台湾の“天才子役”が躍動 少数民族への“蔑視”明らかにした「海だけが知っている」

2018年10月26日 22:40


客席から拍手を浴びるひと幕も
客席から拍手を浴びるひと幕も

[映画.com ニュース] 第31回東京国際映画祭「アジアの未来」部門に出品された「海だけが知っている」が10月26日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、メガホンをとったツイ・ヨンフイ監督、主演した子役のジョン・ジアジュンくん、出演のリー・フォンインがティーチインに出席した。

美しい海に囲まれた台湾東部の離島・蘭嶼(らんしょ)を舞台に、祖母(リー)とふたり暮らしを送る少年(ジョンくん)が、高雄で行われる“先住民児童伝統舞踊コンクール”への出場を目指し奮闘する姿を描く。製作のきっかけは、ツイ監督が「蘭嶼の少年たちが、ふんどし姿で踊ることを嫌がった」というニュースを受け、先住民文化の継承の重要性を感じたこと。同監督は「台湾の少数民族はみな、同じ問題を抱えています。少数民族というだけで蔑視される、あるいは関心を持たれない状態があり、それを描きたかった」と語る。

キャストにはジョンくんやリーをはじめ、ほぼ全員を蘭嶼島に暮らす一般人で構成。配役の経緯を問われたツイ監督は「子どもたちをまず選んだ」と切り出し、「夏休みの蘭嶼島でキャンプを主催したんです。芝居の先生が子どもたちを教え、そこで天才的なジョンくんを見つけることができた」と振り返る。主演のジョンくんを「天才。普段は役どころとは全く違う性格なんですが、『この役はこうだ』と言えば、ちゃんとなりきってくれるんです」と繰り返し激賞し、「監督としては、『役になりきってもらうこと』を一番大事にしていました」と演出手法を説明していた。

一方で、普段は蘭嶼島で畑仕事をしているリーを祖母役に起用した理由にも言及。「この物語はリーさんの実体験からきている。リーさんを取材し脚本を書いたので、そこで『演じてほしい』とお願いしました」といい、「6年間かけて、すべてのキャスティングを終えました」としみじみ。続けて「やはり実体験なので、リーさんには『泣いてくれ』と言わなくても、孫をしかるシーンなどでは本当に涙を流してくれた。終わると、『昔はこんなに大変だった』と教えてくれるんです」と話していた。

本作は今年6月に台湾で公開されており、「この映画のおかげで、蘭嶼島を知らなかった方々が理解してくれたり、好きになり旅行に来てくれたり、少数民族の問題を考えてくれるようになった」(ツイ監督)と影響を与えた側面も。劇中には主人公がふんどしを穿くことを嫌がるコミカルなシーンがあるが、ジョンくんは「10年ほど前は、みんな嫌がっていたそうですが、今はふんどしを嫌がる子はそんなにいない。僕は、自分の文化をみんなに見せられるため、穿くことは嫌ではなかった」と真摯に述べる。さらに劇中でも歌われた、「ソーラン節」によく似た伝統的な歌謡曲を披露し、観客から拍手を浴びるひと幕もあった。

第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。

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