「ラ・ラ・ランド」を愛するすべての人に、作曲家のハーウィッツが贈る夢のようなステージが来日!【若林ゆり 舞台.com】

2022年8月17日 15:00


「ラ・ラ・ランド」撮影の裏話や楽曲秘話を、作曲家ジャスティン・ハーウィッツが語る
「ラ・ラ・ランド」撮影の裏話や楽曲秘話を、作曲家ジャスティン・ハーウィッツが語る

どこか懐かしいのに、ものすごく現代的。ファンタジックなおとぎ話のようでありながら、非常にリアル。デイミアン・チャゼル監督渾身のミュージカル「ラ・ラ・ランド」(2016)は、現代の観客に訴える新しいミュージカルとして映画ファンの心を鷲づかみにした。そのマジカルな魅力を支える大きな力となったのが、ジャズを中心としたスタイリッシュな音楽だ。

この映画を愛する人なら、絶対に見過ごすことのできないステージが、この夏、日本にやってくる。映画の音楽を手がけた監督の盟友、ジャスティン・ハーウィッツによる指揮の下、映画を見ながらフル・オーケストラの演奏と60人の大合唱団を生で楽しめてしまう! そこにダンサーのパフォーマンスや花火などの特殊効果が加わり、しかもピアノ&キーボード演奏は、映画で名演を披露したジャズ・プレイヤーのランディ・カーバー! そんな贅沢なステージがPARCO Presents「LA LA LAND Live in Concert : A Celebration of Hollywood ハリウッド版 ラ・ラ・ランド ザ・ステージ」だ。

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来日を前に、ハーウィッツに話を聞いた。このステージの始まりは、映画が公開されてまもなくハリウッド・ボウルで開催されたフィルムコンサートだった。

「僕はこのショーのために、音楽の再構成をしたんだ。映画の場合は別々に撮った音楽をつなぎ合わせるという作業だったけど、コンサートでは通しでライブ演奏をするわけだから、そのための音楽として書き直す必要があってね。僕は観客が映画館で感じたのと同じようにロマンティックな雰囲気を味わってほしいと思ったし、それ以上の興奮を感じてほしかった。観客の琴線に触れ、思わず拍手喝采をしたくなるような音楽をつくりたいと思って、できる限りの努力をしたつもりだよ。そして新しく書いた音楽を2曲、お届けする。映画では使わなかった曲をアレンジしたものだ。まずは序曲。最初は映画のためにこの序曲を書いたんだけど、映画には必要ないって決断が後でなされたから、結局はお蔵入りしてしまったんだ。それにちょっと手を加えて、コンサートにふさわしい序曲として演奏する。そして休憩から2幕目へと入るときにも、新しい音楽を聞けるよ。この2曲はコンサートに来て、客席に座った人しか聞けないお楽しみだ」

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生の演奏から繰り出されるのは、まさに一期一会の音色。

「映画のライブ・コンサートとして『ラ・ラ・ランド』が楽しいのは、ジャズの曲がたくさんあることだと思う。ジャズは即興性の高い音楽だから、2度と同じ音にはならないんだ。しかも今回は、ランディが即興で、スコアには書かれていない音をたくさん披露してくれるだろうから、素晴らしいピアノパートを聞くことができるよ。たぶん半分くらいは新しいアレンジになるんじゃないかな。それはランディのパートに限ったことじゃない。トランペットもドラムもベースも、(音楽を)自分のものにして楽しみながら演奏してくれるだろうね。そういうジャズの神髄を楽しめるのが、このショーの醍醐味。ライブで聞くとよりエキサイティングで新鮮な音楽を楽しむことができるんだ」

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小さいころからクラシックの勉強をしてきたハーウィッツだが、ハーバード大学へ進学すると、人生を変える出来事を経験する。それが、チャゼル監督との出会いだった。チャゼルとバンドを組み、映画づくりをともにするようになったハーウィッツは、ジャズへとのめり込んでいく。

「デイミアンと一緒に初めてつくった映画『Guy and Madeline on a Park Bench』はジャズを取り入れたミュージカルで、『ラ・ラ・ランド』の前身のようなもの。まだ荒削りだったけど、僕らの映画づくりの原点だね。映画づくりを機に僕はジャズをうんと聞くようになって、ジャズがどんな構成になっているのか分析したりした。そのうちにジャズを表現するのが楽しくなってきてね。学校で学んだバッハのハーモニーだって、ジャズとそんなにかけ離れているわけじゃない。じゃあそういったクラシックの要素を取り入れてみても面白いんじゃないか。そんな風に、僕は映画音楽としてジャズの作曲をするようになったんだ」

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チャゼル監督とのコラボレーションではいつもそうだが、「ラ・ラ・ランド」でも、チャゼルが脚本を書くのと同時に音楽をつくりだしていったそう。

「彼にはまだ書き始める前から試行錯誤の途中にも、いろんなアイディアを聞いたよ。どんなキャラクターをつくるべきか、どんなシーンをつくるべきか、このシーンで表現する心情にふさわしいのはどんな音楽なのか。僕らは話し合いながら進めていった。だから僕はデイミアンのつくり出す物語や人物にインスパイアされながら、本当の意味でのコラボレーションを行っていたんだ。成功のためには野心と献身が必要だった。映画をつくり始めたとき、デイミアンと僕は20代半ば。『セッション』より前のことだから、僕らはまだ何もつくっていなかったし、お金もなくて誰にも知られていなくて、成功には遠かった。武器は献身しかなかったんだ。だから昼も夜もなく働いて働いて、必死で創作をし続けた。僕はその頃の一生懸命な気持ちを絶対に忘れず、持ち続けていたいと思ってる」

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夢を見つめ、その実現のためにすべてを捧げたハーウィッツにとって、「ラ・ラ・ランド」のミアとセブは「完璧に共感できるキャラクターだ」という。

「ふたりが『アーティストとして何かを成し遂げるためには、ときには何かを失うような犠牲を払わなければならない、芸術にはそれだけの価値があるんだ』という姿勢には、とくに共感できたね。それはデイミアンが『ラ・ラ・ランド』だけじゃなくて、『セッション』でも描いていたテーマだ。僕自身にとっても、それは永遠のテーマだよ。デイミアンの最新作『ファースト・マン』もそうだ。ニール・アームストロングは宇宙飛行士で芸術家ではないけど、それは犠牲について、情熱について、そしてものすごく高い目標を掲げることについての映画なんだ。それは『ラ・ラ・ランド』のふたりも同じだよね。僕も目標を達成するためなら、資質、献身、情熱、犠牲を尽くすことを少しも厭わないと言えるよ」

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ラ・ラ・ランド」の撮影中はつねに監督や主演のふたりに寄り添い、すべてを見ていたハーウィッツ。なかでも思い出に残っているエピソードは?

「けっこう奇妙なことが起こって、それをよく覚えている。たとえば、オープニングの『Another Day of Sun』のシーン。ハイウェイで青いトラックのドアをダンサーのひとりが上に開けるとバンドがいるという段取りだったんだけど、ドアが壊れて開かくなっていたんだ。たくさんのスタッフがロープを持って、引っ張って開けなくてはならなかった。プロデューサーやら音楽監督やら、そんな仕事を担当したつもりがないような人たちもみんな必死でドアを引っ張っていたよ(笑)。それから、ハモサ・ビーチの桟橋で『City of Stars』を撮っていたときのこと。そこは美しい船着き場で、デイミアンにとっては沈む夕陽を撮るってことが重要だった。太陽がちょうどいい位置にある時間は、たった20分くらいだ。そこで僕たちは準備をして、ライアン・ゴズリングが衣装を着てスタンバイした。ところが、そこにでかい貨物船が航行してきて、ライアンの肩の辺りに停泊したんだ。これじゃ台無しだ、どいてもらわなきゃ撮影できないぞってことになって、プロデューサーは沿岸警備隊とか法律事務所とか政治家とかに電話しまくっていたよ。僕たちは焦ってなんとか船をどかそうとしたんだけど、なぜか撮影開始の5分前に、船は動きだしてその場から消えてくれたんだ。ホッとしたよ!」

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ライアン・ゴズリングエマ・ストーンの歌声にも、裏話が。

「僕らはライアンとエマの自然な歌声が大好きだよ。でも、困ったことがあった。ライアンはとにかく低く低く歌いたがるんだ。彼が歌える限界以上に低くね。なかでも困ったのは、デュエットだった。ライアンの歌いたいキーと、エマの歌いやすいキーが違っていて、お互いに一歩も譲らなかったんだ。『A Lovely Night』のときは、まずライアンが最初の一節を自分の好きなキーで歌って、そこで僕が曲を転調させて、エマが次の一節を違うキーで歌った。それは意図したことではなかったんだけど、偶然うまくいったので音符を書き換えたんだ。ただ、『City of Stars』は転調をするタイミングがなかった。だから僕らは選ばなきゃいけなかった。撮影のスタートが近づいてもまだキーが決まらなくて、僕のピアノでいろいろ試しながら、カメラを回す5分前くらいにやっと映画で聞けるあのキーに落ち着いたんだ。ミュージカルをつくるとき、何人かの歌い手がいると遭遇しがちな、難しい難しい問題だよ」

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ハーウィッツが命を削って盟友とともにつくりだした「ラ・ラ・ランド」は、アカデミー賞を始めとする多くの賞に輝いた。しかし、彼は「どんな賞よりも、観客の喜んでくれている反応の方がよっぽど価値がある」と考えている。

「たとえば、誰かが近寄ってきて、『僕たちは結婚式のときに「ラ・ラ・ランド」の曲を演奏したんですよ』って言ってくれたらもっと嬉しい。『私の子どもが発表会で演奏したんですよ』なんて言われたら最高だよ。生身の人間である観客の人生にいい影響を与えたのなら、こんなに素晴らしいことはないと思う。僕がコンサートを大好きな理由もそこにあるんだ。彼らがいかに映画を愛し、音楽を愛しているかということを肌で感じられるからね。それは、本当の意味で僕に、なぜ映画をつくるのか、なぜ音楽をつくるのかといった根本的な理由を思い出させてくれる。それは、楽しんでくれる人々のためだ。僕はアメリカの西海岸だけじゃなくて、世界中のあらゆる人々に楽しんで、感動してもらいたいと思っている。だから、日本のような国に来ることに、すごい興奮を覚えているんだよ。これは僕にとって特別な体験になるだろうし、もっと素晴らしい音楽をつくっていきたいという意欲をかきたててくれると思う。観客みんなにとっても、特別な意味をもたらすような体験になってくれればいいなと願っているよ」

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「LA LA LAND Live in Concert : A Celebration of Hollywood ハリウッド版 ラ・ラ・ランド ザ・ステージ」は8月18日~22日、東京国際フォーラム ホールAで開催される。詳しい情報は公式サイト(https://stage.parco.jp/web/play/lalaland2022/)で確認できる。

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