「ザ・ビーチ・ボーイズ」ブライアン・ウィルソンに密着 ドキュメンタリー監督が見た“天才”の意外な素顔

2022年8月12日 17:00


ブライアン・ウィルソンとブレント・ウィルソン監督(左)
ブライアン・ウィルソンとブレント・ウィルソン監督(左)

現在も世界的に高い人気を誇る、伝説的バンド「ザ・ビーチ・ボーイズ」の創設メンバーであるブライアン・ウィルソンに密着した初のドキュメンタリー「ブライアン・ウィルソン 約束の旅路」が公開された。貴重なアーカイブ映像とともにブライアンの軌跡をたどるほか、3年間で70時間以上に及ぶインタビューを敢行。ブルース・スプリングスティーンエルトン・ジョンら、そうそうたる顔ぶれのミュージシャンたちも登場してブライアン、ザ・ビーチ・ボーイズへの愛を語る。

さらに、ブライアンが元ローリング・ストーン誌の編集者ジェイソン・ファインとともにドライブしながら西海岸のゆかりの地をめぐる姿を映した。このほど、ブレント・ウィルソン監督が本作を語るインタビューが公開された。

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――ブライアン・ウィルソンのドキュメンタリーを撮ろうと思ったきっかけを教えてください。

長い間、ブライアン・ウィルソン、「ザ・ビーチ・ボーイズ」のファンではあったんです。たくさんのドキュメンタリーも観て、本もたくさん読んできました。それでもブライアン・ウィルソンがどういう人間かは分からなかったんです。それで自分がそれをやるべき人間だと思いました。そこから本物のブライアン・ウィルソンをどう見つけていくかっていう道をたどることになったわけです。

まず、「スピリチュアルハーモニー」というドキュメンタリーを作りました。ブライアンも出演してくれています。1950年代のドゥーワップのミュージックについてのものです。その映画を作る過程において、ブライアンにインタビューすることができました。そして次のプロジェクトを考えた時に、次はブライアン・ウィルソンはどうだろうとなったわけです。すでに彼とのつながりがあったので、アイディアを持ってアプローチをかけました。そして素晴らしいことにブライアンは「イエス」と言ってくれたわけです。そして自分の音楽のヒーローの映画を作ることになったわけです。

――当初は通常のインタビューで構成しようと考えていたと伺いましたが、ブライアンとジェイソン・ファインのドライブ形式での撮影に切り替えた理由を教えてください。

最初は今の状態とは全く違う方法で撮ろうとしました。まあ必然というか流れでドライブ形式になりました。一度、私ひとりでインタビューを3度試みました。でもそれは全部散々たるものでした。それで私は失敗した、キャリアも終わった、もう2度と映画を作れないんじゃないかと思いました。そんな時に、ローリングストーンの編集者のジェイソン・ファインに連絡したらどうかとブライアンのマネージャーから私に提案してくれました。ジェイソンはブライアンに何度もインタビューをしているし、大事な友人でもある。ブライアンをインタビューするにあたってジェイソンにそのプロセスについて聞いたら、ブライアンをそのまま車に乗せてLA中をドライブしながらその間に質問をするというものでした。

そのアイディアは素晴らしい映画になりそうだと予感しました。自分自身が観たいような映画になるんじゃないかと思ったんです。ブライアンが音楽界の王子で、LAの世界に生きている、まして友達と一緒に音楽を聴きながら車でドライブをするというものですよね。ジェイソンにカメラに映る側はどうだろうと相談したらイエスと言ってくれた。そういういきさつがありました。

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――今回の撮影で大変だったことは?

私はカメラの存在を忘れほしかったんです。小さいカメラが車の中に色々仕掛けられているんですけど、車が走り出したら、時間を忘れてカメラの存在も忘れてくれることも願ってましたし、それを期待していました。ふたりでただ街を走っているって感じですね。運がいいことにそういうことになりました。

彼らの乗る車の後ろを走る車に僕は乗っていました。彼らが何を話しているかは僕は聞こえている状態です。会話を聞きながら、たまにジェイソンにテキストを送って質問を投げたりしていました。ジェイソンはとても大変な作業が待っていて、とても大切な荷物を運びながら、私のテキストにも応えて、さらに音楽を選びながらかけて、そして運転をしているというタスクが山盛りだったんです。なのでジェイソンは事故を起こしてしまうんじゃないかと本気で怖がっていました。幸運なことに彼は上手くやってくれましたね。ブライアンもすごくわかりにくい曲をリクエストしたりして、ジェイソンはとても大変だったと思います。

――今回、撮影には3年間、編集に9カ月かかったと伺いました。映画に映し出されていないブライアン・ウィルソンはどのような様子だったのでしょうか?

10代のころに彼が家族とよく行っていたメキシカンのレストランがあって、ブライアンも「いいね!」と乗り気だったので、そこに行こうとブライアンを迎えに行ったら「やっぱり行かない」と言われたり……。その店は5回くらい予約し直しました。毎日のようにそういうことが起きるわけです。全く予想がつかないタイプの人間でした。

良いことでもあるし、悪いことでもあるけれど、良い意味で裏切ってくれるということでもある。弟のデニスのソロアルバムを作るというシーンがあるのですが、デニスがレコーディングした「パシフィックオーシャンブルー」を実はブライアンは一度も聞いたことが無かった。彼が聞きたいと言ってくれたことに僕とジェイソンはとても驚きました。このように良い意味でのサプライズが多かったですね。

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――ビーチ・ボーイズやブライアン・ウィルソンの個人的な写真やホームビデオなども多数登場しておりましたが、これは本人から提供されたものなのでしょうか?

ブライアンの写真とかプライベートなところまでアクセスする権利を貰えて、すごく光栄でした。結婚式の映像を見せてくれないか? という質問に対してイエスと言ってくれた。ブライアンの妻のミランダも了承してくれた。誓いを立てるところで失敗をする、言い淀んでしまうというのを見つけました。その辺は本当に普通の男性だと思いました。そういった部分も映画の中に入れることができてほんとに嬉しいです。それはブライアンと家族から信頼を得た結果で、とてもありがたく思います。

――撮影を通して、改めてブライアン・ウィルソンという人物はどのような人だと思いますか?

ブライアンの人間らしい面とレジェンドの面を両方発見できた。彼がどれだけユーモアのセンスがあり、仲間たちと一緒にいるとき、バンドメンバーやクルーと一緒にいるときなどはとても楽しかったし、その一面を見れたことはとても嬉しかったですね。

アスリートとしても素晴らしいというのも驚きました。オタクっぽい感じでレコードばっかり聞いてるような高校時代を過ごしていたというイメージがあったのですが、フットボールチームのクウォーターバックでもあったし、野球のチームではセンターを守っていたし、たくさん友達もいて、本当に普通のティーンエージャーで、野球をやりたいという夢があった。どれだけ普通だったかということが驚きの発見でした。

――本作の見どころや、ファンへメッセージをください。

人間としての本当のブライアンをどう捉えているかというところ。そしてブライアン・ウィルソンが人としてどれだけ強いかも知ってもらいたいです。

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