「SPY×FAMILY」を何も知らないけど「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」が興行収入100億円を超えるか考えてみた【コラム/細野真宏の試写室日記】

2023年12月28日 13:00


「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」
「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


SPY×FAMILY」の映画版「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」が2023年12月22日(金)に公開されました。

実は、この作品は完成がギリギリの状態とのことでマスコミ試写会がありませんでした。

当初は「マンガもアニメも何も見ていない状態で試写を見てみたらどうだったのか」を書こうかと思っていましたが、初日に映画館で見てから書くことになったため内容を変更し「本題」を考えてみます。

その「本題」とは、ズバリ「興行収入100億円を突破できるかどうか」です。

というのも、東宝の冬休みアニメーション映画で“東宝×集英社”の前作「劇場版 呪術廻戦 0」(2021年12月24日公開)は、興行収入100億円を突破したからです。

実は、「劇場版 呪術廻戦 0」も完成がギリギリの状態とのことで試写会はありませんでした。

そして、この2作品は共に初映画化作品でありながら、400万~500万部もの「豪華入場者プレゼント小冊子」が用意されているのです。

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劇場版 呪術廻戦 0」については、「鬼滅の刃」がメガヒットした後の作品なので、「呪術廻戦」は“第2の鬼滅”というような流れで紹介されたりもしていました。

そこで、私は「鬼滅の刃」のような社会現象化が起こるのかを注目することに。

コンビニなどのコラボ商品が販売されている店などを、公開前後を中心に観察してみましたが、意外な状況がありました。

“公開後しばらくして”なら理解できるのですが、最も盛り上がる“公開直前や公開直後”においても「呪術廻戦」関連の商品が軒並みワゴンセールとしてディスカウントされていたのです。

コンビニでは通常は安売りがないイメージだったのですが、多くのコンビニで観察しても結構な確率で見かける結果に。

鬼滅の刃」の際は、鬼滅関連であればコーヒーだろうと何でもかんでも凄い勢いで売れていたので、「“第2の鬼滅”というような規模ではないな」と理解しました。

ただ、これは必ずしも「呪術廻戦」の人気がないというわけではなく、企業サイドが「鬼滅の刃」の社会現象を見て、「今度こそ勝機を逃すまい」という過剰な期待の結果だと考えています。

そこで、興行収入100億円超えが目途だと想定していました。

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今回の「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」も、“東宝×集英社”の作品で、原作マンガの人気も高いようなので、やはり興行収入100億円というのが重要な焦点となりそうです。

ただ、キャラクターの造形を見ると、やや軽めに見えるのが気になる点でした。もし本作の興行収入が一気に100億円を超えると、かなりコストパフォーマンスが高いと言えそうです。

そんなことを考えながら、公開初日に、別の作品の試写の後にシネコンに行ってきました。

映画が始まって最初に思ったのは、「冒頭のパーティーのシーンで人物の口と声優の声がズレている? 冒頭のシーンだからもう少し絵に重厚感があった方が良いのかも」といったことでした。

そして、動くシーンを見ても、「やはりキャラクターの造形は軽量的か」と感じました。

作画もしばらくはカロリーが低そうな感じだったので、「どうして制作が公開ギリギリまでかかってしまったのだろうか?」とも思いました。

ただ、これは後半に行くにつれ納得してきました。

というのも、特に後半において、カロリーが高めな「こだわり」のカットが顔を出してきたからです。

このように、本作はトータルでは十分に映画クオリティーだと言えるでしょう。

また、当初の懸念の「一見さんがいきなり映画から見ても理解できるのか?」については、冒頭に解説がちゃんとあるので、一見さんでも問題なかったです。

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では、本作の興行収入の見通しはどんな感じになるのでしょうか?

12月22日(金)~24日(日)の3日間の初速は、興行収入12億2420万8280円となっています。

これは大ヒットスタートといえますが、業界内での見通しは20億円超えだったので、そういう視点からは物足りないともいえそうです。

ただ、内容が良ければリピート需要が強くなりますが、本作の場合は、作品の「笑い」のシーンに観客の感性がどれだけ合うのかがカギとなりそうな予感。

“保険”として2回連続で見ましたが、笑っている人と、そうでない人の温度差がありました。

とはいえ、作品の世界に入り込むことができれば、「何かのきっかけでリピートするレベル」には達していると思いました。

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そこで重要になってくるのが入場者特典でしょう。

劇場版 呪術廻戦 0」の場合は第5弾まで入場者特典が用意されていましたが、「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」の場合はどうなるのでしょうか?

この2作品では、客層の違いがあるという気がしています。

本作のメインターゲットは、「子供」や「ファミリー」なのかもしれません。

そう考えると、第5弾までは用意されない可能性もあります。

とりあえず第1弾の入場者特典は400万部なので、初速の客単価1413円をベースに考えると、第1弾が無事になくなると興行収入56億5200万円に達します。

加えて入場者特典の第2弾、第3弾でテコ入れを図るとすると、65億円くらいが目途になるのかもしれません。

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ちなみに、「SPY×FAMILY」で特筆すべきは、原作マンガのリリース媒体です。

通常「集英社」の代表的な作品は「週刊少年ジャンプ」で展開されていて、、私は「SPY×FAMILY」も当然「週刊少年ジャンプ」での連載作品だと思っていました。

ところが、エンドロールで「少年ジャンプ+」と出てきます。

この「少年ジャンプ+」というのは、紙ではなく、WEB媒体なのです。

メジャーな連載作品が集う「週刊少年ジャンプ」に比べると、「少年ジャンプ+」は実験的で尖った作品が多いという印象を受けました。

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そんな中、「SPY×FAMILY」初の映画化で興行収入65億円規模の大ヒットを記録したとすれば、WEB媒体の大成功例となり、多くの作家に夢を与えてくれるでしょう。

このように新時代のコンテンツである「SPY×FAMILY」が、次の映画化も含めてどこまで広がっていくのか大いに注目したいと思います。

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