スピルバーグ、宮崎駿、ルーカスにも多大な影響　チェコアニメの巨匠カレル・ゼマンの特集上映が開催

2022年3月17日 12:00

チェコ・アニメーションの巨匠カレル・ゼマンの初期から晩年に渡る代表作10作品（＋短編1本）を上映する「チェコ・ファンタジー・ゼマン！」が、4月23日から新宿K's cinemaで開催されることがわかった。

カレル・ゼマン（1910～1989）は、人形アニメーション、絵本で人気の高いイジー・トルンカ（1912～1969）と並ぶチェコ・アニメーションの創設者のひとり。第二次世界大戦中、チェコ・アニメーションの発祥地「ズリーン」を拠点に、アニメーションの制作を開始。チェコの伝統でもある人形劇への愛着を強く持つ一方で、切り紙アニメ、人形アニメ、実写とアニメの合成など、さまざまなスタイルを駆使した斬新な作品を生み出した。

ゼマンの描く世界は、少年時代にのめり込んだジュール・ベルヌの小説のように、潜水艦や飛行船、恐竜や架空の動物など魅惑的な乗り物や動物が次々に登場するSF冒険小説を思わせる作風が特徴。今回の特集企画では、ベルヌ原作の「悪魔の発明」「盗まれた飛行船」、G・ビュルガーの原作をアニメと実写の合成で作り上げたゼマンのファンタジー大作「ほら男爵の冒険」や、短編「プロコクウ氏　映画制作の巻」を上映。詩情とロマン溢れる代表作を一挙に見ることができる貴重な機会となる。

なお、ゼマンが手掛けた作品群は、これまでに多くのファンを魅了してきた。スティーブン・スピルバーグ、宮崎駿、ジョージ・ルーカス、ピーター・ジャクソンといった監督たちにも多大な影響を与えている。

「チェコ・ファンタジー・ゼマン！」は、4月23日～5月6日に、新宿K's cinemaで開催。上映ラインナップは、以下の通り。

「鳥の島の財宝」
　小さな美しい島では皆が平和に暮らしていた。ある日突然、島に黄金がもたらされたことから人々の暮らしぶりが一変する。古いペルシャの寓話を元にして作られた牧歌的人形アニメ。ペルシャ細密画のような作風で描いた“大人の絵本”のようなゼマン初の長編作。

「前世紀探検」
　ボートに乗った4人の少年が“時間の川”を上りながら古代世界を冒険していく。ブロントザウルス、ティラノザウルスなどの恐竜との遭遇、そして未知の生きものの発見。「ジュラシック・パーク」のはるか先駆ともいうべき恐竜映画史に残るSFトリック・フィルムの傑作。

「悪魔の発明」
　科学者ロック教授とその助手アールは新型爆弾の開発に没頭していたが、完成寸前で何者かに拉致されてしまった。「海底二万マイル」などのSF小説の祖として名高いジュール・ベルヌの原作を映画化したゼマンの代表的特撮冒険SF映画。

「ほら男爵の冒険」
　宇宙飛行士のトーニークは人類初の月面着陸に成功した、と思ったが降り立った月面にはすでに何者かの足跡が残されていた…。G・ビュルガーの原作から飛び出した“ほら男爵”の奇想天外な大冒険譚が、ゼマンのアニメと実写の見事な合成で最後までノンストップで綴られていくファンタジー大作。

「狂気のクロニクル」
　17世紀のドイツを舞台に、ヨーロッパ諸国を30年にわたって巻き込んだ宗教戦争を背景に、主人公ピーターを通して戦争の愚かさをゼマン流に描いた。ゼマンは劇中に登場するキュートな天使をはじめ、重いテーマをシュールにユーモラスな遊び心を織り交ぜて作り上げた。

「盗まれた飛行船」
　19世紀末のベル・エポックの時代。飛行船が発明され人々は興奮して大騒ぎ。その最中に5人の少年たちが飛行船を乗っ取り大空に飛び出した…。ジュール・ベルヌの代表作「神秘島」の特撮映画化で少年たちの奇想天外な冒険を、実写と書き割りで描き出した。「天空の城ラピュタ」を先取りした傑作ファンタジー。

「彗星に乗って」
　1868年のフランス領アルジェリア。フランス軍の若き中尉は町で見かけた絵葉書の美女に一目惚れするが、その時、謎の彗星が地球に大接近してくる。その彗星は全盛期の恐竜や龍が棲む惑星だった…。「盗まれた飛行船」に続くジュール・ベルヌ原作の映画化。鮮やかな色彩に圧倒されるゼマン・アドベンチャー。