カンヌ、ベルリンなど海外映画祭を代表する映画人たちが語る、コロナ禍における映画祭

2021年11月1日 13:00


白熱した議論を展開
白熱した議論を展開

第34回東京国際映画祭で10月31日、プログラミングディレクターの市山尚三をモデレーターに、海外映画祭を代表する映画人たちが、コロナ禍における映画界の課題や展望について話し合うパネルディスカッション、ワールド・シネマ・カンファレンス「映画界の未来」が、東京ミッドタウン日比谷内のBASE Qホールで行われた。

「ワールド・シネマ・カンファレンス」は、東京国際映画祭が海外から著名な映画人を招き、映画を通じて交流する場を作り出すパネルディスカッションプログラム。今回は、フレデリック・ボワイエ氏(トライベッカ映画祭アーティスティック・ディレクター)、カルロ・シャトリアン氏(ベルリン国際映画祭アーティスティック・ディレクター)、ジャン=ミシェル・フロドン氏(映画評論家/映画史家/パリ政治学院准教授/セントアンドリュース大学名誉教授)、クリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ映画祭代表補佐 映画部門ディレクター)、ローナ・ティー氏(プロデューサー/キュレーター)という海外映画祭を代表する映画人や、海外映画祭をよく知る映画評論家が参加し、「映画界の未来」をテーマに議論を展開した。

まずは各パネリストたちが、それぞれが関わる映画祭について現状を説明。ボワイエ氏がアーティスティック・ディレクターを務める「トライベッカ映画祭」は、米ニューヨーク市内で行われている大規模なインディペンデント映画祭で、2002年に俳優のロバート・デ・ニーロらによって設立。昨年はコロナ禍のため規模縮小を余儀なくされたが、YouTubeと共同で企画・主催するオンラインイベント「We Are One:A Global Film Festival」を実施。そこではカンヌ、ベネチア、ベルリンといった世界三大映画祭をはじめ、東京国際映画祭も含めた世界各国の映画祭プログラムを上映した。ボワイエ氏も「これは思いつきで始めたものでしたが、20以上の映画祭が参加してくれた。日本からも深田晃司監督が新作短編(『ヤルタ会談オンライン』)を提供してくれてありがたかった」と振り返る。なお、今年6月には、ニューヨーク市内の会場を使用し、有観客での映画祭が行われた。

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ジュンヌ氏が代表補佐と映画部門ディレクターを務める「カンヌ国際映画祭」は昨年、開催の可能性をギリギリまで模索し、上映作品も通常通りに選出していたが、コロナ禍のため通常開催を断念。そんな流れから、カンヌが選んだ56本の作品を「カンヌ2020レーベル作品」とすることを発表。映画祭での上映がかなわずとも「カンヌが選出した作品」とお墨付きを与えることで、映画祭の継続性をアピールすることにもなった。そして今年は例年の5月開催から、7月開催に変更して実施。ジュンヌ氏は「フランスは7月になると、人口の半分くらいがバカンスをとるので、参加者も普段より少なかった。その上、外国人の旅行者もいなかったので、不思議な雰囲気でしたが、映画祭自体はうまくいきました」と振り返る。

さらに、シャトリアン氏がアーティスティック・ディレクターを務める「ベルリン国際映画祭」は毎年2月に実施されているが、今年の映画祭は、3月と6月に分散して実施された。同様に開催の可否はギリギリまで熟慮されたというが、「ベルリン映画祭は映画業界のマーケットに対する影響も大きいため開催すべき」という意見から、上映規模を縮小しての開催を決定。3月にオンライン上映、6月に野外上映を行うことで、なんとか実施に至ったという。シャトリアン氏は「6月ということで、1年でとても暑い時期の野外上映となったが、今年は雨が降らなくて運が良かった。プランBは考えていなかったですから」とホッと胸をなで下ろしていた。

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また、16年に始まった「マカオ国際映画祭」の共同創立者であり、20年まで同映画祭の運営責任者を務めたローナ氏も「2020年の『第5回マカオ国際映画祭』はオンラインでの開催となったが、マカオは小さな街なので。マカオに人を呼べないなら、もともとの映画祭の意味を果たせていない。そういう意味で、コロナ禍になり、あらためて、人と人をつなげるという映画祭の役割を感じることとなった」と映画祭をオンラインで実施することにおける複雑な思いを語る。

そしてその後は、パネリストたち全員で、映画祭をオンラインで行うことについて、意見を交わした。一様に「大きなスクリーンで、大勢の観客とともに映画を上映したい。そして映画祭は、大勢の観客や映画人との出会いの場であってほしい」という共通した思いを持ちつつも、何人かのパネリストたちは、オンラインの映画祭について「広い層にリーチする」「映画館や映画祭に行けない人も参加できる」といった可能性を感じたという。

だがそのうえで「PCの画面で映画を観る事への違和感」「民間のスポンサーが減るため、国がしっかりと援助してくれないと開催は危うい」「複数人の視聴環境をどこまで許容するか」「オンライン映画祭が地方活性化にどれだけ貢献できるのか」「オンラインによって映画祭の独自性が失われないためにも、今まで以上のキュレーションが大事になる」といった意見が次々と飛び出すなど、オンラインで映画祭を行うことの課題もあらためて浮き彫りとなった。

第34回東京国際映画祭は、11月8日まで開催。

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