貧困、ネグレクト…見過ごされる問題を子どもの視点から見つめる「こどもしょくどう」

2019年3月23日 15:30

ダブル主演の藤本哉汰くんと鈴木梨央さん
ダブル主演の藤本哉汰くんと鈴木梨央さん

[映画.com ニュース]子どもの目線から現代社会の貧困や虐待問題を描く「こどもしょくどう」が公開された。「火垂るの墓」「爆心 長崎の空」の日向寺太郎が監督を務め、脚本は「百円の恋」の足立紳。さまざまな事情から満足な食事をとることのできない子ども達の拠り所となる“子ども食堂”をテーマに、車上生活を送る姉妹と姉妹を気にかける少年、そしてその家族の交流を描く。ダブル主演の藤本哉汰くんと鈴木梨央さんに話を聞いた。

食堂を営む両親(吉岡秀隆常盤貴子)と妹を持つ小学5年生の高野ユウト。幼なじみのタカシの家は母子家庭で、タカシの母はわずかなお金を置いたままほとんど家に戻ってくることはなかった。そんなタカシを心配したユウトの両親は食堂に招き、たびたび夕食を振舞った。ある日、ユウトたちは河原で父親と車上生活をしているミチルとヒカルの姉妹に出会い、2人にも食事を出してほしいと両親に願い出る。

--脚本を読んでどのように演じようと思いましたか?

藤本「悲しいだけじゃなくて、考えさせられる映画だなと思いました。ユウトは友達がいじめられてるところを見ても、行動に移せなかった。ミチルやヒカルのことも気にかけてはいて、最初は何もできなかったけど勇気を出して彼女たちにご飯をあげるんです。そんな優しい部分があるんだなと思った。唯一自分の両親に反抗するシーンでは、僕も思っていることがあっても、なかなか人に伝えることが難しいことがあるので、そういうところが似ているなと思いながら演じました」

鈴木「最初に台本を読んだときに、こんなにかわいそうな姉妹とこんなにひどい両親がいるんだ、ということにすごく胸が痛みました。ミチルとヒカルは、苦しい状況の中でもお父さんとお母さんに会いたいとずっと待ち続けています。しっかりミチルを演じて、映画を見てくれる人にしっかり伝えなければいけないなと思いました」

--“子ども食堂”という言葉や場所について知っていましたか?

藤本「僕はニュースでしか聞いたことなかった。脚本を読んでから、調べたりして、こんなに身近にあるんだと驚きました。子どもたちがきちんと食事が食べられなかったりすることは、日本でも重大なことなんだなとわかりました。些細なことでも、虐待につながることがあると思うので、子ども食堂が増えて、食べられない子どもが減るといいと思います」

鈴木「私は、この作品が決まる前から存在は知っていましたが、そんなに知識がなかったので、子ども食堂のネットワークのホームページを見たり、そこでどういう活動をしているのかを調べました。また、虐待を受けている子についても、調べました。暴力を受けていなくても、ミチルのように育児放棄、車上生活をしているのはネグレクトという虐待の部類に入るんです。ネグレクトという言葉も知りませんでしたが、この作品をきっかけに、虐待という言葉でもいろんな意味があることがわかりました」

--自分自身も子どもなのに小さな妹の面倒を見なければいけないミチル。なかなか自分の状況を言葉で伝えられない難しい役です。

鈴木「ミチルは暗いだけの子じゃないと思ったんです。本当はお父さんお母さんがいて、幸せな生活をしていたけれど、急に車上生活になってしまったから。台本を何回も何回も読んで、ミチルの心のことをよく考えました。私は心の中のセリフがいっぱいあるなと思いました。『…』というセリフのなかに、気持ちをどう表わそうか、毎回のシーンで考えていました。あと、ミチルはお風呂にもあんまり入れない子だろうと思ったので、私もお風呂に入らないでみたんです。でもやっぱり、3日が限界でした。でもミチルはそういう生活をしているので、少しでもミチルの気持ちに近づこうと、自分でも行動に移せる事をやってみました」

--温かい家庭で何不自由ない生活を送っていたユウト。苦しい状況にいる子どもたちと出会い、自分で考えて行動を起こしますね。

藤本「ユウトはタカシやミチルをよく見ているので、僕もついつい周りのことをよく見るようになりました。ユウトを演じているのが楽しく、好きだったので、クランクアップは寂しかったです」

--映画でフィクションですが、もしミチルたちのような子がいたらどんな行動をしますか?

藤本「ぼくはなかなかユウトみたいに勇気がなくてできることは少ないかもしれませんが、最近は友達に相談したり、『この子ずっとひとりでいるけど、どうしたのかな?』と感じた時に、少しですが話しかけられるようになりました」

鈴木「今までは、いざ目の前にそういう子がいたとしたら、見て見ぬふりって言うのは嫌だけど、最初は何か疑ったりもして、その子に話しかけよう、って思うまでに時間がかかったと思います。でもこの作品をきっかけに、身近にそういう人たちがいたら、何か自分にできることはないか、まず話しかけようと思いました。まず話しかけて、どの程度大変なのか、聞くことからはじめたいと思います」

--この映画はどんな人に見てもらいたいですか?

藤本「ネグレクトって、家庭を持っている方に起こることなので、家族がある人に見てもらって、この映画でいろんなことを感じて、ネグレクトが起こらないようにして欲しい。もちろん同級生や、たくさんの人に見て欲しいです。食事が取れないことはどれだけつらいことか、共感して欲しいです貧困問題やネグレクト、いじめなど、自分たちの身近に起こり得る問題を題材にした映画になっています。見て見ぬ振りをするのではなく、関わっていくことの勇気、何かを少しでも変えたい。相手だけでなく自分も。いろいろな方々に見て頂けたら嬉しいです。」

鈴木「子ども食堂のことをよく知らない人にも見て欲しい。この映画を見ることによって、考え方が変わると思います。今まで私も当然だと思っていましたが、同じくらいの年齢の人にも、毎日ちゃんとご飯を食べられて、学校に行けて、生活できることが当たり前じゃないと考えてほしい。この映画を家族の人たちと一緒に見て、自分に何かできるか、考えて行動に移してもらえたらうれしいです」

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