東京国際映画祭・安藤裕康チェアマンが明かす、確かな手応え

2023年11月3日 12:00


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映画祭の拠点地区を日比谷、有楽町、丸の内地区に移してから、今年で3年目となった第36回東京国際映画祭。10月23日から11月1日にかけて開催され、上映作品数も昨年に比べて大幅にアップ。作品ゲストや映画関係者、メディアなど、海外からの参加者も多数来場し、国際映画祭らしい交流も各所で行われた。そこで本映画祭の安藤裕康チェアマンに今年の映画祭の手応えについて聞いた。

――会場が日比谷に移ってから3年目になりましたが、今年の映画祭の手応えはいかがですか?

安藤チェアマン(以下、安藤):今年は色々な意味での量的な拡大がありました。作品数も25%増えましたし、マーケットも含めた海外からのお客さまも2000人ほどに増えています。また、オープニングセレモニーには去年の倍以上となる、892人の方々が来てくださいましたし、何年かぶりに復活したオープニングのパーティも700人を超える人たちが参加してくださいました。そういう意味でも量的にはかなり拡大したんじゃないかと思います。上映に関しても、お客様がかなり戻ってきて頂き、賑わいが増したなと感じています。

――特に中国関連作品の上映では取材メディアの数も多く来場していて、盛況でした。中国メディアの方々の熱気を目の当たりにすると、コロナ前に戻ったような懐かしさを感じました。

安藤:中国作品が増えると非常にレスポンスがいいですよね。やはり日中韓というのは非常に密接な関係にあるから。中国の作品やゲストが増えると、国内の盛り上がりもすごいなとあらためて実感しました。あとこれは、ある海外の映画祭代表の人と食事に行った時に出た話なんですけど、今年は街を歩いているといろんな知り合いに会う機会が多かったと。非常に映画祭らしくなってきたよねということでした。

――東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場で行われた旧作の無料上映会には連日、かなり多くの人たちが集まっていて、みんなで映画を鑑賞していた姿が印象的でした。屋内の1階アトリウムに敷かれたレッドカーペットでも、そこで記念撮影を行う人の姿を多く見かけました。そうした映画文化の裾野を広げることも大事だと思いました。

安藤:ステップ広場には屋台も出てましたよね。これは映画祭ではなく、東京都主催の「東京味わいフェスタ2023(TASTE of TOKYO)」で行われたものなんですが、そういうのも含めていい雰囲気になってきていたなと思います。やはり映画祭は良い作品をたくさん見せることが一番の核心なんですが、同時に映画祭はお祭りなんで、みんなでワイワイやるということが本当に大切。ですから今年は意図的にイベントも増やしたわけです。ちょっと多すぎたため、コントロールしきれなかったところがあったのは反省点ではありますが。

――やはり今年の映画祭の一番の顔は、オープニング作品の「PERFECT DAYS」で来日したヴィム・ヴェンダース監督だったと思います。ヴェンダース監督はコンペティション部門の審査委員長を務め、小津安二郎監督特集のトークにも参加するなど、大活躍でした。

安藤:彼は本当に小津安二郎監督をものすごく尊敬していますよね。記者会見でも小津さんの話が出たし、もちろん新作の「PERFECT DAYS」にもその影響がある。だから小津さんの生誕120周年という節目の年にヴェンダースさんに来てもらって、コンペティション部門の審査委員長をやっていただけたというのは本当に意義があると思うんです。ただ彼も本当に忙しくて、大変な日程の中で来てくださることになった。それは本当にありがたいなと思っています。

そしてなんといっても小津作品は今年の映画祭の大きな柱でしたから、短編や修復作品なども含めて35本上映しました。それをもとにいろんなイベントを増やすことになったので、それも盛り上がりに寄与したかなと思っています。

――そしてチャン・イーモウ監督やトラン・アン・ユン監督、さらにはトニー・レオンといった方々もゲストで参加し、映画祭を盛り上げました。

安藤:やはり映画祭を盛り上げてくださるゲストの方々にはできるだけ参加していただきたい、という思いはありますので、そこは苦心しました。ヴィム・ヴェンダース監督については去年の10月ごろには彼に会っていて。それから1年がかりで実現しました。チャン・イーモウ監督やトニー・レオンさんも交渉によって実現したわけですが、途中で日中関係の問題があって最後までどうなるかわからなかったですが、なんとか実現して良かったです。そしてトラン・アン・ユンさんは「ポトフ 美食家と料理人」を配給しているギャガさんが間に入っていただいたことで実現しました。

やはりこうした著名な皆さんが来ていただけるとインパクトも大きいですし良かったなと思っています。ただちょっと残念だったのは、お名前は出せませんが、皆さんに驚いていただけるような女性のゲストをもう2人お呼びしたいと動いていたのですが最後の瞬間でだめになってしまったということ。それは残念だったなと思ってます。

――今年は映画祭らしさが戻ってきた感じですか?

安藤:今年はパーティが増えたということも大きいですね。アジア各国で映画を勉強している学生さんたちを集めた是枝裕和監督のマスタークラスが行われ、その後、交流会がありましたし、そして内外の映画人が集まったトーキョー・シネマ・ナイトと題した別の交流会もあった。そこにも是枝監督が参加され、若手の映画人たちひとりひとりとお話をされていました。

スペインの中にあるバスク政府が主催した、映画祭のバスク映画特集を祝うレセプションもありましたし、ザ・ハリウッドリポーター・ジャパンが日本での活動を活発化させることを目指して主催したパーティも行われました。さらに今年はヴェンダース監督がいらしたということで、在京ドイツ大使が主催してくれた晩餐会もありましたし、在京イタリア大使主催の大きなパーティもありました。これは今年の6月に日本とイタリアの映画共同製作協定が署名されたことを祝して、イタリアの文化副大臣を団長にしたイタリア映画団が来日したからです。

カンヌ映画祭などでは、いろいろなスポンサーが主催するパーティが行われ、映画人同士の交流を図るわけですが、そういうことが少しずつ東京国際映画祭でもできるようになってきたなと感じています。グローバル・ラグジュアリー・グループのケリングもイベントをやってくださるし、いい傾向になってきているなと思っています。

――やはり国際映画祭というのは、できあがった映画を上映するということも大事ですが、これからつくられる映画の種をまくための映画人の国際交流も大事だと。

安藤:そういう意味で皆さんにも、また東京に来ればいいことがあるよと思ってほしい。そうやってみんなを誘って、東京って面白いよ、エキサイティングだよと思ってもらうと映画祭はもっと良くなる。僕らが一生懸命頑張るだけでは駄目なんです。自然発生的に映画祭が盛り上がるようにしていかないといけないなと思っています。

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