「季節のない街」池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知が語る撮影秘話 笑いと涙のカオスな展開&新たな希望を感じさせるラストに注目!

2023年9月11日 19:00


楽しい現場だったと撮影を振り返った3人
楽しい現場だったと撮影を振り返った3人

宮藤官九郎初の企画・監督・脚本作ということで話題を集めているディズニープラスのドラマシリーズ「季節のない街」。配信開始からひと月を経て、「宮藤作品の最高傑作」「素晴らしい俳優陣」とメディアやSNSで絶賛評が寄せられる本作は、12年前に起きた“ナニ”の災害を経て、建てられた仮設住宅のある「街」が舞台だ。山本周五郎の同名小説が原作であり、黒澤明監督作「どですかでん」へのオマージュを感じさせながら、現代を生きる日本人の心に刻まれた災害の傷跡と仮設住宅の住人を真摯に見つめ、そしてたくましく生きる人々の光と影を、あたたかく軽やかなユーモアとともに活写している。

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原作にある物語を基に、オムニバス形式でほぼ1話ずつ個性的な住人が核となるエピソードが完結していくが、最終話のラストは今作オリジナルの展開だ。“仮設”の街の終焉が訪れる時、笑いながらも泣ける驚くべき展開に誰もが心をかき乱されるだろう――。主演の池松壮亮とともに街の青年部として物語をけん引したのが仲野太賀渡辺大知だ。同世代でもある3人が、あたかも劇中の延長のように、そして気の置けない友人同士のように本作出演を振り返った。

※本ドラマのネタバレとなる記述もあります。未見の方は、ご注意ください。

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池松が演じたのは、相棒の猫・トラとともに仮設住宅に住むことになった半助こと田中新助役。作家であるという体で、とあるミッションのために街に潜入した諜報員のような存在でもある。個性豊かな住人たちとの交流を重ね、街への愛着を募らせる青年だ。

池松:「人の暮らし、悲しみ、苦しみ、痛み、優しさ、醜さ、情愛。人の持つ感情や、様々な面を一つ一つを丁寧に浮かび上がらせながら、笑って泣けて、やっぱりまた笑える物語です。物語の裏には自分たちが知っている、この国の痛みがあります。その多面性とバランスが脚本を読んだ段階で見事だなと感じましたが、さらに撮影でいいものが積みあがって、作品としてとても良い形で仕上がりました。このプロジェクト自体が僕にとってとても幸せなものでした」

仲野は街の青年部を率いるタツヤに扮した。仮設の街で育ち、家族関係に悩んだりとさまざまな悲しみを経験するが、街のために夢や希望を持ち続けるキャラクターということでポジティブな明るさを大事にしたという。

仲野:「僕の役は、この街で育った若者として、街を愛し、そこで暮らす。そういう象徴的な役だと思っていました。その営みの根底には“ナニ”の被害という現実があって。でも、街に住む人達には、十数年積み重ねてきた”ここで暮らしていくんだ“と言わんばかりの、力強さがあると思いました。タツヤ自身も悲しい過去があるけど、ささやかな夢もあって。でも、街の人を苦しめてしまうような立場になってしまう。つらい状況も描かれますが、街と同様にポジティブに生きていくことが強さになるのかな、と。そういう部分を大事に、悲しみと喜びのコントラストをつけて表現しようと、まずは明るさを大事にしました」

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渡辺は三浦透子演じる内気なかつ子に恋心を寄せる、酒屋の息子・オカベ役。「がんもどき」というエピソードでは、目を覆いたくなるような不幸な事件が起こるが、ピュアなオカベの存在に救われる物語でもある。

渡辺:「いろんな登場人物がいて、つらさとうれしさがいいバランスで成り立ってるこの作品への思いは簡単な一言では言い表せません。オカベは仮設の住人ではないけれど、一番近所の外野で、一番この街を見続けてきたヤツ。仮設には誰かが住んでいる家もあれば、誰も住んでいない場所もあります。だから、オカベは、人がやってきて、また去っていくところをずっと見てきて、そういうさみしさを知っている人なのかなと。そんな中で、宮藤さんから『唯一のロマンチックパートなんでお願いします!』と言われて(笑)。人間だから恋もするし、淡いきらめきみたいなものを担えたら……と、へらへらしているだけじゃなくて、切なく見えたらいいなと思って臨みました。

今回、宮藤さんのほか、横浜聡子さん、渡辺直樹さんという3人の演出家がいらっしゃいましたが、みんなで話をしてイメージを固められたのがよかったです。この作品は誰かの一存では動かず、細かい感情のひとつひとつも確認して、共有しながら作っていった気がします」

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笑いあり、涙ありのエピソードが毎回積み重なり、カオスと呼んでも良いほどのエネルギーと、祭りの後のようなさみしさ、そして新たな希望を感じさせる最終回への展開が見事だ。宮藤監督とは「あまちゃん」のタッグなどでもおなじみの大友良英の音楽が物語をさらに盛り上げていく。

池松:「このドラマを大きく捉えると、自分たちがいたということ、この町が確かにあったということ。大きな時代の変化の中で失われるもの、忘れられることへのささやかな抵抗といいますか――やはりあのラストをどう迎えるかということが重要だったと思います。みんないつか街がなくなることを知りながら暮らし、そして街に別れを告げて、明日から生きていくということ。今日で全てが終わり、今日で全てが始まるということ。最終話は、数日かけてナイトシフトで深夜にかけて撮影しましたが、現場には大きな高揚感や熱気があり、僕自身もとても興奮しました。この物語はきっと、時代の変化に置いてかれそうになる人々を、宮藤さんが宮藤さんなりのやり方で救ってくれたんだと思います」

仲野:「僕自身は当事者ではないので、被災地を題材にした物語を描くことにセンシティブさがあることもわかります。『仮設だとしても、彼らにとっては仮ではない』僕はこのセリフが好きで。みんな個々の人生があって、ここで生まれて、ここで育った人もいる。その人生さえも仮とされてしまうことの悲しさやむなしさがあるということを、宮藤さんがこれ以上ない言葉で表現されていて、この物語の大事な肝だと思っています。その上で、あのラストは、演じていて燃えるものがありました。自分たちが育った場所が終わりを迎える寂しさと、一方で祭りのような、どうにでもなれ、というような気持ち。住民それぞれのパワーが渦巻いた結果だと思うとすごく楽しかったです」

渡辺:「街ってたまたま集まった人によって生まれるものなんだなと、あのラストシーンでわかりました。あの場面はよく考えたらわけわからないし(笑)、子どもたちもどこの誰の子か、どうでもよくなる感じ。でもそんな何者かわからないような子どもに泣かされちゃったりする。どういう素性の人なのかわからないけど一緒にいることで、勝手に絆が生まれたり、でもその絆も意外ともろかったり……人間ってそういうものだなあ、と思わせるラストだと思います。

大友さんの音楽も、そういうランダムさやごった煮感があって、うごめいているけど実体はなく、燃えているけど、火種が見つからない、みたいな。燃えている事実だけは確かで、でも何のために燃えているのかはどうでもよくなっちゃうような印象で、かっこいい。本当にこのドラマを象徴しているような音楽だと思いました」

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それぞれの個性が共鳴し合う息ぴったりの3人。聞き手が「まるで3兄弟のよう」と評すると、仲野は「ズッコケ三人組ですね」と訂正し、池松は「よき共犯者」だったとニヤリ。渡辺は、第5話で見られる3人の楽しいダンスが、オフでの“3人の秘密”から生まれた、と明かしてくれた。

池松:「2人とも心が良いんです。本当に良い御縁をいただいたなと思います。3人でよくご飯に行って、お風呂に入って、乾杯して……。青年部でこのドラマの縦軸を引っ張っていくべきだったので、たくさんの話をして、たくさんの時間を共有しました。最高の仲間であり、共犯者でした」

仲野:「土浦のご飯がめちゃくちゃおいしかったんです。毎日現場とホテルの往復で、でもたまに、外食できる時間があったので、その時に地元のおいしいものを食べようと。僕がグルメサイトで検索して、3人で焼き肉や海鮮、焼き鳥とおいしいお店をめぐって、オフも充実していました」

渡辺:「ふたりともアイディアマンで、宮藤さんの世界観の中でより面白くしていこうとしていました。5話で踊るシーンは、まるで僕らの遊びの延長が映っているみたいで。この振り付けは、とある場所で覚えた3人しか知らない踊りなんです(笑)。そんなオフの空気が残っていて。それを宮藤さんは知らなかったはずなのですが、使ってもらってうれしかったです」

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本作では、テレビ放映などには難しい設定も、作品世界を物語る上での必要な要素として表現されている。映画、テレビドラマに加え、近年大きな存在感を見せる配信プラットフォームの新シリーズに参加した感想を尋ねてみた。

池松:「一般的な地上波でのテレビドラマでは次回の放送まで1週間空きますが、配信ドラマは一気に連続で見ることが可能なので、物語としてより地続きに構築していくことができます。普段よりも、長い映画を撮っているような感覚があります。また、配信シリーズは、世界マーケットが主流のため、一般的なテレビドラマの予算よりも大きなお金がかけられます。それはものづくりに対して大きなプラスになります。

これまで作品の質よりも国内視聴率を最重要視してきたテレビドラマと違って、作品の質や、例えば多様性などのグローバル社会における課題を重視している点においても可能性があると言えると思います。僕は、配信サービスは映像が生き残るための進化の一つだと捉えています。今回、大きなオープンセットを一から作って撮影できたことは、このチームと、ディズニープラスのおかげです。もちろん今アメリカで大規模に行われているストライキからも分かるように、配信プラットフォームにも今後の課題がたくさんあります。なんとか尊重し合い、共存していくための道を選んでいくべきだと思っています」

仲野:「作品によると思いますが、表現できるものの範囲が広がったなと。時代が時代なので、コンプライアンスや視聴者の意見に過敏になる部分もあって、何も言われていないのに、作り手が勝手に忖度をして表現の幅が狭くなることは実際にあると思います。僕は演者なので、脚本が届いた時点で仕事がスタートしますが、知らず知らずのうちに本来やれたかもしれない表現がやれないということに、気づくこともなく進んでいくことがある。日本の連続ドラマのフォーマットとして、配信プラットフォーム制作作品が増えることは、ものづくりとして豊かになると思いますし、映画もドラマも配信も刺激し合えるといいですよね。どれも素晴らしい利点があるので、もっともっと可能性が広がってほしいです」

渡辺:「配信ドラマだからできること、それはどんどん発展してほしいです。僕はとにかく、面白いものってあるぜ、というのを知らせたいし、面白いものに飢えている者として、面白いものを供給してくれるプラットフォームはどんどん増えてほしい。僕は映画館に行って映画を見るのも好きだし、いろんなところに面白いものがあるっていうのは夢があると思います。やっぱり、楽しい場所はいっぱいあるのがいいですね」

季節のない街」 ディズニープラス「スター」で全10話一挙独占配信中。

(取材・文/編集部、撮影/間庭裕基)

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