ナチスの迫害を逃れた、世界的絵本作家の過酷な少女時代 「ヒトラーに盗られたうさぎ」11月公開

2020年8月28日 12:00


ドイツを出国し、スイス、フランス、イギリスに亡命したジュディス・カーの知られざる物語
ドイツを出国し、スイス、フランス、イギリスに亡命したジュディス・カーの知られざる物語

[映画.com ニュース] 「おちゃのじかんにきたとら」などで知られる世界的絵本作家ジュディス・カーの過酷な少女時代を描く「When Hitler Stole Pink Rabbit」(英題)が、「ヒトラーに盗られたうさぎ」の邦題で、11月に公開されることがわかった。1933年、ヒトラーの台頭によってナチスが政権を握る直前、迫害から逃れるために故郷ドイツを出国し、スイス、フランス、イギリスに亡命した、カー自身の体験をつづった自伝的小説がベースとなっている。

シンプルで味わいのあるイラストが世界中で人気を集め、惜しまれながらも、2019年5月に95歳で亡くなったカー。「名もなきアフリカの地で」で第75回アカデミー賞の外国語映画賞を獲得したカロリーヌ・リンク監督が、カーの自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」を映画化した。9歳の少女アンナが、貧困や差別などの困難を乗り越えながら、家族との絆を深めていく愛と成長の物語。19年のクリスマスにドイツで公開されると、「アナと雪の女王2」「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」などハリウッド大作が並ぶなか、初登場で4位にランクイン。公開初日からわずか4日間で、約1億8000万円を稼ぎ出すヒットを記録した。

33年2月、ベルリンに住む少女アンナは、兄マックスや友人とともにカーニバルを楽しんでいた。しかし翌朝、アンナは母から突然「家族でスイスに逃げる」と告げられる。新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた辛口演劇批評家であり、ユダヤ人の父は、「次の選挙でヒトラーが勝ったら、ヒトラー反対者への粛清が始まる」という忠告を受けていた。ヒトラーの勝利が現実味を帯び、身の危険を感じた両親は、密かに逃避行の準備を始めていたのだ。住み慣れた家から持っていけるものは1つだけだと言われたアンナは、大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみに別れを告げる。それは、これまで何不自由なく暮らしていた彼女と家族の、辛い逃亡生活の始まりでもあった。

1000人の中から見出された新人リーバ・クリマロフスキが、どんな状況でも真っ直ぐに前を向くアンナ役を、みずみずしい感性で演じた。「帰ってきたヒトラー」でヒトラーを演じたオリバー・マスッチと、「ブレードランナー 2049」のカーラ・ジュリが、アンナの父と母を体現。ユストゥス・フォン・ドーナニー(「お名前はアドルフ?」)が心優しいユリウスおじさん、マリヌス・ホーマン(「はじめてのおもてなし」)が兄マックスに扮した。

ヒトラーに盗られたうさぎ」は、11月から東京・シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開。

Amazonで今すぐ購入

DVD・ブルーレイ

Powered by価格.com

関連ニュース

映画ニュースアクセスランキング

本日

  1. 【「胸騒ぎ」評論】精神的疲労度はR18+級 延々と続く“嫌なおもてなし”が格別の地獄へと誘う最狂映画

    1

    【「胸騒ぎ」評論】精神的疲労度はR18+級 延々と続く“嫌なおもてなし”が格別の地獄へと誘う最狂映画

    2024年5月5日 19:00
  2. オーディオ専門誌「HiVi」が選出“感動が味わえる 音の名画100選” 1940年~2023年まで全リスト公開

    2

    オーディオ専門誌「HiVi」が選出“感動が味わえる 音の名画100選” 1940年~2023年まで全リスト公開

    2024年5月5日 11:00
  3. 【「殺人鬼の存在証明」評論】実在のシリアル・キラー、チカチーロをモデルにしたギミック満載のロシア製サスペンス

    3

    【「殺人鬼の存在証明」評論】実在のシリアル・キラー、チカチーロをモデルにしたギミック満載のロシア製サスペンス

    2024年5月5日 14:00
  4. 【「無名」評論】2大スター競演とノスタルジックな映像美、巧みな構成で描くスパイ・ノワール

    4

    【「無名」評論】2大スター競演とノスタルジックな映像美、巧みな構成で描くスパイ・ノワール

    2024年5月5日 08:00
  5. YOASOBIが「『物語』シリーズ オフ&モンスターシーズン」主題歌を担当

    5

    YOASOBIが「『物語』シリーズ オフ&モンスターシーズン」主題歌を担当

    2024年5月5日 07:00

今週