「実写×アニメ」の“整合性”、あえて挑んだリアルな表現へのこだわりとは?【ワンダーハッチの舞台裏 連載第2弾】

2024年1月17日 09:00


貴重な絵コンテ4点&本編アニメ映像も入手
貴重な絵コンテ4点&本編アニメ映像も入手

実写とアニメで描く、ディズニープラスの日本発オリジナル冒険ファンタジー「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」が、ディズニープラスで配信中だ。日本の映像コンテンツが改めて注目を集める昨今、「ガンニバル」「季節のない街」など、次々と話題作を世界に発信するディズニープラスの新たな挑戦の舞台裏とは? 映画.com独占連載(全3回)の第2弾では、本作だからこそ追求された「実写×アニメ」の“整合性”へのこだわり、マンガらしさとは一線を画す、あえて挑んだリアルな映像表現の制作秘話を紐解く。あわせて、絵コンテ4点と、本編アニメ映像(https://www.youtube.com/watch?v=3FH_tMDfHRo)も入手した。


●アニメーション監督・大塚隆史が語る、“整合性”への「プレッシャー」と「こだわり」

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アニメーション監督の大塚隆史は、実写パートの監督を務めた萩原健太郎と綿密な連携プレーをとりながら、「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」を構築している。大塚監督は「ふたりはプリキュア マックスハート」で演出家デビューし、「映画 プリキュアオールスターズDX」シリーズや、「劇場版 ONE PIECE STAMPEDE」などを手がけたキャリアの持ち主だ。

本作のチームに参加したのは、実写パートの撮影が始まる少し前のタイミングだったという。「脚本が最後まで決まり、撮影が始まる少し前の段階でした。なので、アニメの表現が脚本からずれてしまうと、シリーズ後半でうまくいかなくなってしまう可能性が大きい。だから萩原監督との打ち合わせは、とても大事だと考えました」と、自身の役割を語る。

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物語は、実写とアニメが交差するように展開されていく。そのため、先に撮影が進められていた実写パートの設定や世界観と、アニメ表現を統一したものにしなければ、物語の整合性が取れなくなってしまう。

「脚本を読みながら、こちらが求められているイメージもしっかり聞くし、こちらができることや提案もしっかりすること。すりあわせを丁寧にしておかないと、無駄に混乱してしまう。萩原監督がシリーズ監督だとすると、自分は各話を担当する演出家という風に立場を理解しました。監督の狙いを外れないように、いかに担当分を魅力的に見せるかが、自分の大事な仕事だと思いました」と、前例のない実写とアニメが共存する本作だからこその難しさを振り返る。


●イメージを忠実に表現すべく、最高のスタッフが集結した「黒い竜巻」突撃シーン

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アニメパートのカット数は、シリーズ全話を通して、およそ1000カットにも及ぶ。累計約70分に達するボリュームのなかでも、最も重要だったのが、第1話「最後の戦い」だ。大塚監督は、「第1話の最初の脚本で、完成版よりもはるかにアニメの分量が多かったので、緊張はしました。これはアニメ次第でシリーズ全体に影響するぞ、と。見ている人がちゃんと世界を理解し、脱落せずに済むように意識して制作しました」と、プレッシャーの大きさを明かす。

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そんな大塚監督の演出の下、アニメ表現のクオリティを支えたのが、日本のアニメ業界の精鋭ともいえる「Production I.G」のスタッフだ。なかでも第1話の序盤に登場する、アクタ空団のドラゴン使いたちが黒い竜巻に飛び込んでいくシーンは、まさに職人技。アニメで描かれる異世界・ウーパナンタに現れた巨大な黒い竜巻は、次第にウーパナンタに浮く島を飲み込み、被害を拡大していく。

アクタ(新田真剣佑)率いる「アクタ空団」は、島に取り残された人々を救出するため、視界ゼロの竜巻に必殺の陣形“菱形の陣形”で突撃する際、空団のメンバー同士で音を反響させ、視界に頼らずとも“聴界”のなかで、超スピードで駆け巡る。この圧倒的なダイナミズムを担当したのは、「PSYCHO-PASS」シリーズで撮影監督を務める荒井栄児だ。

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大塚監督は、このシーンに「最初は鉛筆画のスタイルだけでできないかと考えていましたが、荒井さんの発案が加わり、とてもかっこいい映像になりました」と、確かな手応え。「どれぐらいの表現だったら、実写とアニメが入り混じっても違和感がないか、最初に打ち合わせして確認した結果、あまりマンガチックな方向の表現は取り入れず、CGを使わないリアルな表現で進めることになりました」(大塚監督)。そんな監督の意図を、スタッフ陣は作品に落とし込んだ。



●「ハイキュー!!千葉崇洋、「おおかみこどもの雨と雪大野広司…壮大な世界観の構築に欠かせないスタッフ陣

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さらに本作には、「ハイキュー!!」シリーズで知られるキャラクターデザインの千葉崇洋、「おおかみこどもの雨と雪」「鹿の王 ユナと約束の旅」の大ベテランの美術監督・大野広司らが参加。大塚監督は「千葉さんが修正をすると絵のパワーが、2倍にも3倍にもなっているんです」「美しい世界にしたいという実写スタッフの希望に、大野さんにはしっかりと応えていただきました」と、壮大な世界観の構築に欠かせない活躍を見せた両名に、全幅の信頼を寄せた。

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一流のアニメスタッフが集結したことで、ひとつの物語を、実写とアニメで描くというビッグプロジェクトを成し遂げた「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」。大塚監督は、「今回、実写とアニメの世界を融合するという、自分でもやったことのない試みへの参加でしたので、とても楽しめた仕事でした。この作品が観客にどう届くのか、楽しみにしています」と、困難をやりがいに変えて取り組んだ経験に達成感を示している。

ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」(全8話)は、ディズニープラス「スター」で、独占配信中(毎週水曜に新エピソード配信)。

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