【本日公開】本国で禁じられた冤罪サスペンス「白い牛のバラッド」 監督がメッセージ

2022年2月18日 10:00


マリヤム・モガッダム(右)、ベタシュ・サナイハ
マリヤム・モガッダム(右)、ベタシュ・サナイハ

第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された「白い牛のバラッド」が今日2月18日から公開を迎え、主演も務めたマリヤム・モガッダム監督と、公私共にパートナーであるベタシュ・サナイハ監督からのメッセージ映像が披露された。

本作は、イランの厳罰的な法制度を背景に、冤罪による死刑で夫を失ったシングルマザー・ミナの姿を通し、社会の不条理と人間の闇を描く。イランでは2020年2月のファジル国際映画祭で3回上映された以降、政府の検閲により劇場公開の許可が下りず、2年近く上映されていない。

映像では、マリヤム監督が「日本の観客の皆さんとは深い繋がりを感じます。それは私たちに共通する詞的な東洋文化から来るものでしょう。本作を気に入ってくれることを心から願いますし、この物語を皆さんと共有できて光栄です」と日本で上映される喜びを伝えている。

あわせて、2人のインタビューも公開された。2人が影響を受けた監督について聞かれると「これは難しい質問でも簡単な質問でもあります」と前置きしてから、「イングマール・ベルイマン、アンドレイ・タルコフスキースタンリー・キューブリックアッバス・キアロスタミ黒澤明、イタリアのネオレアリズモ、フランスのヌーベルバーグの巨匠監督たちです。選ぶことは難しく、1、2本の映画を挙げることはとてもできません」と世界の名だたる監督たちの名前を挙げる。

タイトルにもある“白い牛”については、イスラム教の聖典コーランに記された古代の寓話に由来しており、モガッダムは「イランの生活には近代的な側面がありますが、法律はイスラム法(シャリーア)に基づいています。宗教的な儀式における牛は、通常、生け贄とされています。本作における白い牛は、死を宣告された無実の人間のメタファーです。コーランの一章である雌牛は、キサースに関連しています。キサースとは“目には目を”という格言のとおり、同害報復刑を意味するシャリーア用語です。被害者の命や体の部位にまで金銭的価値がつけられ、加害者は何らかの形で賠償させられるのです」と、牛が表すメタファーから、イランにおける刑罰について説明。

続けて、サナイハは「このメタファーはタイトルの由来というだけではありません。例えば、ミナが見る牛の夢やミルクなど、脚本の中で繰り返し出てくるテーマです。ペルシャの文化や文学、特に詩においては、メタファーやダブルミーニングは非常に強い存在感を持っているので、自分たちの映画にもそういった複層的な解釈を取り入れるようにしています」とこだわりを語った。

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