ゴーストライターをさせた夫を踏み台に!? 奔放に生きた女流作家とベルエポックのパリを仏文学者が解説

2019年4月20日 22:45


鹿島茂氏と山崎まどか氏
鹿島茂氏と山崎まどか氏

[映画.com ニュース]キーラ・ナイトレイ主演、1890年代のベル・エポック真っただ中のパリを舞台に、フランス文学界を代表する女性作家の人生を描いた「コレット」の試写会イベントが4月19日都内であり、仏文学者の鹿島茂氏とコラムニストの山崎まどか氏が、シドニー=ガブリエル・コレットと当時のフランス文化を語り合った。

山崎氏は「恋の手ほどき(1958)」「わたしの可愛い人 シェリ」などコレット原作で映画化された作品を紹介。鹿島氏は、「文体が素晴らしい」と評し、仏文研究者の間では「僕が大学に入った頃はそうでもなかったが、次第に評価が高まり、フランス文学で残るのはプルーストとコレットと言われている」「フランスの法律で女性の公教育が中等教育まで広がったときの最初の世代」と作家の位置づけを説明した。

田舎育ちのコレットは、14歳年上の人気作家ウィリーと結婚し、夫に文才を見出され、夫のゴーストライターとして、女学生を主人公とした小説「クロディーヌ」シリーズを書き、夫の名で大ベストセラーになる。鹿島氏は「(フランスでの)女学生文化を描いた最初の小説。ウィリーの入れ知恵でレズビアン的な要素を入れたのがうけた」と解説。奔放な女学生だったコレット自身の経験を基に描かれているそうで、山崎氏は「少女小説だけれど、こんなに素行も性格も悪いヒロインを見たことがない」と小説の感想を述べた。

コレットが生きた時代は、女性が自分の才能を生かせる職業に就くことは難しく、教育を受けてもその後は結婚か高級娼婦かというくらいしか選択肢がなかったそう。コレットはウィリーとの結婚で自身の才能を開花させた後、同性の恋人を持ったり、ウィリーと離婚後も数回結婚を経験するなど、ありのままの自分を貫いて生きた。鹿島氏は「高級娼婦はインテリの“入り口男”で教養を身に付け、財力のある“踏み台男”で社交界に入ることができる。コレットの場合は、ウィリーと結婚して入り口男と踏み台男が同時にやってきた」と例えた。

山崎氏が劇中でコレットが自転車に乗るシーンを挙げると、鹿島氏は「どこにでもいける自転車は、フェミニストが女性を解放する自由の象徴として定義された。ベルエポックの時代はコルセットをつけたまま乗っていた」と話す。また「娼婦にとって男性との関係は仕事。愛は女同士で求め合い、高級娼婦にレズビアンが多かった」というトピックも披露した。

コレット」は5月17日から、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館他全国公開。

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