マラケシュ映画祭でスコセッシがデ・ニーロに栄誉賞授与 ベルトルッチを追悼

2018年12月8日 11:00


公の場での久々のツーショット
公の場での久々のツーショット

[映画.com ニュース]昨年の休止をはさみ、スタッフも新たに今年再開したモロッコのマラケシュ国際映画祭で、ロバート・デ・ニーロに栄誉賞が贈られた。プレゼンターを務めたのはマーティン・スコセッシ。ふたりは来年の公開を控えた、10回目のコラボレーションとなる新作「The Irishman」の撮影を終えたばかりで、公共の場に揃って登場するのは久々となった。

最初に舞台に上がったスコセッシは、11月26日に他界した旧友、ベルナルド・ベルトルッチ監督に触れ、「彼からはつねにインスパイアされました。このようなアーティストは今までもこれからもいないでしょう」と、追悼の言葉を捧げた。続いてデ・ニーロのことを、「たぶん彼はキャリアのピークにあると思いますが、まるでアトラス山脈の頂上のように彼にはたくさんピークがあり、来年はまた別の頂点にいると思います。わたしの作品で彼は、精神病質者や反社会的人物など、さまざまな病的人間を演じてきましたが(笑)、もっとも素晴らしい点は、彼はキャラクターを断罪しないことです。そしてその類い稀な能力で、どんな恐ろしい役でも観客にある種シンパシーを抱かせること。彼はキャラクターの魂に力強く共鳴し、どんなモンスターの内側にも人間性をもたらすのです」と称えた。またデ・ニーロとの仕事について、「わたしたちは16歳のときからの付き合いですから、お互いとても深く信頼し合っています。セットで話をしていると、周りからはよく役や台本について話し合っているのだろうと思われるのですが、じつはたんにお喋りをしているのです。撮影準備が整うと、わたしは「アクション」と言うだけ。そして彼が演じる。わたしは何もしないですよ! 素晴らしい仕事ぶりで、素晴らしく心を動かされる。わたしの友人で、長年にわたるコラボレーターです」と称賛。デ・ニーロが舞台に現れると、会場は総立ちとなって割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

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やや緊張した、厳粛な面持ちのデ・ニーロは「ベルトルッチ監督に、安らかに眠って欲しい」と追悼を表明。その後、栄誉賞に感謝の意を表しつつ、「マーティとは45年前に初めて一緒に映画を撮り、そしてつい先日、新しい映画を撮り終えました。それはわたしの人生において、もっとも大きな祝福のひとつでした。願わくば、今後もさらにこうした機会が続くことを祈っています。彼の愛情なしには、わたしの人生は考えられません」と語った。さらに自身で始めたトライベッカ映画祭とマラケシュ映画祭の類似点に触れ、「両方とも2001年、9・11の後にその悲劇の陰で始まりました。わたしの意図はトライベッカに人々を立ち戻らせることでした。マラケシュも、映画を祝福するのみならず、異なる国々のあいだに文化的な架け橋をすることを願っていたと思います。アメリカでは現在グロテスクなナショナリズムが蔓延し、『アメリカ・ファースト』というスローガンの元に、どん欲でエゴイスティックで、外国人嫌いの傾向が見られます。これは今日、わたしたちがここで祝福するものとは対照的です。アートに国境はない。アートはレイシズムとは反対に、異なるもの、異なるアイディアを祝福するのです。政治は人々を失望させるかもしれないが、アートはわたしたちを団結させ、希望を与えてくれると信じています」と、トランプ政権を暗に批判しながら、映画の祝祭の場を讃えた。

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ふたりはそれぞれマラケシュで、ティーチインも開催。さらにデ・ニーロは珍しく、ジャーナリストの取材も積極的に受け入れた。「1900年」でベルトルッチと仕事をした思い出について、「彼はとてもエネルギッシュで、人を巻き込むのが得意だった。俳優の仕事について、彼らがどんな風に役作りをするかについて、特別な目を持っている人だった。希有な存在で、とても興味深い監督。素晴らしい経験を与えてもらった」と語った。さらにいま映画界を席巻する♯Metooムーブメントについて尋ねられると、「わたしは被害を被ったことも、それを目撃したこともないから、答えるのに適切な存在ではないと思う。でもわたしにとって映画作りは神聖なもの。その裏でこうした事が行われているのは、本当にショッキングだし、悲しいことだ」と、率直な意見を口にした。(佐藤久理子)

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