マーベルを率いるケビン・ファイギ 世界を侵略(インベージョン)する手腕とビジョン
2023年6月30日 10:00
マーベル・スタジオの新たなドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」が、ディズニープラスで独占配信中。サミュエル・L・ジャクソン演じる“アベンジャーズの生みの親”ニック・フューリーが、擬態能力を持った異星人による地球侵略(インベージョン)計画を阻止しようと、孤独な戦いに身を投じるサスペンススリラーだ。
フューリーといえば、過去のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画11本に登場している重要人物。同一の世界観を共有し、キャラクターや事件がクロスオーバーする展開こそが、MCUの大きな魅力であり、長年愛され続ける理由といえる。
全作品のプロデューサーを務めるマーベル・スタジオ社長のケビン・ファイギは、「重要なカギは、実力のある素晴らしい製作陣たちと一緒に仕事をすることで、俳優やキャラクターの魅力を引き出し、ひとつの物語を伝えることだ」と、MCUの世界観を構築する上での秘訣を語っている。つまり、細かい要望を伝えることはせず、それぞれの製作陣を信頼し任せることで、あくまでも1作品ごとのクオリティを重視しているという。
「シークレット・インベージョン」の魅力は、あらゆる人物に擬態できる能力を持つスクラル人によって生み出される「誰か味方で、誰が敵なのか見分けがつかない」という極限状態と、想像の斜め上を行く展開だ。混沌としたサスペンス展開が、これまでのMCU作品にない異質さを放っている。
「とても人間味のある物語。フューリーは人間だ。彼は自分なりのパワーを持っているけど、それはスーパーヒーローのようなものではない。そして、久しぶりに、彼が再び地に足をつける、というストーリーなんだ。人間的なスケールで、普遍的な魅力に到達するような物語だ」
そう語るのは、監督と製作総指揮を務めるアリ・セリム。「僕の仕事は、今回のストーリーを僕にやれる最高の形で語ること。このストーリーにとにかく集中すればいいんだよ」と振り返る。その言葉通り、クロスオーバーを意識しすぎることなく、あくまでフューリーを主人公に迎えた物語が、作品の主軸になっている。ファイギのクリエイティブな方針に基づいた結果であり、ファイギ本人も「本作はどこか政治的でスリラー要素を持つ作品にしたかった。素晴らしい脚本家や監督、キャストが理想的な物語に導いてくれたんだ」と、自信を示している。
ファイギの方針については、これまでのMCU作品に抜てきされた才能豊かな監督たちも話題に挙げている。雷神ソーの義弟“裏切り王子”が主人公の「ロキ」シーズン1の監督を務めたケイト・ヘロンは、「ケビンからは、『あなたが生み出す最高のストーリーを紡いでほしい』と言われたくらいで、細かい要望はほとんど無かった。私が『これは挑戦的かな?』と聞いたら、『いや、もっとやって!』とさえ言ってくれた」と、両者の信頼関係が伝わるやりとりを明かす。
今後の活躍が期待される、型破りな弁護士が主人公の「シー・ハルク ザ・アトーニー」のカット・コイロ監督も、「驚いたのは、ケビンが『これをやらなきゃダメだ』と指示を一切してこないこと。彼を含めて、プロデューサー、脚本家、俳優たちのみんなと、ひとつの作品をつくり上げていくの」と解説している。
MCU作品としては今後、フューリーも登場する「マーベルズ」(11月10日公開)をはじめ、「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド(原題)」「アベンジャーズ ザ・カーン・ダイナスティ(原題)」といった「アベンジャーズ」の新作に加えて、マーベル・コミック最初のスーパーヒーローチームが活躍する「ファンタスティック・フォー(原題)」、過去作のヴィランが集結する「サンダーボルツ(原題)」などが控えている。ストーリーと人物描写を重視しながら、斬新なチャレンジで、MCUの新たな境地を切り開くファイギの手腕に期待したい。
「シークレット・インベージョン」は第2話まで、ディズニープラスで独占配信中。新エピソードは、毎週水曜に配信される。