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◆2019/1/11更新
名匠クリスティアン・ペッツォルト、祖国を追われた人々描く「未来を乗り換えた男」に込めたメッセージとは
クリスティアン・ペッツォルト監督
  「東ベルリンから来た女」で知られるドイツの名匠クリスティアン・ペッツォルトが、ファシズムの風が吹き荒れたナチスによる史実と現代の難民問題を重ね合わせ、祖国を追われた人々をサスペンスフルに描いたドラマ「未来を乗り換えた男」が、1月12日から公開される。ペッツォルト監督が「心底惚れこんでいる」という原作を映画化した経緯や撮影を語った。

  原作は、1930~40年代にかけて、ナチス政権下のドイツから亡命した小説家アンナ・セーガースによる「トランジット」。「心底惚れこんでいる小説を映画にするのは、今回が初めてです。ヒッチコックが言うには、好きな本を原作にするといい映画が撮れないらしいです。私も実際、そうだと思います。だが彼女の書いた小説が原作であれば、そんな心配は無用でした。ドイツ憲法の基盤は、アンナ・セーガーズのように亡命するしかなかった人々の存在によって作られたものだと思います」と原作への深い思い入れを語る。

  そして、悲劇的な歴史を経験してきたからこそ、人間の尊厳を守る法律ができたことを強調する。「ドイツを出るしか道はなく、でもどこにも行けず、どの国からも受け入れられず、ピレネー山脈の収容所に入れられ、ヴァルター・ベンヤミンのように自殺を図るなど、悲しい最期を迎えた人々。そのような人々がいた事実があるからこそ、ドイツ憲法に亡命権の条項ができたのです。現在、ドイツには難民が大挙して押し寄せています。まるで嵐の日、岸に押し寄せる荒波のように。しかし、亡命権の条項が削除されることはないと思います。できないと思っています。そのことがこの映画における私の唯一の政治的なメッセージです」

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  実際の出来事から60年近く経つが、今作ではファシズムによって占領されたマルセイユをそのまま架空の現代に置き換えた。「脚本を手がける前に、舞台を1940年から現代に移して、亡命者たちの映画が作れるのかと想像してみました。全く違和感はありませんでした。違和感がなくて、逆にそのこと自体に違和感を感じたくらいです。現代の我々が70年前にマルセイユで行き詰っていた人々の逃亡の試み、不安、トラウマ、あらゆる物語がたやすく理解できるということです。そのことになんの説明も要らないということに驚かされたのです」

  その上で「現代と過去のバランスが同じペースであること」を重要視した。「映画は都市と一緒だと思います。古い建物もあれば、新しい建物も同じ瞬間に共存しています。昔の感覚や価値と今の価値が共存しています。唯一、使わなかったのはスマートフォンです。息子に、『ある映画を見てiPhoneやGalaxyの古い型番が登場したら古いと思うが、公衆電話にコインをいれて電話しても古臭いとは思わない』と言われて、とても納得できたのでスマートフォンは劇中で使わないようにしました」

  そして、現在のヨーロッパの状況も変化していると感じているそう。「本作の準備やロケハンを始めたころは、ドイツとフランスを行き来するときは、旅券を見せなくてよかった。だけど、いつからか国境で旅券を見せなくてはいけなくなっていた。ナショナリズムへの回帰を感じて、怖く不安な気持ちになりました」

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