【「SNS 少女たちの10日間」評論】まるで変態博覧会。それを「どうやって撮ったか?」がミソ

2021年4月25日 21:00


「SNS 少女たちの10日間」
「SNS 少女たちの10日間」

本作を見た映画.comスタッフの女子複数が「胸くそ悪くなる映画でした」と感想を述べていたので、私も早速見てみたら、本当に胸くそ悪くなった(笑)。まるで、変態博覧会です。カメラ越しに「洋服脱いで」と懇願したり、自らの局部の写真を送りつけたり、必死でティーンエイジャー女子を口説くオッサンたち(爺さんも!)は、本当に見ていて不愉快になる連中です。しかし、妙齢の娘を持つ親の皆さんには、後学のために鑑賞することをお勧めします。十分に成熟していない彼女たちが、性的リクエストに対して正しい判断ができず、金銭などの見返りで変態オヤジの誘いに乗ってしまう可能性についてしっかり説明されているからです。基本的に、SNSは変質者の巣窟ですからね。

私は「こんな際どいSNS上のやりとりを、いったいどうやって撮影したんだ」という疑問を持ちました。「18歳以上で幼い顔立ちの女優を3人集め、12歳という設定にして、SNSで友だち募集するという実験」そのものが秀逸だったというのがひとつの答えでしょう。3人の女優は、この実験を「仕事」として10日間頑張ります。そしてもうひとつ、この映画の監督は2人いて、片方のバーラ・ハルポヴァーは女性監督であることも重要なポイントです。同じような「どうやって撮影したんだ」疑問は、2020年のオスカー候補になったドキュメンタリー「ハニーランド 永遠の谷」で思ったのと同じ類のものです。「こんな僻地に住む独身女性に、どうやってここまで本音を語らせることができたのか?」これも答は「相手が女性監督だから」ということで説明がつきます。

女性同士、監督が被写体に寄り添いながら手厚くフォローすることで、男性監督では絶対に撮れない画が撮れる。これ、ここ最近のドキュメンタリーにおける潮流のひとつだと思います。変態オッサンのどうしようもない映像のケア(顔のボカシが半端ない!)は男性監督にまかせ、ティーンエイジャーのメンタルケアと励ましは女性監督がやる。役割分担の結果だと思います。ドキュメンタリーの世界でも、女性監督の躍進はしばらく続くでしょう。

あと、本作のエンドロール。Skypeの着信メロディを重唱にしてかぶせたBGMには痺れました。締めがお見事でした。

駒井尚文

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