横浜流星＆佐野勇斗＆白石麻衣が生きた、「嘘喰い」の極限の世界　原作をリスペクトした撮影を振り返る

2022年2月11日 14:00

横浜流星が天才ギャンブラーを演じ、一流イカサマ師たちとのデスゲームに挑む映画「嘘喰い」が、2月11日から公開される。同作は、「スマホを落としただけなのに」「事故物件　恐い間取り」などで知られるジャパニーズホラーの名手・中田秀夫監督が、迫稔雄氏の同名人気コミックを実写映画化するもの。「嘘（イカサマ）を見破れなければ、即死。」という極限の世界で生きる濃厚なキャラクターを作り上げた横浜、佐野勇斗、白石麻衣が、原作をリスペクトした役づくりと撮影、忘れられない強烈なインパクトを放つデスゲーム、人生のなかで「一世一代の大勝負」だと思った出来事について、語り合った。（取材・文／編集部）

国家をも凌ぐ支配力を誇る、会員制の闇ギャンブル倶楽部“賭郎”。その頂点を決する一世一代の大勝負に敗れ、“賭郎”の会員権を剥奪された“嘘喰い”こと斑目貘（横浜）は、マッドサイエンティスト・佐田国一輝（三浦翔平）が倶楽部を荒らしているという噂を聞きつける。貘に闇金から救われた人生負け組の青年・梶隆臣（佐野）、闇カジノのオーナーでヤクザの組長でもある鞍馬蘭子（白石）とともに戦うのは、欲望にまみれた超一流のイカサマ師たち。殺しにイカサマ、裏工作が当たり前の頭脳心理戦で、貘は嘘を見破り、勝ち残ることができるのか――。

――事務所の先輩・後輩であり、本作で初共演を果たし、バディを組んだ横浜さんと佐野さん。まずは、共演した感想を教えてください。

横浜「勇斗は本当にピュアで真っ直ぐなので、今回も正面から役と向き合っているところを見ることができました。梶はこの物語のもうひとりの主人公で、見てくださる方が感情移入できる存在。僕らはキャラクターが強いので、演じやすさもある一方で、勇斗は不安もあったと思うのですが、（こちらに）合わせて物語のなかで大事な役を演じてくれました」

佐野「流星くんとは、今回初めてがっつり一緒にやらせて頂いて、人柄や、役への向き合い方や、ほかのキャストへの接し方が素晴らしくて。尊敬という一言では片付けられないほど、勉強になりました」

――おふたりは、白石さんとも初共演ですね。

横浜「白石さんは、もともとは違うジャンルで活躍されていましたが、そういう経験は、役にも生きてくると思うんです。普段の白石さんは明るくて穏やかな方なんですが、（演じた）蘭子は全然違うじゃないですか。白石さんの柔らかさと、蘭子の親分としての強烈なところがよくマッチして、魅力的なキャラクターになったと思います。普通に演じたら怖い感じになると思うんですが、怖さだけではなくチャーミングな部分も感じられるのは、白石さんが演じられたからこそだと思います」

佐野「白石さんは、現場にいる姿勢がとにかく謙虚な方です。皆が知っているスターなのに、謙虚な姿勢で物事に向き合われている姿を見て、僕も学ばせて頂きました」

白石「そんなことないです（笑）。嬉しいです、ありがとうございます。私も、おふたりがお芝居に真っ直ぐ向き合われている姿を見て、見習うところが多かったですし、『すごくストイックだな、かっこいいな』と思いました」

――横浜さんは銀髪の天才ギャンブラー・貘、白石さんは巧妙なイカサマを駆使する闇カジノのオーナー・蘭子と、「嘘喰い」ならではの現実離れしたキャラクターを演じました。一方、佐野さん扮する梶は、貘との出会いをきっかけにギャンブルの世界に足を踏み入れる青年で、観客と物語をつなぐ存在。それぞれ、どのように役づくりをされたのでしょうか。

横浜「僕は天才ギャンブラーという要素はあまり意識せず、貘の内面に重点を置いて演じていました。もちろん原作やその世界観をしっかりとリスペクトしていたのですが、意識し過ぎると、ただの物真似になってしまう。僕らが演じる意味がなくなってしまう。なので演じる際は、貘の繊細な人間らしさを大切にしていました。あとは貘が持つ『絶対的な自信』、その1本がぶれなければ良いのかなと。実際に銀髪に染めて、メークや衣装にも助けて頂いて、皆で貘を作り上げました」

佐野「中田監督からずっと言われていて、僕自身も感じていたのは、見てくださる方にいちばん近いのは梶だということ。その部分を頭に置いて、ほかのキャラクターとのお芝居では、『普通に生活していて、こんな人が出てきたら驚くだろうな』と想像して、大きくリアクションをとりました。あとは原作ファンの方が違和感なく見られるように、という点も意識しました」

白石「私は、実際の自分とはかけ離れた役だったので、中田監督とお話しながら、ビジュアルや中身を作っていきました。蘭子はかっこよくて、芯が通っている女性。その強さが立ち姿や声に現れるように演じました。ふとした瞬間に、女性らしい部分が見えるところもポイントですね」

――白石さんからは、「実際の自分とかけ離れた役」という言葉もありましたが、演じたキャラクターとの共通点はありましたか。

横浜「共通点はあんまりないです。僕は貘のように、自信があるわけではないですし……」

佐野（急に勢いよくカットイン）「じゃあ僕が説明させてもらいますね！　やっぱりカリスマ性、これは貘も横浜流星も持っているものなんです。僕は梶として、貘についていかせてもらうなかで、『貘さんについていけば、人生変わるんじゃないか』『この人に自分の人生を任せたい』と思ったんです。座長としての横浜流星も、同じようについていきたいと思わせるものを持っています」

横浜＆白石（爆笑）

横浜「あ、じゃあ共通点は、勇斗がいま言ったことでお願いします（笑）」

佐野「僕自身の梶との共通点は、かわいげのあるところですかね。あ、自分で言うのはちょっときついな（笑）。あとは、空回っちゃうところも似ていますね」

横浜「空回っているときもあるけど、それは勇斗が自分のことよりも人のことを考えているからだと思います」

白石「私は、あえて言うとするなら、サバサバしているところ。どちらかというと、私も中身が男っぽいので、そのあたりは蘭子と共通しているかなと思いました。でもやっぱり、蘭子は自分とはかなり違うので、尊敬の気持ちを抱いていました」

――劇中では、「DEATHポーカー」「悪魔のルーレット」「航空機制圧バトル」「殺し屋脱出ゲーム」「死のババ抜き」など、残酷なデスゲームが次々と登場します。忘れられない、記憶に残るゲームを教えてください。

横浜「やっぱり、（「死のババ抜き」で使用される）ハングマンじゃないですか。原作でもすごく過激なシーンだと思うし、ババ抜きだけであそこまで高度な心理戦、頭脳戦に発展していくので、撮影も熱かったですね」

――「死のババ抜き」は、ババ抜きをするプレイヤーの背後で、カードの数字に従ってハングマンが建てられ、敗者はその場で首を吊るという残酷なゲームでした。貘の勝負の相手である佐田国役の三浦さんと、熱量の高いお芝居をされていましたが、現場の空気はいかがでしたか。

横浜「あのシーンは、すごく集中して取り組むことができました。現場に原作があったので、原作を見ながら三浦さんと話し合ったり、台本にはないけれど原作にあるセリフを加えたりもして、皆で一緒に作りました。原作により近付けていくような作業でした」

白石「私もハングマンのシーンが印象的でした。撮影には参加していないのですが、出来上がったシーンを見たらすごく緊張感がありました。本当にそこで生死を賭けた勝負をしているので、鳥肌が立ちましたし、引き込まれました」

――佐野さんは、貘と梶が、殺し屋が潜む森のなかに放たれる「殺し屋脱出ゲーム」について、「流星くんともたくさん相談しながら撮ったシーンなので、是非注目していただきたいです」とおっしゃっていますね。

佐野「そうですね、やっぱり僕は『殺し屋脱出ゲーム』がいちばん思い出深いです。梶が貘と出会って、初めて本当に命を賭ける、『負けたら死ぬ』ということを実感するシーンなんです。撮影も実際に森のなかで、寒くても薄着で頑張りましたし、流星くんとすごく距離が縮まったなと思いました。待ち時間ですごく話しましたし、泊まりでの撮影だったので、一緒に宿泊場所の大浴場に行ったり、空き時間にうなぎを奢ってもらったりもして。あの期間があったからこそ、貘と梶の芝居に出てくる何かがあったと思うので、思い入れがありますね」

――貘が挑む生死をかけた大勝負にちなんで、皆さんの人生のなかで記憶に残る、一世一代の大勝負だったと感じる出来事はありますか。

横浜「僕は、格闘家の道に行くか、俳優の道に行くかというところで、この道を選んだことですかね。まだまだ勝負の途中ですが、こちらの道を選んで良かったなと思います」

佐野「僕は、大学受験が大勝負でした。ずっと受験するつもりがなかったので、皆よりも勉強を始めるのが遅かったんですが、第一志望に奇跡的に合格できました。落ちることを考えず、がむしゃらに勉強して、諦めなかったことで、勝利できたんだと思います」

白石「私はオーディションですね。合格したあとに親に電話して、受かったけれど自信がないことを伝えたら、『せっかく頂いた機会だし、とりあえずやってみたら？　頑張ってみて、ダメだったらやめてもいいんだから』と言ってくれて、『やってみようかな』と、前向きな一歩を踏み出せたんです。親からの言葉に背中を押されて、決断することができました」