【「白頭山(ペクトゥサン)大噴火」評論】噴火阻止のために核を奪う、これぞ韓流ディザスターアクションの極!!

2021年8月28日 08:00


「白頭山(ペクトゥサン)大噴火」
「白頭山(ペクトゥサン)大噴火」

韓国がディザスターパニックの真髄を見せつけ、その勢いづいた設定が想像の斜め上をいく衝撃作だ。中国と北朝鮮の国境にまたがる白頭山が噴火し、火山性地震によって朝鮮半島の広域で都市が崩壊。事態を憂慮した韓国側政府は、地質学者のカン教授(マ・ドンソク)に協力を乞い、核爆発でマグマの圧力を下げ、火山活動を人為的に抑える秘策を得る。

だが韓国は非核兵器国。そこで政府が発動させたのは、なんと北朝鮮の伝説的工作員(イ・ビョンホン)と接触し、同国の核兵器を奪うという計画だった。任務を負うのは、軍の爆破処理班・チョ大尉(ハ・ジョンウ)を中心とする特殊編成部隊。タイムリミットは最後の大爆発が起きるまでの、わずか75時間!!

我が国の富士山に相当する、朝鮮半島の名峰が突如火を吹く??。そんなアッパーぶりに加え、カタストロフ阻止のために核を盗むといった、飛躍がすぎる解決案に誰もが茫然となるだろう。なにより我らがマブリーことマ・ドンソクが天才学者を演じる段階で、この映画は噴火の脅威以上に人の不安をあおる。みんな彼が火口に巨岩をぶん投げ、自力で火山を封じると思ってただろ? オレもそう信じて疑わなかったよ。

だが「論より鉄拳」の印象強めなドンソクの知性的演技は意外と板についており、国難を頭脳で乗り切るキレ者として違和感はないし、南北の選ばれし者たちが共闘し、未曾有の危機へと立ち向かう熱量が、先述した刺激強めの要素を味わい深い感動へと昇華させる。ビョンホン演じる工作員もそう、家庭を顧みず一匹狼として生きてきた冷血漢が、ジョンウら敵国の軍人たちとの接触によって己れを悔い改めていく。このように変容する個々のドラマが、絶望的な状況を打破する切り札として機能し、観る者の魂を揺さぶる結末へと導いていくのだ。

同時にハリウッドの同ジャンルに引けを取らない、終末感ある都市破壊ショットをのっけから惜しまず投入。おまえら時間制限があるのを忘れるなといわんばかりに起こる地震や大噴火の連打は、まるでパティをパティで挟んだ肉々ハンバーガー状態だ。こんなランニングタイム3時間は超えそうな内容を、布団圧縮機にかけたようにコンパクト化し、わずか2時間弱でまとめてしまう。韓国映画の創造に対する前のめりな姿勢を、あらためて感じずにはおれない。

(尾崎一男)

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