高良健吾、巨匠・中島貞夫監督作「多十郎殉愛記」で“時代劇の伝承”を決意!

2018年9月18日 12:00

東映京都撮影所での撮影に潜入!
東映京都撮影所での撮影に潜入!

[映画.com ニュース] 「新・極道の妻たち」「木枯し紋次郎」などで知られる84歳の巨匠・中島貞夫監督の最新作「多十郎殉愛記」の撮影現場が今春、京都・太秦の東映京都撮影所で報道陣に公開された。“時代劇ちゃんばらのレジェンド”約20年ぶりの長編劇映画に満を持して参加した主演・高良健吾、共演の多部未華子木村了の口から語られたのは、中島監督への憧憬の念、そして深い愛だった。

第二次世界大戦直後、GHQは時代劇の製作に関して「仇討ち映画の製作禁止」「ちゃんばら映画の禁止」といった禁止令を出している。「“日本人と日本刀”という組み合わせは、彼らにとって恐怖心を抱くものだったはず。武器というよりも精神性の表れ。戦後、その点が失われてしまった。その要因はちゃんばらが“ショー”になってしまったこと」と分析する中島監督。「刀で戦うというのは、そこへ至るまでに様々なドラマがないといけない。ちゃんばらには喜び、悲しみ、生と死が含まれている。そういうものをつくらなければならないというのが、今回ちゃんばら映画に挑戦する理由です」と言葉に力を込めた。

「殺陣の魅力を存分に見てもらうこと」をコンセプトに練り上げられた物語は、高良扮する脱藩した長州藩士・清川多十郎を主軸にして展開される。多感な若者が尊王攘夷の理想に燃えて脱藩したのに対し、親の残した借金から逃れるように京の都へ上洛した多十郎。用心棒を任された場末の飲み屋の娘・おとよ(多部)、腹違いの弟・数馬(木村)とともに身を投じた過酷な運命によって「殉愛」というテーマを浮き彫りにしていく。

多十郎が暮らす長屋を舞台にした、風雲急を告げる殺陣――中島監督の「よーい、スタート!」という馴染み深い掛け声を契機に、高良は「東映剣会」メンバーを相手取り、鮮やかな身のこなしを披露する。監督補を務めた門下生・熊切和嘉監督のサポートを受けながら、中島監督が注視するのは、あくまで眼前で繰り広げられているドラマだ。極力カメラのモニターを見ず、役者たちの“動”を気にかける。長年のキャリアが成す“技”に、息を呑んだ。「監督の指定席」という文字が配された美術スタッフ特製のチェアに腰かけ、時に居ても立っても居られず、役者のもとへと向かう中島監督。その表情から「映画が好きでたまらない」という思いがにじみ出ていた。

893愚連隊」「まむしの兄弟」シリーズのファンだった高良は「(中島監督は)とんでもなく尖った映画を撮られてきた方で、それは今でも変わらないんです。現場にいて感じる(演出の)“引き算”は感動します。これが『最後の作品』と仰られていましたけど、そうは思えない。目がランランとしていますし、特に殺陣をやっている時は雰囲気が変わります」と尊敬の念を込める。「まさかご一緒させてもらえるとは…」という木村も「監督は直感的な方なので、現場で動きが変わっていくんです。ト書きに決してとらわれない。その点が常に刺激になるんです」と充実の面持ちだ。

「愛情たっぷりで向き合ってくれる。『この方のためなら!』というのはすごく感じます。中島監督に出会えて良かったという気持ちは、一生消えないと思います」と話す多部は、中島監督の意外な一面を明かした。「現場にいる時の中島監督は、勿論威圧感と存在感はあるんですけど、いきなりとても可愛らしい一面をのぞかせるんです。失礼とはわかっているんですけど、本当に愛おしくなってしまう(笑)」という発言には、高良と木村も同調する。「中島監督の人間性ですよね。仕草も言動も可愛らしい。全員がそう思っているはず」(高良)、「パワフルなのに愛らしい。愛がたっぷりの現場ですよ。皆、監督の事が大好きなんだと思います」(木村)という言葉通り、キャスト、スタッフの立ち居振る舞いには、中島監督の挑戦を全身全霊で支えようという意識が垣間見えていた。

「自分はやればやるほど良くなるはず。だからこそ、もっと練習ができたらとも思います」と殺陣の技術はまだ“発展途上”であると話した高良。その難しさについては「やっぱり思いやりですね。相手に怪我をさせずに、斬っているように見せるのは難しい。一挙手一投足に気遣いを込めなければなりません」と説明。そして「時代劇の伝統を引き継ぐ担い手になるつもりは?」という質問に、深く頷いてみせる。「誰かに教えていくくらいの存在になりたいという思いはあります。自分の資格にしたい。今回の経験は、絶対無駄になりません。そういう意味で『剣会』の皆さんから教わったものは、財産です」と決意を新たにしていた。

木村が「(ちゃんばらは)セリフがない状態で相対している時、どちらが先に動くかが全部見えるんです。“間で語る”という部分にすごさがある」と語ると、高良は「男の子だったら、小さい頃は絶対に真似をしていたはず」と分析。3人に共通する思いは、本作を通じて“時代劇離れ”がうたわれる現代に一石を投じることだ。

木村「(時代劇は)改めて見ると面白いんです。もっと見る人が増えないかな。この映画を見て、時代劇の魅力に気づいてほしい」

多部「私もほとんど時代劇は見てこなかったんですけど、(今では)あまりつくられていないんですよね。(見る機会をつくるために)これからはどんどん増えていけばいいと思います」

高良「“時代劇離れ”というのは、単に時代劇という形式で見る機会が少ないというだけだと思うんです。今はヒーロー作品として描かれていたり、日本刀というものが形を変えただけ。時代劇というのは、男の子の本能や遺伝子のなかに組み込まれているジャンルだと思っています」

「ここ何十年かの日本映画にはないものができるはず」と自信をにじませる中島監督。映画界の伝説が仕掛けた「多十郎殉愛記」は、時代劇ファンのみならず、“時代劇離れ”世代の度肝を抜かすはずだ。

多十郎殉愛記」は、10月11日から開催される「京都国際映画祭2018」(第5回)でワールドプレミア上映。10月14日に京都・よしもと祇園花月で初披露された後、19年春に全国公開。

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