動作
ハルストレムの映画は、重力の働きや上下の動きに注目してみると面 白い。「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」の少年は、人工衛星で餓死した犬に自分を重ねる。不幸の象徴は彼の頭上にあるわけだが、映画のなかで彼は 納屋の2階や屋根などから何度となく"落下"し、そのたびに生きる喜びを見出していく。
「ギルバート・グレイプ」では、地下室で自殺した父親に近づこうとするように、母親の巨体が床にめり込みつつある。一方、障害を持つ主人公の弟は、町にそびえる給水塔に上り、一家の関心を上に引きつけようとする。それゆえ終盤で、母親が階段をきしませながら2階に上る姿が、それだけで感動的なのだ。
新作にも象徴的な意味で上下の動きがある。孤児院は幸福な世界ではないが、それは主人公にとって上にある。堕胎の権限は神のものと信じる彼は、堕胎を行う恩師の後を継いで神になりたくない。だからサイダーハウスに下り、黒人労働者と肩を並べて働くことに救いを見出す。そこには"屋根に上るな"という規則があり、彼が、そんな他人が作った規則に従っている限り人は救えないことに目覚めるとき、彼は人間として恩師を継げる存在に成長し、孤児院という屋根に上るのである。
(大場正明)
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