カンヌでグランプリ受賞「CLOSE クロース」ルーカス・ドン監督来日! 社会がラベルを貼ることができない“名前のない愛”を描く

2023年5月10日 15:00


前作「Girl ガール」以来、4年振りとなる来日を果たしたルーカス・ドン監督
前作「Girl ガール」以来、4年振りとなる来日を果たしたルーカス・ドン監督

第75回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した「CLOSE クロース」のルーカス・ドン監督が来日し、5月9日に東京・新宿武蔵野館で開催されたジャパンプレミアに登壇した。

本作は、カンヌ受賞のほか、第95回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされるなど、各国の映画賞で47受賞、104ノミネートを果たした。花畑や田園を舞台に、無垢な少年に起こる残酷な悲劇と再生を描く。物語の中心となる13歳のレオ(エデン・ダンブリン)とレミ(グスタフ・ドゥ・ワエル)は、互いの家を行き来し、兄弟のように育ってきた大親友。しかし、中学校に入学した初日、レミとの親密すぎる関係をクラスメイトにからかわれたレオは、周囲の目が気になり出し、レミにそっけない態度をとるように。一方、レミはその状況を理解できず、ふたりは大喧嘩してしまう。

黒のシックなジャケット姿で登場し、前作「Girl ガール」以来4年振りとなる来日を果たしたドン監督。本作の製作経緯について、「自分が本当にやりたいことが何なのかを改めて考え、自分が作品ときちんと繋がれるために故郷に戻りたいと思いました」と、少年時代の記憶を語り始める。

「僕は自分が生まれてきた身体に付随する社会のルールや期待されるものに応えられず、葛藤した思い出がありました。(中略)そして僕は主人公と同じくらいの年齢の頃、自分から人を避けてしまっていたんです。それは若い男性がたくさんいるなかで親密であることが、他者にとって性的にとらえられる可能性があることに気付き始めた時期でもありました。だからこそ当時たくさんの人と近い関係で一緒に過ごしたかったけれど、自分から避けてしまった後悔があり、そこから脚本を書き始め、それがいま見ていただいた本作のレオとレミというキャラクターになっていきました」

さらにドン監督は、レオとレミの関係について、「ふたりでひとりのような融合する友情を持っている関係であり、愛という確かな名前がついていないけれど愛を持っている。そして中学に進むとふたりの間にある関係に名前を付けようとする、ラベルを貼ろうとする他者の行動が起こり、そこでふたりの関係がおかしくなっていくというのが、この映画のスタート地点となりました」と、紐解いた。

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続くティーチインでは、会場に集まったファンから、「ふたりの少年の関係を友情以上ではあるが、愛とは言い表せない、難しい年齢に設定した理由は? またこれはクィア映画だと思って描いていますか?」という質問が寄せられた。ドン監督は、「本作は、自分にとっては愛についての映画だと思っています。ただ愛というのは必ずしも、名前のある愛ではなく、ラベルとかレッテルなどとは関係のない愛を描いた映画だと思っています」と、思いを明かす。

「ただ特に若い男性同士という状況では、僕を含めた私たちがある種の眼差しを持つように、社会によって教えられてしまっていると思うんです。だから本作は、少年たちのミクロのアイデンティティがどんなものかについての映画ではなく、むしろそういった眼差し、私たちがどうしてそういう風に見てしまうのかということについての映画だと思っています。そして親密さの欠如の映画だとも思っています。社会が、彼らが誰であるかを勝手に理解しようとしてラベルを貼ってしまう、それで親密さが欠如してしまうということを描きたかったです」

「そしてこの映画がクィア映画かと聞かれたら、それはそうですと答えます。僕にとってのクィア映画というのは、ジェンダー、セクシャリティに対し、役割やルール、そして振る舞いなどについて、勝手に紐づけられてしまうことに関する映画は、全てクィア映画だと思っています。また本作を実際にクィアの方が見て、共感して頂いています。ただ本作で描かれている主人公の傷跡は、全ての人が抱える傷跡でもあるとは思っています。すごくパワフルで親密で自由だったものが、突然自分の傷になって、心を痛めてしまう。人によっては壊してしまったことへの罪悪感を抱えて生きている方もいると思うんです。だからそういったことも含めて、この映画はクィア映画でもある、でもクィア映画だけではないと思っています」

CLOSE クロース」は、7月14日に全国公開。

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