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ホーム > 映画ニュース > 2019年10月15日
◆2019/10/15更新
是枝裕和監督が宮本信子&宮崎あおいに吹き替えをオファーした必然
取材に応じた是枝裕和監督と 宮本信子、宮崎あおい
  昨年、「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督の日仏合作による新作「真実」は、オリジナル版と日本語吹き替え版が同時公開となる。吹き替え版ではカトリーヌ・ドヌーブの声を宮本信子ジュリエット・ビノシュの声を宮崎あおいが担当。「吹き替え版なんて、好きじゃないです」と話す是枝監督だが、今回は満足しているという。そのワケとは? 是枝監督、宮本、宮崎に聞いた。(取材・文/平辻哲也 撮影/間庭裕基)

  「真実」は是枝監督が初めて国際共同製作に挑んだ話題作。第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本人監督として初めてオープニングを飾った。物語は、自伝「真実」を出版したフランスの国民的女優ファビエンヌ(ドヌーブ)を祝うため、アメリカで暮らす脚本家の娘リュミール(ビノシュ)が、夫でテレビ俳優のハンク(イーサン・ホーク)や娘のシャルロット(クレモンティーヌ・グルニエ)を連れて訪ねることから始まる。やがて、自伝をめぐって、母と娘の間に隠されていた愛憎渦巻く真実が明らかになっていく……。日本語吹き替え版は配給会社からの提案で決まり、是枝監督が「尊敬する女優」として宮本&宮崎の名前を挙げ、シャルロット役には「万引き家族」の好演が光った佐々木みゆを起用した。

  吹き替え版についての考えを聞くと、「好きじゃないですよ」と是枝監督は笑う。ただ、「自分から積極的に、と思ってなかったけど、自分の映画が吹き替え版で上映されている国はスペインとかイタリアとか結構あるんです。見ると、上手だなと思うこともあって、これはこれで伝わるものがあるんだなと思っていました。『どうせやるなら、やれるのであれば』という形でおふたりの名前を出したら、引き受けていただけた」と明かす。

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  日本語吹き替え版としても、日本映画界を代表する二大女優の豪華すぎる共演。宮本とは2016年に夫で映画監督の伊丹十三氏の功績を記念した「伊丹十三賞」を受賞したのがきっかけ。宮崎とは12年10月期のフジテレビ系連続ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」(関西テレビ・テレビマンユニオン制作)や自身がディレクターを務めた松本隆氏の作詞活動45周年の記念し、有名人が詩の朗読を行ったトリビュートアルバム「風街であひませう」で仕事をともにしている。

  女優生活55年以上のキャリアを誇る宮本も、是枝監督と同様にオファーには迷いがあったという。声の仕事は高畑勲監督のアニメーション「かぐや姫の物語」で育ての母、媼(おうな)を演じて以来、2度目。「正直、悩みましたね。私はそういう仕事をすることはないと思っていましたので。でも、3年前(伊丹十三賞)のこともございまして、是枝監督がそう言ってくださるなら、受けて立たなくては! という感じでした。『かぐや姫』は声を先に録音するというやり方(プレスコ)でしたから、人の演技に声を当てるというのは初めてだったんです」と話す。一方の宮崎は「是枝監督と一緒にお仕事ができるっていうのが嬉しいと思って、すぐにお返事をさせていただきました。何が正解なのかもわからないので、うちで時間の許す限りDVDを見ました」と語る。

  是枝監督は佐々木については従来からの子役への演出方法を貫き、台本は渡さず、その場で演出したが、宮本&宮崎については「そのセリフとして何かをはめるのではなくて、お任せします。本当に好きにやってください」とリクエスト。宮崎のアテレコ現場を訪問したものの、すべてを現場に一任。2人は別々の収録となった。

  宮崎は「是枝監督、現場のディレクターさんに『自由に』と言われましたので、少し考え方を柔軟に現場に行った方がいいんだなと思いました。現場に入ってみたら、ビノシュさんと息を合わせるみたいな感じで、その作業がすごく楽しくなっていきました。アニメーションだと、人間ではないので違和感はあるものですが、今回は台本が素晴らしかったということもあって、こういう仕事もあるんだと思えるような新しい経験になりました」。宮本は「私はそこまでいってなくて、粛々と仕事を受けて立つという感じ。やると言った以上、ちゃんとやりたいわけで、準備の時間が短かったですが、一生懸命役を作る、声を作るという感じで終わりましたね」と振り返る。

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  ドヌーブ&ビノシュの仏二大女優にはどんな印象を持っていたのか。宮本は「若い頃から『シェルブールの雨傘』『昼顔』を映画館で見ていました。だから、私よりもっと上の人かと思ったら、ほとんど同級生(宮本74歳、ドヌーブ75歳)なのね。すごくびっくりしました。大スターですし、本当にクールで華やかで謎めいている方。ドヌーブさんはすごく早口で、家で練習しても合わないんです。現場で少しずつ慣れていきましたが、(アテレコは女優とは)別な仕事だと思いました」(宮本)。「今回、改めて過去ビノシュさんの作品を見させていただき、『真実』も何度も見る中、強く思ったのは、表情の動かし方が好みで、すごくチャーミングで、かわいらしい女優さんだなぁ、と。いろんな表情を持ってらっしゃるけど、どの表情も私はすごく好きです」(宮崎)。

  日本語吹き替え版には懐疑的だったという是枝監督だが、出来栄えには満足している。「もともと大女優と女優になり損ねた娘の2人を中心に考え、家族の話を膨らましていった」(是枝監督)そうだが、それを仏二大女優が演じ、日本語版では、さらに日本の二大女優が吹き替えるという多重構造の面白さもある。是枝監督は「脚本は日本語で書いたが、翻訳される段階で省略されたり、時制の問題で変更した部分もあった。字幕を作る中、なるべくオリジナルに戻そうとしたが、字数の関係から表現できなかったところもある。吹き替え版は最初の脚本のニュアンスが出ていて、これはちょっとした発見だった。お二人もよかったし、佐々木みゆちゃんもよかった。女性の声のアンサンブルを考えて、キャスティングしたが、声の質、リズムが違う人たちが集まり、とても成功した。自分が書いたものが吹き替え版になって戻ってくることは頻繁にあることではないでしょうが、今回はやってみてよかった」と喜んでいる。

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  最後、是枝監督に、フランスの製作現場について聞いた。フランスは日本よりも労働管理が徹底しており、1日8時間、週休2日が常識。「完投しようと思っているのに5回で代えられちゃったピッチャーみたいで、最初は『まだ投げたいのに』と思ったけど、途中から慣れてきた。8時には撮影が終わって、ゆっくりできるし、土日で台本直しもできる。有意義だった。通訳の女性が優秀で、言葉の問題もなかった。僕がいなくても現場は進むけど、彼女がいなかったら進まないという感じで、僕自身はノーストレスだった」と明かす。

  仏二大女優の演出に関しても「相性がよかったんじゃないかな。ただ、2人は芝居の組み立てがずいぶん違う。ビノシュはとにかくたくさんやりたいから、僕がOKって言っても、『もう1回やりたい』といい、やればやるほど良くなるタイプ。ドヌーブさんは僕が『カット』という前に、『今のOKね』という(笑)。ドヌーブさんの役は事前のインタビューを元にキャラクターを作ったが、本人は『私は、この人と全然違うわ。こんな物言いをしたら、嫌われる』というけど、重なる部分はかなりあると思う(笑)。イーサンがいてくれたのは大きかった。2人を立てながらも、リラックスさせて、いろんな感情を引き出してくれる。監督の目を持った役者だった」と振り返る。

  筆者も是枝監督同様、映画はオリジナル言語で見たいと思うタイプだが、今回の吹き替え版は会話の軽妙さが際立ち、より面白く見られた。

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