マイウェン監督が語る、ルイ15世の愛人を自ら演じた理由とジョニー・デップとの仕事

2024年2月2日 17:00


撮影中のマイウェンとジョニー・デップ
撮影中のマイウェンとジョニー・デップ

18世紀フランスで59年間にわたり在位した国王ルイ15世の最後の公妾ジャンヌ・デュ・バリーの波乱に満ちた生涯を描き、ジョニー・デップがルイ15世を全編フランス語で演じた「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」が公開となった。昨年の第76回カンヌ国際映画祭オープニング作に選ばれ、本国でも大ヒットを記録した歴史エンタテインメントだ。

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貧しい家庭の私生児として生まれながらも、強い意志と溢れる才気を持ち、ルイ15世に愛されたジャンヌを監督・脚本のマイウェン自らが熱演。このほど、オンラインインタビューに応じ、作品を語った。

――日本ではジャンヌ・デュ・バリーの存在と生涯をこの映画で初めて知る人も多いと思います。フランス人にとっては、学校の歴史の時間で習ったり、誰もが知っているような著名な人物なのでしょうか?

フランスでも、世界的にも彼女は高級娼婦として知られているので、学校で習うような歴史の本には詳しくは書かれていません。彼女のことを知るためには、ルイ15世や、マリー・アントワネットの私生活について書かれた資料を読む必要がありました。もちろん、彼女について書かれた本はありますが、探し出すのは難しかったです。しかし、この作品がフランスでも非常に成功し、海外でも非常に高く評価され受け入れられたので、私たちはとても嬉しいです。

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――彼女の生涯であなたが描きたかった側面を教えてください。

私は彼女の人生を理解したかったのです。ジャンヌはチャンスに恵まれた生まれではありません。しかし、フランス革命が起こり、ブルジョワもギロチンにかけられるので、幸か不幸かは最終的には同じだったかもしれません。しかし、ジャンヌがもう少し恵まれていたら、娼婦をしなくてもよかったかもしれません。でも、私は彼女が人生に負けたとは思いません。いろいろな文献を読むと、彼女の性格はポジティブで、生きること、学ぶことに貪欲で、一心に自分の道を進む人だったようです。

そして、お金のためにセックスができるように、自分の肉体も自由でした。しかし、自由でなかった部分は人から愛されたいという思いが強かったこと。それで宮廷での作法を学んだり、人に好かれるようなふるまいをしたりと、宮廷の人たちと対等に話をしたかったのでしょう。国王の周りの人々に拒否されていたのはつらかったと思います。

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――歴史大作を撮り上げた監督としての手腕が評価され、また俳優としてもジャンヌという魅力的な女性を堂々と演じました。本作企画時に、監督と主演、ご自身はどちらを優先して考えていましたか?

この映画を私自身が監督したかったので、まずは他の女優がこの役を演じることを考えました。しかし、私はジャンヌと自分に近いものを感じていて、彼女の物語を語ることによって、自分自身のことは語らずとも、深い感情、暗い感情も追求することができると思っていました。ですから、もし他人が演じたら私は苦しんだと思います。私が自分でこの役をやることによって、ジャンヌを愛するがゆえに、過剰なナルシシズムとなり、敵を作ることはあるかもしれないとは思いましたが、私が演じるしかなかったのです。

それは、私自身の闘いがジャンヌの闘いと重なるからです。狭い世界のなかで私を嫌う人はいますし、ジャンヌも宮殿の中で悪口を言われます。それでもやりたいことをやるのがジャンヌで、私も嫉妬されたり、軽蔑されても自由に自分の映画を作り続けます。

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――ジョニー・デップをルイ15世役に起用しました。役作りにおいて、どのようなコミュニケーションを取りましたか? デップから提案、またはアドリブはありましたか?

ジョニーとは撮影前に会うことはできなかったので、撮影中に議論のように多くのことを話しました。アドリブは全くなく、書かれたセリフをすべてそのまま言ってもらうというやり方をとりました。アドリブを入れるとパロディのようになってしまうので、一切ありません。

彼は役についてかなり研究してきて、もちろん自分で想像したこともあるのでしょうが、「史実ではこうだった」と主張することもあって。ですから私は「これはフィクションだし、私の映画。ドキュメンタリーではないのです」と彼の言うことを尊重しながらも、自分の映画を裏切らないように調整し、ある意味ではいつも闘っていました。

ジョニーが合意せず、彼の言い分をそのまま通すこともありました。もしかしたら、撮影の時にはわからなかったかもしれないけれども、彼の言ってることは正しいかもしれないから、編集までとっておこう、というシーンもありましたし、もちろん、私が受け入れられない場合は、彼なしで撮ったこともありましたね。

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