黒木華、名優・樹木希林さんと初共演「初めてこんな女優さんになれたらと思った」

2018年10月8日 08:00

これまでと、これからを語った黒木華
これまでと、これからを語った黒木華

[映画.com ニュース] 「本当にやりたいこと」を見つけることができず日々を漠然と過ごしていた大学生が、茶道を通じて進む道を模索していく姿を優しく描いた「日日是好日」(10月6~8日先行上映、同13日全国公開)。20歳から45歳までの主人公・典子を演じたのは、2018年公開作品が相次ぐ実力派女優・黒木華だ。彼女自身、学生時代に「一生をかけてやりたいもの」に出合えたというが、どんな思いで典子という役柄に向き合ったのだろうか。(取材・文・写真/磯部正和)

自分の“将来”が見えず思い悩む若者は多い。黒木演じる典子も「一生をかけられるようななにかを見つけたい」と思いつつも、時間だけが過ぎる日々に焦りを感じている。黒木は「私が20代前半のときも、同じような悩みを持つ友だちが周囲にいたので、共感しやすいキャラクターだなと感じました」と、典子という人物にすんなりと感情移入できたと話す。

黒木は高校時代に所属した演劇部で “演じる”ことの楽しさを知り、大学でも芸術学部映画学科・俳優コースに進んだ。すでに「一生をかけてやりたいもの」に出合っていたように感じられるが「ずっと演劇をやっていきたいなとは思っていましたが、大阪の田舎出身で、女優さんになる方法なんてわからなかったですし、まさかなれるなんて思っていませんでした。幼稚園の先生になりたいと思っていたんです」と、理想と現実の狭間に揺れる気持ちがあったことを告白する。

それでも、高校時代の演劇部の顧問や先輩たちが、キラキラと目を輝かせながら演じている姿に憧れ、一歩前に進んだ。20歳のころから野田秀樹主催の演劇ワークショップに参加するなど、夢を現実に変えるために邁進し、現在は、実力派女優として各方面で引っ張りだこの活躍をみせている。典子より早い段階で“目標”が見つかった黒木だが、逆に典子のジリジリとした思いは「よりリアルに感じられた」という。

そんな典子は、母親や従姉の美智子(多部未華子)の誘いで“お茶”を習うことになる。その師範・武田先生を演じたのが、9月15日に死去した樹木希林さんだ。劇中、典子は茶道や武田先生からさまざまなことを教わっていくが、黒木自身も樹木さんから、女優として非常に強い影響を受けた。「役者なので、作品によって全く違う人物を演じるのは当たり前なのですが、わたしにはなかなか難しいことなんです。でも樹木さんはサラッとやられる。原作者である森下典子さんが『樹木さんのお点前が、武田先生とそっくりなときがある』とおっしゃっていたんです。武田先生と樹木さんは一度もお会いしたことがないのにそっくりというのは、それだけ人物を理解されているということなんですよね。本当にすごい女優さんです」。

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樹木さんと現場をともにし、「初めて『こんな女優さんになれたらいいな』と思った」というほどの衝撃を受けた黒木。樹木さんの一挙手一投足を目で追い、近くでその存在を体感した。ときにはアドバイスを求めることもあったが、「あなたはちゃんとしているから、言うことがないわよ」と信頼の言葉をかけられた。メガホンをとった大森立嗣監督が、黒木と樹木さんが対峙するシーンを贅沢な余白をもってスクリーンに映し出したことからも、黒木の演技力に対する絶対的な信頼がうかがえる。

大先輩の存在感を嫌というほど見せつけられた一方、若い世代からも日本映画界を支えていかなくてはいけないという気概も持っている。国内外を含め数々の賞を受賞し、実力派女優としての地位を確立しているが、「日本でも面白い映画はたくさんあります。もっと多くの人に作品を知ってもらいたい。そのためには若い世代も頑張っていかなければ」と熱い思いを語る。

特に“同世代”には大きな影響を受けるようだ。「役者にしても、監督にしても世代が近い人たちがすごい作品を作ったり、出演していたりすると『うわー出たかった!』と思います」と心情を吐露し、「ありがたいことに、山田洋次監督や木村大作監督ら大御所の方々とご一緒させていただく機会が多いのですが、若い監督さんとお仕事する機会がまだ少ないので、今後はもっと同世代の方たちと一緒に盛り上げていきたいという気持ちもあるんです」と意欲をほとばしらせる。

その形態はたとえ自主映画でも、まったく関係ないという。「学生時代は、自主映画製作をしている仲間はたくさんいましたし、面白いものだったら、どんなものでも貪欲に携わっていきたいです。今回、樹木希林さんという素晴らしい方とご一緒させていただき、素敵な映画ができました。本当にありがたいことですし、このかけがえのない経験を、どんな形でもしっかり繋げていかなければいけないと思っています」。

樹木さんとの初共演を経て、黒木自身の芝居への思いはまた変化し、豊かなものになったに違いない。映画を愛し、最後まで生を楽しんだ名優・樹木さんの“魂”は、次の世代に引き継がれた。今度は黒木らが、大輪の花を咲かせる番だ。

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