【「ザ・フラッシュ」評論】意外性と興奮に満ちた異次元の切り口で突っ走る快心作!

2023年6月17日 20:00


「ザ・フラッシュ」
「ザ・フラッシュ」

時は満ちた。ついに真紅のヒーローが単独でメインに躍り出る瞬間の到来である。とはいえ、ジャスティス・リーグの一員としてすっかり浸透した彼だけに、今さら「エピソード0」的な手法は用いられない。それとは根本的に異なるアプローチで主人公の現在地と原点をさりげなく織り交ぜつつ、そこからはツイストに次ぐツイスト。結果、これほど意表を突く一作に仕上がったのは、やはり本作の物語が彼の特殊すぎる能力そのものに主眼を置いているからなのだろう。

フラッシュ/バリー・アレン(エズラ・ミラー)は、その名の通り閃光のごときスピードで移動することができる。が、ある日、高速移動を続けていると周囲に不思議な現象が生じ始め、どうやら自分が時空をも超越できるらしいことに気づく。これを使えば、かつて最愛の母が何者かに殺された過去を変えられるのではないか。さっそく時間を遡り、ほんのトマト缶一個分の変化を加える彼。しかし、それがきっかけで逆に大きな異変が生じてしまい……。

まずもってフラッシュが独特のフォームで身を構え「よーいドン!」の合図で爆発的なテンションに包まれゆく様は、これまでのどのDC映画ともビートや見せ方が違っていて、思いっきり新鮮で胸がすく。

その上、これまでのDCヒーローたちが各々の邪悪な敵と真っ向から対決してきたのに比べ、本作のフラッシュは自らがもたらした人類滅亡の危機の中でひたすら試行錯誤を繰り返す。そこで若き日の自分とバディを組み、さらにはいつもとは別人すぎるバットマンや、圧倒的なパワーを備えた黒髪のスーパーガールと共闘するなど、一つ一つの可能性の掛け合わせ方がとても刺激的。

とりわけ「バットマン」(89)、「バットマン・リターンズ」(92)に主演した懐かしきマイケル・キートンがDCユニバースへ降臨を果たす趣向は最高にノスタルジックかつ革新的な香りをもたらすわけだが、それ以外にもこの世界を彩る様々な可能性を示唆するちょっとしたシーンの連続が楽しくてたまらない!

何の変哲もないトマト缶をうまく取り入れた脚本も小気味よく、遊び心を発揮しながら語り口の手綱を締め、主人公の成長へとつなげていく手腕が巧みだ。決して重くなり過ぎず、充実感があって爽快。それでいて胸を打つ。これはもう、キャストや監督や脚本家をはじめ、フラッシュを愛し、その可能性を信じてやまない作り手たちによる見事なチーム戦の勝利である。

(牛津厚信)

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