「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」公開延期で米MGMの財政が逼迫
2020年11月6日 11:00
「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」のライセンス販売をストリーミング会社へ持ちかけていたことが明らかになったMGMの財政が逼迫していると、米ハリウッド・レポーターが報じている。
シリーズ通算25作目にして、ダニエル・クレイグのボンド役引退作となる「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、当初4月に世界公開を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、イギリスで11月12日、アメリカでは11月20日に公開を延期。その後も状況が改善しないため、2021年4月に再延期されている。
しかし、再延期を決定する前に、MGMは劇場公開ではなく、ストリーミング配信会社へのライセンス販売の可能性を模索。12カ月間のライセンス購入として、Appleが3億5000万~4億ドルでオファーをしたものの、MGMの希望額である6億5000万~7億ドル(8億ドルという声もある)とかけ離れていたため、実現には至らなかった経緯がある。
MGMの希望額は、約2億5000万ドルの製作費と、MGM、UA、ユニバーサルへのライセンス料に加えて、映画がヒットした場合にクレイグ、ラミ・マレック、キャリー・フクナガ監督に支払われるボーナス、2度にわたる公開延期で費やした宣伝費5000万ドルなどを合算したものだ。なお、世界総興収10億ドルを突破した「007 スカイフォール」をもとに算出しているという。
だが、Appleと同じく同作の売却を持ち掛けられたと報じられているNetflixにとっては、MGMの希望額は論外だった。「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」がキラーコンテンツになるのは間違いないが、たった12カ月間のライセンス料に6~7億ドルを費やすのであれば、オリジナルの大作映画を複数製作したほうがいい。たとえば、1億5000万ドルほどで製作したライアン・レイノルズ主演の「6アンダーグラウンド」(マイケル・ベイ監督)は、19年12月10日に世界配信され、1カ月間で8300万人が視聴している。
MGMがストリーミング会社に「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」の販売を持ちかけたのは、財務状況がそれだけ逼迫しているためだという。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、長期にわたり映像作品の製作が停止。さらに、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」のために借り入れた製作費の利子が毎月100万ドル発生しているという。21年4月の公開が再び延期されるようなことになれば、かなり厳しい状況になりそうだ。